コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。
選択的支出の伸びは前年同月比で急回復しており、支出全体における構成比も上昇を続けている。
一昨年同月比でも選択的支出の伸びのマイナス幅は急速に縮小を続けており、プラスへの転換も十分視野に入りつつある。
選択的支出の回復は、教養娯楽関連、情報通信関連、教育関連などで際立っており、その中にはコロナ前の水準を大きく上回る伸びをみせているものも多い。
1.際立つ選択的支出の回復
基礎的支出と選択的支出ともに、2021年3月の伸びは前年同月比でプラスに転じた。特に選択的支出で、伸びは急回復している(図表1)。
図表1.基礎的支出と選択的支出の前年同月比伸び率の推移ログインして図表をみる
選択的支出の構成比も、2020年12月を底に、上昇を続けている(図表2)。
図表2.基礎的支出と選択的支出の構成比の推移ログインして図表をみる
更に、コロナ前の時期との比較のため、2021年1月から2021年3月にかけての一昨年同月比伸び率の推移をみると、基礎的支出、選択的支出、消費支出のいずれでも伸び率は上昇を続けており、2021年3月に基礎的支出と消費支出の伸びはプラスとなっている。伸び率の変化に着目すると、選択的支出の伸びの上昇幅が最も大きい。
図表3.基礎的支出、選択的支出、消費支出の前年同月比伸び率と一昨年同月比伸び率ログインして図表をみる
コロナウイルスの感染拡大が本格化し始めた2020年3月以降、1年を通して選択的支出の不振が続いてきた。しかし2021年に入ってからは、マイナス幅は急速に縮小を続けている。このまま回復が順調に進めば、一昨年同月比でプラスに転じる可能性も、十分視野に入ってくるだろう。
2.教養娯楽関連、情報通信関連、教育関連などで際立つ選択的支出の回復
選択的支出の回復は、教養娯楽関連、情報通信関連、教育関連などで際立っており、その中にはコロナ前の水準を大きく上回る伸びをみせているものも多い。
選択的支出に類する項目のうち、前年同月比と一昨年同月比のいずれでも伸びがプラスとなっているものは、計18項目存在している。その内訳は、教養娯楽6項目、交通・通信4項目、その他の消費支出3項目、教育3項目、食料2項目である(図表4)。
図表4.選択的支出で顕著な改善がみられる項目ログインして図表をみる
これら18項目の中で、一昨年同月比伸び率が+30%を超えているものは、教養娯楽では「他の教養娯楽用品のその他」(カメラ・デジタルカメラ付属品、バレエや日本舞踊などの舞台用衣装など)、「パソコン」、「インターネット接続料」(プロバイダの加入料・使用料・月会費・接続料やモバイルWi-Fi通信料など含む)の3項目、交通・通信では「自動車等関連用品」、「携帯電話機」の2項目、その他の消費支出では「国内遊学仕送り金」(学校教育法に定める学校及び国内の予備校在学者に対する仕送り金。旅行費,クラブ活動費なども含む)の1項目、教育では「中学校補習教育」(学習塾月謝、家庭教師への月謝(謝礼金を含む)、補習のための通信添削の費用(教材を含む)など)の1項目、食料では「学校給食」の1項目の、計8項目である。そのうち、「パソコン」、「インターネット接続料」、「携帯電話機」の3項目は、情報通信関連の機器やサービスに類するものである。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ コロナの出口シナリオ(2月版)の更新―2ヶ月遅れのV回復の予兆(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナの出口シナリオとV字回復戦略―日本の「隔離人口」は約39%(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)(2021年)
- JMRからの提案 月例消費レポート 2021年5月号 消費は改善するも、コロナ前の水準を回復できず(2021年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 第131号 "消費抑圧の反動 食品購入は高価格帯へシフト(2021年)
おすすめ新着記事
成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場
コロナ禍で打撃を受けた市場のひとつに惣菜市場がある。特に外出自粛の影響を受けた百貨店の惣菜などが落ち込んだ。しかし、翌21年には早くも持ち直し、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。
消費者調査データ 植物性ミルク(2024年10月版) 「キッコーマン 豆乳」全項目首位で抜群の強さ
調査結果は、全項目で「キッコーマン 豆乳」が首位を獲得、ロングセラーらしい強さをみせた。再購入意向では、アーモンドミルクやオーツミルクなども上位に入り、植物性ミルク市場の広がりを感じさせる結果となった。
成長市場を探せ コロナ特需の反動乗り越え成長するパスタソース(2024年)
コロナ特需から3年連続で縮小するレトルト市場にあって、パスタソースは2年連続の成長となった。「あえる・かける」だけで一品となるレトルトパスタソースの簡便性は、時短ニーズにマッチするものとして成長が期待されている。