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(2019.01)
月例消費レポート 2019年1月号
消費は回復の足取りに一旦陰りが見えつつある
主任研究員 菅野 守

※本文中の図表番号をクリックすると、ポップアップで表示されます。

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年11月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年に入り50を挟んでの上下動が続いていた後、2018年8月以降は50を超える水準で推移していたが、直近の2018年11月には再び50を割り込んでいる(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出と平均消費性向はともに2ヶ月連続で悪化となり、預貯金も2017年8月以降一貫して悪化が続いている。販売関連指標では、2018年10月時点で、計10項目中、改善が9項目に対し悪化が1項目となっている。販売関連指標では、2018年11月時点で、計10項目中、改善が4項目に対し悪化が6項目となっている。支出水準関連指標と販売関連指標はともに悪化の動きが優勢となっており、特に販売関連指標は、前月10月時点で改善の動きが優勢だった状況から、11月時点では悪化の動きが優勢な状況へと転じている(図表2)。

 公表された2018年10月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年11月現在、名目の伸びは5ヶ月連続でプラスとなっているが、実質の伸びは2ヶ月連続でマイナスとなっている(図表5)。二人以上世帯では、消費支出の伸びは名目と実質ともに2か月連続でプラスだが、伸び率の値は双方とも低下している。10大費目別にみると、2018年11月時点で、名目ではプラスの費目数とマイナスの費目数とが等しく、実質ではマイナスの費目数がプラスの費目数を上回っている。前月10月から11月にかけての推移をみると、名目と実質ともにマイナスの費目数が増えプラスの費目数が減っている(図表6)。以上より、消費支出に関しては、全体と10大費目別の双方とも、悪化の方向への動きが認められる。消費者物価指数の動きをみると、物価の伸びは2018年4月あたりを境に緩やかな上昇傾向にあったが、直近の11月には一旦低下している(図表7)。販売現場での動きをみると、日常財のうち、外食は2018年11月現在で、一部の業態を除き概ねプラスの伸びを保っている。商業販売は2018年11月時点で、小売全体の伸びはプラスを保っているが、主要な業態のうち百貨店とスーパーでは2ヶ月連続でマイナスとなっている(図表11図表15)。耐久財のうち、家電製品出荷は2018年11月時点で、黒物家電と白物家電ともに、伸びはプラスとなっている。新設住宅着工戸数は2018年11月時点で、全体の伸びは再びマイナスに転じたがゼロ近傍にある。各カテゴリーでは、持家と分譲住宅・マンションの伸びはプラスを保ち、分譲住宅・一戸建て伸びもゼロ近傍にある。ただし、新車販売は2018年12月時点で、乗用車(普通+小型)の伸びはマイナスに転じ、軽乗用車の伸びはプラスとなったものの伸び率の値は低下している(図表12図表13図表14)。雇用環境に関しては、2018年11月時点で、有効求人倍率は再び上昇に転じたが、完全失業率は2ヶ月連続で上昇しており、両者の方向感は定まっていない(図表8)。他方、収入環境に関しては、「家計調査」における勤労者世帯の可処分所得の伸びの推移をみると、2017年6月以降伸びは概ねプラスを保ち続けており、改善の動きが持続しているといえよう(図表4)。(※ちなみに、不適切調査が発覚した「毎月勤労統計調査」は、本稿での収入環境に関する評価に際し、考慮の材料から一旦外すこととした。)消費マインドに関しては、2018年12月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに悪化に転じており、特に消費者態度指数は、3ヶ月連続で悪化している(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは2018年11月現在、2ヶ月連続でプラスとなったが、伸び率の値は大きく低下している(図表16)。2019年1月23日に公表された「貿易統計」2018年12月分(速報)では、輸出総額は前年同月比で-3.8%のマイナスとなっている。生産については、指数は2018年3月をピークに2018年9月までほぼ一貫して低下の動きが続いた後、10月に一旦上昇したが、直近の11月には再び低下している。分野別に見ても、外需関連と内需関連のいずれでも、低下の動きがより優勢となっている(図表18図表19図表20)。マーケットの動向をみると、12月初頭から年末・年始にかけて、相場は円高・株安の局面が続き、特に株価は、2018年12月26日に終値で前日比-800円超、新年大発会の2019年1月4日には終値で前年大納会の2018年12月28日に比べ-450円超、という大幅な下落に立て続けて見舞われた。その後、相場は円安・株高へと反転し、1月4日から1月21日にかけて株価は終値ベースで+1,100円を超える上昇幅を記録したが、その前の2018年12月3日から2019年1月4日にかけての円高・株安局面での株価の下落幅(-3,000円超)に比べれば、依然として株価の戻りは鈍い(図表21)。長期金利は10月下旬以降、低下傾向で推移している。特に11月末頃からは下落傾向に拍車がかかっており、新年最初の取引日にあたる1月4日には一旦マイナスにまで落ち込んだ。その後、長期金利はプラスに戻したものの、その水準は0.010%を割り込むほどのゼロ近傍で推移している(図表22)。

 総合すると、消費は回復の足取りに一旦陰りが見えつつある。支出全般では悪化の方向への動きが認められるとともに、日常財や耐久財では一部で弱い動きも出始めている。収入環境では改善の動きが持続しているが、雇用環境では変化の方向感が定まらず、消費マインドでは総じて悪化の動きがみられる。経済全般の動きとして、輸出と生産ではともに悪化の動きが認められ、マーケットでは弱気(ベア)基調を経て年末年始にフラッシュ・クラッシュに見舞われた後、相場はまだ十分には戻り切れていない。

 2019年に入り、米中を中心とする海外景気の先行きに対する不安感は依然としてくすぶり続けたまま、日本の景気の先行きに対する懸念も更に強まりつつある。今後の経済動向を巡る焦点は、景気のピークアウトの可能性とそのタイミング、その後の景気後退のインパクトなどの読みへと、徐々に移っていくこととなるだろう。2019年10月からの消費増税のインパクトをどう評価するかが、今後の景気と消費の先行きを見極める第一の試金石となりそうである。


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