半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2018.11)
月例消費レポート 2018年11月号
消費は改善の動きが続いているが、その勢いは弱まりつつある
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年9月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年に入って以降、50を挟んでの上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出と平均消費性向は2ヶ月連続で改善が続いている。他方で、預貯金は2017年6月以降、一貫して悪化が続いている。販売関連指標では、2018年9月時点で、計10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となっている。支出水準関連指標では引き続き改善の動きが優勢となっているが、販売関連指標では改善の側と悪化の側の双方が拮抗する足踏み状態となっており、両者を総合すると前月に比べ改善の勢いが弱まっているとみられる(図表2)。

 公表された2018年8月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年9月現在、名目と実質ともに伸びは2ヶ月連続でプラスとなっているが、伸び率の値はともに低下している(図表5)。ただし、二人以上世帯では、2018年9月時点で、名目の伸びは3ヶ月連続でプラスだが、実質の伸びは再びマイナスに転じている。消費支出全般に関しては概ね改善の動きが続いているが、その勢いは足許で鈍化している。10大費目別にみると、2018年9月時点で、名目ではプラスの費目数とマイナスの費目数とが等しく、実質ではマイナスの費目数がプラスの費目数をわずかに上回っている。前月8月から9月にかけての推移をみると、名目と実質ともにプラスの費目数が減りマイナスの費目数が増えていることから、10大費目別でも前月に比べ改善の勢いが鈍化しているとみられる。以上より、消費支出の動きに関しては、全体と10大費目別の双方で、改善の勢いが弱まりつつあるようだ(図表6)。消費者物価指数の動きをみると、物価上昇のペースは引き続き緩やかなものとなっており、物価は足許で落ち着きを見せている(図表7)。販売現場での動きをみると、商業販売や外食などの日常生活財では、2018年9月時点での伸びは、一部の業態でマイナスながらも、概ねプラスを保っている(図表11図表15)。耐久財では、新車販売は2018年10月時点で、軽乗用車と乗用車(普通+小型)ともに、伸びはプラスに復帰した。新設住宅着工戸数は2018年9月時点で、全体の伸びはわずかにマイナスとなったが、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンション各カテゴリーの伸びは2ヶ月連続でプラスとなっている。家電製品出荷は、2018年9月時点での伸びは、黒物家電と白物家電のいずれでも、商品間で好不調が分かれている(図表12図表13図表14)。雇用環境に関しては、完全失業率は2018年9月現在、2ヶ月連続で低下している。有効求人倍率も、ほぼ一貫して上昇が続いている。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている。雇用環境と収入環境はともに、改善の動きが持続している(図表9)。ただし、消費マインドに関しては2018年10月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは前月9月よりも上昇しているが、消費者態度指数は低下しており、消費マインドの方向感は依然として定まっていない(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは2018年9月時点で一時マイナスに落ち込んだが、2018年10月(速報)では再びプラスに戻した。他方で、生産については、2018年9月分確報より2015年基準へと改定されている鉱工業生産指数の動きをみると、指数は2018年3月をピークに、2018年9月現在までほぼ一貫して低下の動きが続いている(図表16図表18)。マーケットの動向をみると、相場は10月初頭から10月末頃にかけて円高・株安の局面が続いた後、11月に入り一時円安・株高の局面に転じたが、11月中旬以降は再び円高・株安の局面へと戻っている(図表21)。長期金利は8月に入って以降、上昇傾向を保ってきたが、10月下旬以降は低下傾向で推移している(図表22)。

 総合すると、消費は改善の動きが続いてはいるが、その勢いは弱まりつつある。日常生活財では概ね改善の動きが続いているが、耐久財では一部で改善の動きがみられるものの、依然として好不調が分かれている。経済全般では、雇用環境と収入環境で改善の動きが持続し、一時悪化がみられた輸出も足許で再び改善に転じてはいるが、生産の低下には足許で歯止めがかからないまままである。マーケットは11月に入って以降も乱高下が続いており、相場の方向感も定まらずにいる。

 内閣府公表の景気動向指数によると、一致指数の基調判断について、前月2018年8月時点での「改善を示している」から2018年9月(速報)時点では「足踏みを示している」へと2年ぶりに表現が変更され、基調判断の下方修正がなされている。11月22日に公表された2018年11月の月例経済報告では景気の現状判断は維持されたが、今後の景気動向指数の推移如何では、翌月以降の月例経済報告にて景気の現状判断も同様に下方修正される可能性もあるだろう。景気の先行きに対する不透明感が徐々に広がりつつあることを踏まえて、今後の消費の行方にも注意が必要となろう。

図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い

調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。

消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。

新着記事

2024.12.03

24年10月の「新設住宅着工戸数」は6ヶ月連続のマイナス

2024.12.02

企業活動分析 イオン株式会社 24年2月は、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新し増収増益

2024.12.02

企業活動分析 宝ホールディングス株式会社 24年3月期は、バイオ事業不調により減収減益

2024.12.02

企業活動分析 TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)  23年12月期は減収減益、事業構造の転換へ

2024.11.29

月例消費レポート 2024年11月号 消費は一旦足踏み状態となっている-政策転換を消費回復への新たな起爆剤に

2024.11.29

24年10月の「ファミリーレストラン売上高」は32ヶ月連続プラス

2024.11.29

24年10月の「ファーストフード売上高」は44ヶ月連続のプラスに

2024.11.28

消費者調査データ No.417 シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い

2024.11.28

消費からみた景気指標 24年9月は6項目が改善

2024.11.27

24年9月の「全国百貨店売上高」は32ヶ月ぶりのマイナス、残暑で季節商品が苦戦

2024.11.27

24年9月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2024.11.27

24年10月の「コンビニエンスストア売上高」は11ヶ月連続のプラスに

2024.11.26

24年9月の「広告売上高」は、5ヶ月連続のプラス

2024.11.25

企業活動分析 LIXILの24年3月期は海外の需要減の影響で減益へ

2024.11.25

企業活動分析 東京ガスの24年3月期は大幅な減収減益

 

2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

2024.11.22

MNEXT 「消費社会白書」で分析するアメリカ大統領選の接戦予想のはずれ

2024.11.22

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2024.11.21

24年9月の「商業動態統計調査」は6ヶ月連続のプラス

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area