JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年9月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年に入って以降、50を挟んでの上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出と平均消費性向は2ヶ月連続で改善が続いている。他方で、預貯金は2017年6月以降、一貫して悪化が続いている。販売関連指標では、2018年9月時点で、計10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となっている。支出水準関連指標では引き続き改善の動きが優勢となっているが、販売関連指標では改善の側と悪化の側の双方が拮抗する足踏み状態となっており、両者を総合すると前月に比べ改善の勢いが弱まっているとみられる(図表2)。
公表された2018年8月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年9月現在、名目と実質ともに伸びは2ヶ月連続でプラスとなっているが、伸び率の値はともに低下している(図表5)。ただし、二人以上世帯では、2018年9月時点で、名目の伸びは3ヶ月連続でプラスだが、実質の伸びは再びマイナスに転じている。消費支出全般に関しては概ね改善の動きが続いているが、その勢いは足許で鈍化している。10大費目別にみると、2018年9月時点で、名目ではプラスの費目数とマイナスの費目数とが等しく、実質ではマイナスの費目数がプラスの費目数をわずかに上回っている。前月8月から9月にかけての推移をみると、名目と実質ともにプラスの費目数が減りマイナスの費目数が増えていることから、10大費目別でも前月に比べ改善の勢いが鈍化しているとみられる。以上より、消費支出の動きに関しては、全体と10大費目別の双方で、改善の勢いが弱まりつつあるようだ(図表6)。消費者物価指数の動きをみると、物価上昇のペースは引き続き緩やかなものとなっており、物価は足許で落ち着きを見せている(図表7)。販売現場での動きをみると、商業販売や外食などの日常生活財では、2018年9月時点での伸びは、一部の業態でマイナスながらも、概ねプラスを保っている(図表11、図表15)。耐久財では、新車販売は2018年10月時点で、軽乗用車と乗用車(普通+小型)ともに、伸びはプラスに復帰した。新設住宅着工戸数は2018年9月時点で、全体の伸びはわずかにマイナスとなったが、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンション各カテゴリーの伸びは2ヶ月連続でプラスとなっている。家電製品出荷は、2018年9月時点での伸びは、黒物家電と白物家電のいずれでも、商品間で好不調が分かれている(図表12、図表13、図表14)。雇用環境に関しては、完全失業率は2018年9月現在、2ヶ月連続で低下している。有効求人倍率も、ほぼ一貫して上昇が続いている。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている。雇用環境と収入環境はともに、改善の動きが持続している(図表9)。ただし、消費マインドに関しては2018年10月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは前月9月よりも上昇しているが、消費者態度指数は低下しており、消費マインドの方向感は依然として定まっていない(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは2018年9月時点で一時マイナスに落ち込んだが、2018年10月(速報)では再びプラスに戻した。他方で、生産については、2018年9月分確報より2015年基準へと改定されている鉱工業生産指数の動きをみると、指数は2018年3月をピークに、2018年9月現在までほぼ一貫して低下の動きが続いている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は10月初頭から10月末頃にかけて円高・株安の局面が続いた後、11月に入り一時円安・株高の局面に転じたが、11月中旬以降は再び円高・株安の局面へと戻っている(図表21)。長期金利は8月に入って以降、上昇傾向を保ってきたが、10月下旬以降は低下傾向で推移している(図表22)。
総合すると、消費は改善の動きが続いてはいるが、その勢いは弱まりつつある。日常生活財では概ね改善の動きが続いているが、耐久財では一部で改善の動きがみられるものの、依然として好不調が分かれている。経済全般では、雇用環境と収入環境で改善の動きが持続し、一時悪化がみられた輸出も足許で再び改善に転じてはいるが、生産の低下には足許で歯止めがかからないまままである。マーケットは11月に入って以降も乱高下が続いており、相場の方向感も定まらずにいる。
内閣府公表の景気動向指数によると、一致指数の基調判断について、前月2018年8月時点での「改善を示している」から2018年9月(速報)時点では「足踏みを示している」へと2年ぶりに表現が変更され、基調判断の下方修正がなされている。11月22日に公表された2018年11月の月例経済報告では景気の現状判断は維持されたが、今後の景気動向指数の推移如何では、翌月以降の月例経済報告にて景気の現状判断も同様に下方修正される可能性もあるだろう。景気の先行きに対する不透明感が徐々に広がりつつあることを踏まえて、今後の消費の行方にも注意が必要となろう。
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