半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2015.12)
月例消費レポート 2015年12月号
鮮明化する日常生活財と大型耐久財の回復格差-景気の先行き不安が消費回復の足かせに
主任研究員 菅野 守

本コンテンツの全文は、有料会員サービスでの公開となっております。
ご利用には有料の会員登録が必要です。
ご登録済みの方は、こちらから全文をご利用ください。
会員のご登録はこちらをご覧ください。

1.はじめに

 大晦日まで10日余りとなり暮れも押し迫る中で、米国FRBによるゼロ金利脱却は、年の瀬のマーケットを揺るがすビッグニュースとなった。これが、世界の資金の流れを変える第一歩となりそうなことは、マーケット関係者やエコノミストたちの間でもコンセンサスが得られているようだが、米国金利が実際にはどのぐらいのペースで上昇していきそうか、そして、新興国から米国への資金の逆流が今後どのくらいの勢いで進んでいき、世界経済にどのくらいのインパクトをもたらすこととなるのか、については、(次の利上げのタイミングなども含め)彼らの間でも既に意見が分かれているようである。

 2015年12月8日に内閣府より公表された「2015年7‐9月期四半期GDP速報」(2次速報値)によると、2015年7‐9月期の実質GDP成長率は1次速報時の前期比-0.2%から、2次速報では前期比+0.3%へと上方修正された。2015年4‐6月期の実質GDP成長率も、1次速報時の前期比-0.2%から、2次速報では前期比-0.1%へと上方修正されている。この結果、実質GDP成長率は、1次速報時点では2期連続のマイナスだったものが、2次速報時点ではわずかなマイナスから再びプラスへと転換している。需要項目別にみると、2015年7‐9月期の実質成長率は前期比で、民間最終消費支出は+0.4%、民間設備投資は+0.6%、輸出は+2.7%となっており、需要の三本柱はいずれも実質プラス成長となった。ここで、1次速報時点から2次速報時点で、2015年7‐9月期の数値が大きく変化しているのは、民間企業設備である、1次速報時の前期比-1.3%から、2次速報では前期比+0.6%へと大幅に上方修正されている。他方、公的固定資本形成は、1次速報時の前期比-0.3%から、2次速報では前期比-1.5%へと大幅に下方修正されている。民間設備投資の大幅な伸びが、公共投資の落ち込みをカバーした上で、実質GDP成長率をも押し上げている。民間住宅投資や輸出も、実質GDP成長率の押し上げに寄与している。ただし、民間最終消費支出は、実質GDP成長率の押し下げ役となってしまっている。

 2015年12月14日に公表された「第167回 全国企業短期経済観測調査(2015年12月)」によると、業況判断DIのうち、最近のDIは、製造業では大企業、中堅企業、中小企業のいずれも、前回と変わらない。非製造業では、大企業は前回と変わらず、中堅企業と中小企業はともに、前回よりも改善している。他方、先行きのDIは、製造業では大企業、中堅企業、中小企業のいずれも、前回よりも悪化している。非製造業でも、大企業、中堅企業、中小企業のいずれも、前回よりも悪化している。足許の業況については、特段変化は見られないのが大勢であり、一部の中堅企業と中小企業では改善の気配もうかがわれる。ただし、業況の先行きについては、業種や企業規模の違いに因らず若干悪化しており、先行き見通しはわずかながら悲観気味に振れているようだ。設備投資として、ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)に着目すると、2015年度設備投資計画の前年度比変化率の値は、中小企業の非製造業を除き、プラスである。更に、前回調査時点との変化率の違いをみると、大企業の製造業と非製造業では、変化率は下方修正されたが、その水準は高い。中堅企業の製造業と非製造業、中小企業の製造業と非製造業の計4部門では、変化率は上方修正された。設備投資の先行きに関しても、前向きな動きが認められる。

 政府と日銀ともに、景気の現状認識と先行き見通しのいずれでも、「一部にマイナスの影響が見られはするが、緩やかな回復基調にある」との判断を、前月に引き続き概ね堅持している。2015年11月から12月にかけての両者のコメントの変化を対比すると、日銀では、景気の基調判断は引き続き据え置きとなっている。個別の項目では、輸出に関して判断の上方修正が示されているが、他の項目に関しては前月の判断を据え置いている。他方、政府による景気の基調判断は、前月に引き続き据え置きとなっている。先行きに関しては、前月の「雇用・所得環境の改善傾向」から今月は「雇用・所得環境の改善」へと文言が修正されており、景気の先行き判断についてより踏み込んだ姿勢が示されている。個別の項目をみると、雇用情勢は10ヶ月ぶりに判断が上方修正された。他方、住宅建設については1年8ヶ月ぶりに判断が下方修正された。公共投資についても判断は下方修正されている。両者の判断の違いに着目すると、景気の現状判断に際し、日銀は「新興国経済の減速の影響」を既に現実化しているマイナス要因と捉えているのに対し、政府は「中国を始めとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある」と捉え、(現状では具体化していないが)将来においては具体化する可能性の高いリスクファクターと捉えている。個別項目についての判断では、日銀よりも政府の方で、より弱気なスタンスが目立っている。

 消費の先行きに関しては、政府と日銀の双方で、見方は概ね一致している。具体的には、新興国での景気低迷が日本の景気の先行きにも影を落としてはいるが、雇用・所得環境の改善が持続していることを支えに、個人消費は底堅い推移を続けていくものと見込まれている。ただし、2017年4月からの消費税再増税の影響は、政府と日銀ともに、景気の現状認識や先行き見通しには今のところ織り込まれてはおらず、加えて、景気のリスク要因ともまだみなされてはいない。前回2014年4月の消費税増税のダメージを完全には払拭しきれていない中で、政府と日銀が、2017年4月からの消費税再増税の影響をいつ頃ぐらいから射程に入れ始めるのか、今後の動きが注目される。


本コンテンツの全文は、有料会員サービスでの公開となっております。
ご利用には有料の会員登録が必要です。
ご登録済みの方は、こちらから全文をご利用ください。
会員のご登録はこちらをご覧ください。


参照コンテンツ


おすすめ新着記事

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area