半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

最近のテスコなど大型外資流通企業の日本進出が注目されます。外資流通企業の日本市場における展開にはどんな特徴があるのでしょうか?(飲料メーカー・流通戦略部、スタッフ26歳)

 日本では1992年のバブル崩壊後、景気低迷が長期化していますが、外資の流通企業からみると、日本の個人消費の高いポテンシャルや、例えば、地価の下落が参入の好材料となる等もあり、日本市場の魅力度は高いといえます。小売業世界ランク第1位のウォルマートが、西友を子会社化、商品・情報・オペレーションなどの分野でウォルマート方式導入も開始しています。いずれウォルマートのドル箱業態・スーパーセンターの展開が始まるとみられます。すでに日本には、カルフール(ランキング2位)、コストコ(同14位)、メトロ(同6位)が参入し、先頃、テスコ(同12位)もシートゥネットワークを買収し日本に参入しました。残るアホールド(同3位)も上陸の機会を窺っています。

 これら流通外資企業の最大の特徴は低価格戦略にあります。当然ながら日本においても同様の戦略を基軸にしています。例えば、クーポンは、日本ではネットや携帯電話などの電子クーポンで弾みがつきましたが、彼らにとっては低価格プロモーションの常套手段です。日本でもイトーヨーカ堂が全店で展開するなど注目されており、日本の事情に合わせたやり方で、低価格戦略の武器として活用する可能性も考えられます。これまでの流通外資企業の日本展開の特徴を整理すると、つぎの六つをあげることができます。

  1. 最初にロジスティクス拠点を自前でつくる
  2. 短期間に集中してチェーン展開する
  3. 日本では考えられない大型店で展開する
  4. メーカーに直接取引を要求する
  5. 低価格保証、無条件返品を標榜する
  6. カテゴリーキラーとしての経営ノウハウがある

 メーカーにとって特に問題になるのは、日本の商慣行を無視した性急な直接取引の要請が、これまで起用していた特約卸を不要とする方向に作用、流通チャネルと価格制度の両方の変革のインパクトとなる点やナショナルブランドを集客のためのロスリーダーに活用されてしまう点です。日本国内は既にオーバーストア状態にあり、単純な店舗数の拡大は困難になっています。今後は、国内の既存流通企業の優勝劣敗による再編に加え、テスコにみられるような国内流通企業の買収や提携の形で流通外資企業の勢力の拡大が進むと見られます。特に弱体化した国内流通企業は、日本攻略を狙う外資流通企業の格好のターゲットです。流通業界の再編について中長期のシナリオを持ち、自社の流通チャネル、取引制度、価格制度をシナリオに基づいてシミュレーションして検討しておくことが必要です。


図表 外資流通企業の日本展開の特徴
図表

参照コンテンツ


関連用語


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area