交差比率とは、粗利益率×商品回転率で求められる販売効率を見る指標である。粗利率が高い商品は確かに利益を生むが、販売の現場では高粗利商品ほど回転率が悪く数が売れないということも多い。逆に、数は多く売れるが粗利は低い、いわゆる薄利多売という商品も多い。このため、特に小売業では、粗利益率と商品回転率のバランスから販売効率を見るため、交差比率という指標が用いられている。
図表.粗利益率と商品回転率による商品分類

この指標は、メーカーの営業活動にも様々に活用することができる。例えば、ある商品カテゴリーにおける自社の販売アイテムの交差比率を算出し、それを各々の平均値によってプロットすると、販売アイテムの特徴を掴むことが出来る(図表)。できれば、自社の販売データだけでなく、販売先から実データを入手し、競合商品も含めた分析をしたい。但し、「見せ筋」には、「死に筋」が含まれている可能性もあるため、商品ライフサイクルも勘案して「見せ筋」に分類されたアイテムをチェックしておく必要がある。
スーパーなど小売店を通じて商品を販売している消費財メーカーの営業を例に、交差比率を活用した売り場提案の基本を整理すると、つぎの通りである。但し、これまでの店頭販促の結果を十分に検討しておくことが肝要である。
「稼ぎ筋」は、エンド陳列やPOPを活用したより積極的な販促展開を提案する対象である。催事やシーズンなどの条件も考慮の上、適切なテーマを設定したエンド企画を「稼ぎ筋」アイテムを基軸に展開することで、店側にマグネットとなる売り場を作り出せる可能性が高い。
「売れ筋」は「薄利多売」、「儲け筋」は「厚利少売」という側面を持っている。売り場提案では「売れ筋」は現状維持とし、「儲け筋」は価格設定の検討と露出拡大策による回転率向上の提案が基本である。エンド陳列が難しい場合でも、中エンドやプロパーでのゴールデンゾーンへの移動やフェイス数拡大などを提案していく。
最後に、「見せ筋」であるが、売り場で意味のある「見せ筋」としての機能(一定の集客がある、固定ファンが存在するなど)を果たしていない場合は、思い切ったカットや別アイテムへの入れ替え提案も考える必要がある。
自社の販売アイテムが販売先にとってどのような貢献をしているのかという視点から、改めて提案をしていく場合、交差比率は様々なヒントを与えてくれる。
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