フォード流の経営再建によって収益構造を大きく変え、利益を出せる体質に生まれ変わったマツダを取り上げる。
世界的な業界再編の流れの中で、欧米大企業との提携あるいは傘下に収まることで生き残りを模索するか。右肩上がりの成長が望めない中でいかに利益の出る体質を作り上げるか。今後多くの企業が直面するであろう試練を体験し、世界標準の経営を受け入れたマツダの復活のヒストリーは生きた教科書ともいえるものだ。
あわせて次回ではシリーズのまとめの意味も込めて、ここで取り上げた5社(シティバンク、シートゥーネットワーク、アイワ、丸井、マツダ)の事例から学べる企業再生の条件、逆境下での新しい経営の視点について、改めて確認してみたい。
1999年度決算では経常利益497億円と最高益を更新したマツダだが、1994年3月期には441億円もの赤字をだし、経営危機に瀕していた。
マツダのつまずきの原因としては、1989年に「マツダ」「アンフィニ」「オートラマ」の3チャネルだった販売網に「ユーノス」「オートザム」を追加してトヨタなみの5チャネルに拡大し、1992年には最新設備の工場建設に600億円の建設費を投じるなど、過大投資に走ったことがあげられる。これらの投資に伴う減価償却費負担が経営を一気に悪化させ、バブル崩壊に直撃された結果の赤字転落である。この間、国内販売台数も1990年の142万台をピークに1995年には77万台まで落ち込んでいる。
マツダとフォードとの提携の歴史は長く、1979年に遡るが、1993年にはさらに関係強化、1996年5月にはフォードの出資比率を25%から33.4%に引き上げ、フォードから社長の派遣を受け入れるなど、米国フォードの実質子会社となっている。その意味で、マツダの復活は、フォードが実質的な経営権を掌握して以来のフォード流経営再建の成功ヒストリーでもある。
図表 マツダの売上と経常利益の推移

フォードからの社長派遣に先立つ約2年前の1994年からフォード流経営改革はスタートしている。1994年2月のフォード出身役員が着任(ヘンリー・ウォレス前社長、ゲーリー・ヘクスター財務統括専務が常任顧問として着任)後まず手を着けたのは、財務改善5カ年計画の作成と目標に明示であり、とくに強調されたのはバブル期の拡大戦略の結果巨大化した有利子負債の削減である。有利子負債の増加は多額の支払利息を必要とし、収益を圧迫する。さらには企業の信用低下につながり、資金調達を困難にする。いくどかの不況をくぐり抜け、過大な有利子負債の危険性を十分に知っているフォードなればこそである。
有利子負債の返済原資確保のために行ったことは、設備投資の大幅削減であり、資産効率の悪いもの、自動車事業と関係のない資産の大胆な切り捨てである。その結果、1994年に5,800億円あった有利子負債は1998年3月末には3,940億円に減少している。
しかし、この間、マツダの業績は単独では1994年、1995年3月期が赤字、連結では1998年3月期まで赤字が続いている。一般には、赤字になると通常は赤字分だけ外部資金の注入が必要になる。貸し渋り対策として手元流動性はなるべく厚く、というのが常識だ。にもかかわらずの有利子負債削減である。当然のことながら設備投資の削減くらいで追いつく話ではなく、様々な角度から検討され、実現されていくことになる。
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