これからどうなる?47都道府県の経済天気図 |
「これからどうなる? 47都道府県の経済天気図」 要約 | ||
本書は、地域経済の過去を少々振り返り、現在の課題に焦点をあて、未来を展望し、短期及び長期の地域経済の「天気予報」を試みたものです。 日本を九つのブロックに分けて、47の都道府県別に143の都市エリアに焦点をあてて、都市エリア毎に所得水準、成長率や産業集積のグローバルな競争力などをまとめて天気予報を試みました。 方法としては、統計データの延長推計にのみ依拠するものではなく、一個人の経験による主観に基づくものでもありません。大手の消費財メーカーのマーケティングリサーチをベースにした地域営業や経営についてのアドバイスの実務、主に、地域経済の典型的な課題を持つ岩手県の経済を分析してきた経験、そして、両者の分析や問題解決に必要なマーケティング、経営や経済学の蓄積、そして、執筆メンバーによる顔をつきあわせての議論にもとづく経験科学的な方法をとっています。 全国を概況すると、1970年代の高度経済成長時代のような全国的な経済天気の快晴は期待できません。各種統計データを検討した結果、90年代後半から地域間経済格差は拡大しており将来に渡ってその拡大傾向が持続すると結論づけられます。地域間格差が拡大するのは、人口減少と産業集積のふたつが要因となって、地域経済の核となる都市エリアの分化を促すからです。 現在、強い産業集積が形成されて経済成長の中核となっていくであろうグローバル都市地域が七つあります(東京都心拠点エリア、横浜・川崎連携エリア、名古屋エリア、四日市(亀山)エリア、京滋エリア、広島・関門エリア、関門・福岡エリア)。一方で都市インフラを維持する人口規模を維持できない衰退エリアが55あります。その間に60の成熟都市地域、今後の高成長が期待される21の発展途上地域があるのです。
本書は、地域経済格差の現実を糊塗するのではなく、厳しい地域経済の現実を提示しています。それは地域経済の衰退が固定的なものではなく、地域経済再活性化の方法はあると考えているからです。終章では地域経済の悪循環を断ち切るための新たな戦略主体とその方策が述べられています。 まず地域経済の悪循環を断ち切るためには、「重点」「集中」「傾斜」した予算配分を行い政策を実行していく経済主体が必要ですが、県、市町村などの地方自治体は有効な政策を実現することができない状況にあります。政策立案単位として中央政府レベル、道州制レベルのブロック、都市エリア単位に腑分けして新しい戦略主体を創出していくことを提言しています。 さらに方策のひとつとして、都市への再集中が提示されています。多くの人々が集まることによって、多様な製品サービスが提供され、多様な製品サービスは人々に多くの効用を与えることになります。するとさらに人々が集まる、というような累積的な効果があります。 最後に民間企業のマーケティングの実務に関わる方々に注目して欲しいことは、地域経済格差が拡大することにより、業態間格差よりもエリア格差が拡大し、成長する拠点都市への集客の集中など、これまでの10年のマーケティングの枠組みのままでは成長チャンスに対応できず、資源配分の不効率を生む可能性があるということです。まず長期の地域経済の展望を持つことでビジネスの足下を見直す必要があります。 本書では、143の都市エリアの分析の上で、47都道府県、九つのブロック毎に、現在と未来の空模様が提示されております。ビジネスのためにも、また、ご自身がお住まいの地域や、出身地がどのように予想されているか、をみてみるのもおもしろいと思います。 |