消費経済レビュー Vol.14 |
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Economic Outlook for Japan | |
日本経済は2009年度以降、輸出主導での景気回復が続いているが、民間最終消費支出と民間企業設備投資の伸び悩みが本格回復への足かせとなっており、外需の回復から設備投資積極化への波及効果は相変わらず鈍い。 だが他方で、在庫調整はほぼ完了し新たな循環の局面に入るとともに、2010年に入ってからは雇用と所得の伸び率はプラスを保つなど雇用・所得環境にも改善が認められる。消費支出の動きは方向感が定まらず選択的支出の動向に左右される状況にあるが、小売業全体の売上の回復傾向に加え、不振続きであった組織小売業態でも改善への兆しがみられるなど、供給サイドからは明るい材料が出始めている。消費者のマインドも改善傾向を鮮明にしている。 日本経済に関するシンクタンク各機関の想定シナリオを総合すると、2010年度の外需を中心に消費の下支えを得て景気が回復していくシナリオから、2011年度は設備投資を中心に外需のバックアップを得て景気回復を続けるシナリオへ移行するというのが、最も一般的な見方のようである。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しはいずれも悪化から改善の方向に転じており、収入の状況は実態と見通しともに減少傾向に歯止めがかかりつつある。支出実態と今後の支出意向は、それまでの減少傾向から不変・現状維持の方向へと変わりつつある。 2010年度の日本経済の先行きを占うと、中国の景気はスローダウンするも安定成長は続くと目される。米国の景気もペースはゆっくりながらも回復基調を保っていくであろう。輸出は、米国の景気の回復や中国経済の安定成長を支えに堅調さを保ち、他の新興国での高成長の持続も輸出には追い風となる。生産・在庫調整も終了し、景気の回復をにらみつつ、在庫積み増し局面へ入ることとなろう。設備投資は最悪期を脱したが、成長率はマイナスのままであり低迷の状況にある。ギリシャの財政問題を端緒としたユーロ圏経済の動揺が企業の投資意欲にマイナスに働くリスクは残っており、設備投資の本格回復は2011年度以降とみるが妥当であろう。2010年に入り雇用・収入ともにようやくプラスに転換し、長く低迷を続けてきた労働関連指標にも改善の兆しがうかがわれることから、雇用と収入の改善傾向はこのまま続くと見込まれる。消費マインドの改善は進むとともに、デフレも沈静化し終息の方向に向かいつつある。2010年度中はエコカー減税&補助金や家電と住宅でのエコポイント制度などの政策の効果がプラスに作用し、個人消費は堅調さを保っていくと見込まれる。 2010年度の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、設備投資は低迷するが、雇用・収入環境は改善し、個人消費も堅調さを保っていく「投資低迷・消費堅調シナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、雇用・収入環境が改善し個人消費も設備投資もともに堅調に推移する「内需堅調・本格回復シナリオ」と、雇用・収入環境は改善するものの設備投資と個人消費は低迷状況に陥る「投資低迷・消費スランプシナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2010.06)
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