半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費経済レビュー Vol.9
IV.データフュージョンの新展開

  調査データにおいては部分的なサンプルの情報しか得られないことや、各企業などが持っている顧客のデータベースはあるものの別のサンプルの調査データしか手に入らないことがある。こうした場合に、複数のデータ間で共通する変数を利用し、ある調査によって得た変数などを別のデータベースに対して補完を行うことで、データベースを融合・拡充することをデータフュージョンと呼ぶ。これらは、統計の分野では統計的マッチングとして古くから研究されてきたものである。
 データフュージョンは、近年マーケティングの分野において注目されている。例えば視聴率のデータと購買データの融合など、顧客に対して複数の観点からその行動を見ていく必要がある場合に利用される。また、今日多くの企業で顧客データをはじめとした膨大なデータベースが構築されているなかで、それらを他のデータと合わせることでより有効な情報を抽出するというデータの再活用の点でも注目されている。
 こうしたデータフュージョンの方法には、大きく分けてふたつある。ひとつはノンパラメトリックな方法で、もうひとつはパラメトリックな方法である。前者はデータフュージョンのもとになった完全マッチングから発展してきたものであり、個々のサンプルの属性間の距離を利用したマッチングにより融合を行う。一方、後者は得られているデータに対して統計的なモデルを当てはめ、それを利用して、融合・補完を行う方法である。これらはそれぞれ、簡便性や予測誤差の観点からメリットやデメリットが存在する。また、データフュージョンの性能の評価については、完全データサンプルをもとに、一部を欠損させ、そこを予測していくことで可能となる。
 注意すべき点としては、目的に合わせて何を予測して、データフュージョンを行うのかを考慮することである。それにより、計算の方法や用いるデータが異なってくる。例えば、分散共分散行列の推測や条件付確率の計算などを行うことも必要となる。また、他に考慮すべきことは、共通属性として用いられる変数は多く用意し、これらと予測や代入を行う変数との関係があるものを選ぶことで精度を高めることが出来るということである。
 以上をふまえて有効なデータフュージョン方法を選択し、複数のデータベースから統合データベースを予測していくことで、今後、様々な分野での新たな知見が得られることが期待される。
(2008.06)


消費経済レビューの本文をご覧になるには、プレミアム会員にご入会下さい。
消費経済レビューは、プレミアム会員限定コンテンツとなっています。
プレミアム会員は、当社メンバーシップサービスの全てのコンテンツに加えて、
「情報家電産業のリバイバル戦略 -エンド価値志向の多層化戦略-」ほか、
当社のオリジナル研究レポートのご利用が可能なプレミアムサービスです。
この機会に是非プレミアム会員へのご入会をご検討ください。

新着記事

2024.10.23

24年8月の「旅行業者取扱高」は19年比で68%に

2024.10.22

24年8月の「商業動態統計調査」は5ヶ月連続のプラス

2024.10.21

企業活動分析 エスビー食品24年3月期は営業利益44%増の増収減益へ

2024.10.21

企業活動分析 ハウス食品グループ本社の24年3月期は増収減益へ

2024.10.18

消費者調査データ 植物性ミルク(2024年10月版) 「キッコーマン 豆乳」全項目首位で抜群の強さ

2024.10.17

24年9月の「景気の現状判断」は7ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.10.17

24年9月の「景気の先行き判断」は再び50ポイント割れに

2024.10.16

24年7月の「現金給与総額」は31ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.10.15

企業活動分析 エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 2024年3月期はインバウンド売上高が過去最高で増収大幅増益に

2024.10.15

企業活動分析 株式会社 高島屋24年2月期は円安による客単価や入店客数の増加で増収増益

2024.10.10

24年8月は「完全失業率」は改善、「有効求人倍率」は悪化

2024.10.09

24年8月の「消費支出」は4ヶ月連続のマイナスに

2024.10.09

24年8月の「家計収入」は4ヶ月連続のプラス

2024.10.08

企業活動分析 味の素の24年3月期は販売単価の上昇や為替の影響で過去最高益を更新

2024.10.07

MNEXT 価値の根拠は何か―欲望を充当するもの(要約版)

2024.10.07

企業活動分析 株式会社ニトリHD24年3月期は決算期変更の影響もあり減収減益

2024.10.04

消費者調査データ 紅茶飲料(2024年10月版) 首位「午後の紅茶」、「紅茶花伝」に水をあける

2024.10.03

24年9月の「乗用車販売台数」は2ヶ月ぶりのプラス

2024.10.02

24年8月の「新設住宅着工戸数」は4ヶ月連続のマイナス

2024.10.01

MNEXT 日本人消滅論の錯覚―世相批判の論理(2024年)

2024.09.30

企業活動分析 しまむらの24年2月期は全事業で既存店1店舗当たりの売上高が上昇し増収増益へ

2024.09.30

企業活動分析 ファーストリテイリング23年8月期は売上・営業利益ともに3期連続で過去最高を達成

週間アクセスランキング

1位 2024.10.07

MNEXT 価値の根拠は何か―欲望を充当するもの(要約版)

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

5位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area