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支出全般は堅調さを保っているが、カテゴリーレベルでは一部で改善の動きが鈍化しつつある。耐久財では、クルマや家電を中心に低迷が続いている。
雇用環境と収入環境はともに改善しており、購買力に対する懸念材料は認められない。
2022年1月に発出されたまん延防止等重点措置により、外食の一部業態では大幅な落ち込みが顕在化しつつあるが、それ以外の領域には同様の悪影響は波及していない模様だ。
新規陽性者数も増加傾向にあり、今後のコロナ政策対応如何では、マインドの再悪化も懸念される。
値上げが今後幅広い分野に波及していくと、消費回復の動きを頓挫させる可能性が濃厚だ。
コロナ政策リスクと値上げリスクには引き続き警戒を要する。
JMR消費INDEXは、2022年2月時点で53.3と前月よりも低下しているが、50を上回る水準は保っている。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標の状況は前月と変わらず、消費支出と平均消費性向は改善が続く一方、預貯金は悪化が続いている。
販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)のうち、改善が4指標、悪化が6指標となり、悪化の側が優勢の状況に転じた(図表2)。
支出関連と販売関連との間で改善と悪化の優劣が分かれており、特に販売関連で改善の動きが鈍化しつつあるようだ。
消費支出は、名目と実質ともにプラスが続いている(図表4)。
10大費目別では、2022年2月は、名目と実質の双方で、光熱・水道、教養娯楽、その他の消費支出、交通・通信の4費目はプラスだが、食料、保健医療、住居、家具・家事用品、被服及び履物、教育の5費目がマイナスである。マイナスの側が若干優勢の状況に転じている(図表5)。
販売現場では、小売業全体の売上は5ヶ月ぶりに悪化に転じた。
チャネル別では、ドラッグストアは10ヶ月連続のプラス、コンビニエンスストアは3ヶ月連続のプラスとなった。スーパーは4ヶ月ぶりにプラスに転じている。
他方、家電大型専門店とホームセンターは、4ヶ月連続のマイナスである。百貨店は、5ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表9、図表10)。
引き続き、チャネル間で好不調の格差がみられる。これまで悪化が続いていた状況から改善に転じるものがある一方、改善が続いていた状況から悪化に転じるものもあり、今のところ変化の方向は定まっていない。
外食売上は、全体では3ヶ月連続でプラスとなった。
業態別では、2022年2月時点で、ファーストフードは12ヶ月連続のプラス、パブ・居酒屋は3ヶ月連続のプラスである。他方、ファミリーレストランは3ヶ月ぶりにマイナスに転じている。伸び率は、ファーストフードでは前月よりも上昇している反面、ファミリーレストランでは-20.8%、パブ・居酒屋では-46.0%と、大幅な落ち込みを示している(図表18)。
2022年1月に入り再発出されたまん延防止等重点措置の悪影響は、翌2月にファミリーレストランとパブ・居酒屋の伸び率の急落の形で顕在化している模様だ。
新車販売では、乗用車(普通+小型)は7ヶ月連続のマイナス、軽乗用車も10ヶ月連続のマイナスである(図表11)。一昨年同月比でみても、2021年4月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車で、ともにマイナスが続いている。新車販売の低迷は長期化しつつある。
家電製品出荷については、白物家電で改善の動きが続く一方で、AV機器と情報家電では不振が続いている。
白物家電では、ルームエアコンを除く3品目で前月同様プラスとなっている。AV機器ではスピーカシステムを除く2品目は、前月同様マイナスである。情報家電でも、スマートフォンとノートPCともに、5ヶ月連続でマイナスとなっている(図表12、図表13、図表14)。
新設住宅着工戸数は、全体では12ヶ月連続でプラスとなった。
利用関係別では、2022年2月時点で、分譲住宅・一戸建ては10ヶ月連続のプラスであり、分譲住宅・マンションは再びプラスに戻した。他方で、持家は3ヶ月連続のマイナスである(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家は中部圏だけがプラスに戻しているが、首都圏は2ヶ月連続のマイナス、近畿圏とその他の地域は3ヶ月連続のマイナスである(図表16)。
マンションはその他の地域ではプラスが続き、首都圏と中部圏はプラスに戻しているが、近畿圏ではマイナスが続いている(図表17)。
新設住宅着工戸数は今のところ底堅さを保っているが、分譲住宅と持家との間で好不調の格差が生じている。
雇用については、有効求人倍率と完全失業率はともに改善しており、雇用環境は良好である(図表6)。
収入については、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てでプラスが続いており、収入環境でも改善の動きがみられる(図表7)。
消費マインドについては、今のところ方向感が定まっていない。
景気ウォッチャー現状判断DIは2022年3月時点で大幅な上昇をみせており、その急回復ぶりが際立っている。
他方で、消費者態度指数は4ヶ月連続で低下し、低迷が続いている(図表8)。
総合すると、消費は底堅さを保っており、一部で顕著な悪化が見られるはするものの、そうした動きは限定的なものに止まっているようだ。
消費支出など支出全般は堅調さを保っているが、カテゴリーレベルでは一部で改善の動きが鈍化しつつある。耐久財では、クルマや家電を中心に低迷が続いている。
雇用環境と収入環境はともに改善しており、購買力に対する懸念材料は認められない。
2022年1月に発出されたまん延防止等重点措置により、外食の一部業態では大幅な落ち込みが顕在化しつつあるが、それ以外の領域には同様の悪影響は波及していない模様だ。
オミクロン株B.A.2系統による感染再拡大で、新規陽性者数も増加傾向に転じつつある。今後、まん延防止等重点措置の再発出など、政策対応如何では再びマインド悪化を招くことも懸念される。
更に、ウクライナ情勢等を契機に加速した円安の下で、値上げの圧力はより一層高まりつつある。2022年度に入り顕著となってきた値上げの動きが、今後幅広い分野に波及していくと、消費回復の動きを頓挫させる可能性も濃厚だ。
今後の消費回復を阻む要因として、コロナ政策リスクと値上げリスクには引き続き警戒を要する。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 凍結した消費マインドを溶解させるマーケティング―解除後の消費増加シナリオ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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