半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2022年04月20日

月例消費レポート 2022年4月号
消費は底堅く悪化の動きも限定的-コロナ政策と値上げのリスクには要警戒
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 支出全般は堅調さを保っているが、カテゴリーレベルでは一部で改善の動きが鈍化しつつある。耐久財では、クルマや家電を中心に低迷が続いている。
 雇用環境と収入環境はともに改善しており、購買力に対する懸念材料は認められない。
 2022年1月に発出されたまん延防止等重点措置により、外食の一部業態では大幅な落ち込みが顕在化しつつあるが、それ以外の領域には同様の悪影響は波及していない模様だ。
 新規陽性者数も増加傾向にあり、今後のコロナ政策対応如何では、マインドの再悪化も懸念される。
 値上げが今後幅広い分野に波及していくと、消費回復の動きを頓挫させる可能性が濃厚だ。
 コロナ政策リスクと値上げリスクには引き続き警戒を要する。

 JMR消費INDEXは、2022年2月時点で53.3と前月よりも低下しているが、50を上回る水準は保っている。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標の状況は前月と変わらず、消費支出と平均消費性向は改善が続く一方、預貯金は悪化が続いている。

 販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)のうち、改善が4指標、悪化が6指標となり、悪化の側が優勢の状況に転じた(図表2)。

 支出関連と販売関連との間で改善と悪化の優劣が分かれており、特に販売関連で改善の動きが鈍化しつつあるようだ。

 消費支出は、名目と実質ともにプラスが続いている(図表4)。

 10大費目別では、2022年2月は、名目と実質の双方で、光熱・水道、教養娯楽、その他の消費支出、交通・通信の4費目はプラスだが、食料、保健医療、住居、家具・家事用品、被服及び履物、教育の5費目がマイナスである。マイナスの側が若干優勢の状況に転じている(図表5)。

 販売現場では、小売業全体の売上は5ヶ月ぶりに悪化に転じた。

 チャネル別では、ドラッグストアは10ヶ月連続のプラス、コンビニエンスストアは3ヶ月連続のプラスとなった。スーパーは4ヶ月ぶりにプラスに転じている。

 他方、家電大型専門店とホームセンターは、4ヶ月連続のマイナスである。百貨店は、5ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表9図表10)。

 引き続き、チャネル間で好不調の格差がみられる。これまで悪化が続いていた状況から改善に転じるものがある一方、改善が続いていた状況から悪化に転じるものもあり、今のところ変化の方向は定まっていない。

 外食売上は、全体では3ヶ月連続でプラスとなった。

 業態別では、2022年2月時点で、ファーストフードは12ヶ月連続のプラス、パブ・居酒屋は3ヶ月連続のプラスである。他方、ファミリーレストランは3ヶ月ぶりにマイナスに転じている。伸び率は、ファーストフードでは前月よりも上昇している反面、ファミリーレストランでは-20.8%、パブ・居酒屋では-46.0%と、大幅な落ち込みを示している(図表18)。

 2022年1月に入り再発出されたまん延防止等重点措置の悪影響は、翌2月にファミリーレストランとパブ・居酒屋の伸び率の急落の形で顕在化している模様だ。

 新車販売では、乗用車(普通+小型)は7ヶ月連続のマイナス、軽乗用車も10ヶ月連続のマイナスである(図表11)。一昨年同月比でみても、2021年4月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車で、ともにマイナスが続いている。新車販売の低迷は長期化しつつある。

 家電製品出荷については、白物家電で改善の動きが続く一方で、AV機器と情報家電では不振が続いている。

 白物家電では、ルームエアコンを除く3品目で前月同様プラスとなっている。AV機器ではスピーカシステムを除く2品目は、前月同様マイナスである。情報家電でも、スマートフォンとノートPCともに、5ヶ月連続でマイナスとなっている(図表12図表13図表14)。

 新設住宅着工戸数は、全体では12ヶ月連続でプラスとなった。

 利用関係別では、2022年2月時点で、分譲住宅・一戸建ては10ヶ月連続のプラスであり、分譲住宅・マンションは再びプラスに戻した。他方で、持家は3ヶ月連続のマイナスである(図表15)。

 三大都市圏別の推移をみると、持家は中部圏だけがプラスに戻しているが、首都圏は2ヶ月連続のマイナス、近畿圏とその他の地域は3ヶ月連続のマイナスである(図表16)。

 マンションはその他の地域ではプラスが続き、首都圏と中部圏はプラスに戻しているが、近畿圏ではマイナスが続いている(図表17)。

 新設住宅着工戸数は今のところ底堅さを保っているが、分譲住宅と持家との間で好不調の格差が生じている。

 雇用については、有効求人倍率と完全失業率はともに改善しており、雇用環境は良好である(図表6)。

 収入については、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てでプラスが続いており、収入環境でも改善の動きがみられる(図表7)。

 消費マインドについては、今のところ方向感が定まっていない。

 景気ウォッチャー現状判断DIは2022年3月時点で大幅な上昇をみせており、その急回復ぶりが際立っている。

 他方で、消費者態度指数は4ヶ月連続で低下し、低迷が続いている(図表8)。

 総合すると、消費は底堅さを保っており、一部で顕著な悪化が見られるはするものの、そうした動きは限定的なものに止まっているようだ。

 消費支出など支出全般は堅調さを保っているが、カテゴリーレベルでは一部で改善の動きが鈍化しつつある。耐久財では、クルマや家電を中心に低迷が続いている。

 雇用環境と収入環境はともに改善しており、購買力に対する懸念材料は認められない。

 2022年1月に発出されたまん延防止等重点措置により、外食の一部業態では大幅な落ち込みが顕在化しつつあるが、それ以外の領域には同様の悪影響は波及していない模様だ。

 オミクロン株B.A.2系統による感染再拡大で、新規陽性者数も増加傾向に転じつつある。今後、まん延防止等重点措置の再発出など、政策対応如何では再びマインド悪化を招くことも懸念される。

 更に、ウクライナ情勢等を契機に加速した円安の下で、値上げの圧力はより一層高まりつつある。2022年度に入り顕著となってきた値上げの動きが、今後幅広い分野に波及していくと、消費回復の動きを頓挫させる可能性も濃厚だ。

 今後の消費回復を阻む要因として、コロナ政策リスクと値上げリスクには引き続き警戒を要する。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.10.10

24年8月は「完全失業率」は改善、「有効求人倍率」は悪化

2024.10.09

24年8月の「消費支出」は4ヶ月連続のマイナスに

2024.10.09

24年8月の「家計収入」は4ヶ月連続のプラス

2024.10.08

企業活動分析 味の素の24年3月期は販売単価の上昇や為替の影響で過去最高益を更新

2024.10.07

MNEXT 価値の根拠は何か―欲望を充当するもの(要約版)

2024.10.07

企業活動分析 株式会社ニトリHD24年3月期は決算期変更の影響もあり減収減益

2024.10.04

消費者調査データ 紅茶飲料(2024年10月版) 首位「午後の紅茶」、「紅茶花伝」に水をあける

2024.10.03

24年9月の「乗用車販売台数」は2ヶ月ぶりのプラス

2024.10.02

24年8月の「新設住宅着工戸数」は4ヶ月連続のマイナス

2024.10.01

MNEXT 日本人消滅論の錯覚―世相批判の論理(2024年)

2024.09.30

企業活動分析 しまむらの24年2月期は全事業で既存店1店舗当たりの売上高が上昇し増収増益へ

2024.09.30

企業活動分析 ファーストリテイリング23年8月期は売上・営業利益ともに3期連続で過去最高を達成

2024.09.30

消費からみた景気指標 24年7月は7項目が改善

2024.09.30

24年8月の「ファーストフード売上高」は42ヶ月連続のプラスに

2024.09.30

24年8月の「ファミリーレストラン売上高」は30ヶ月連続プラス

2024.09.27

24年8月の「コンビニエンスストア売上高」は9ヶ月連続のプラスに

2024.09.27

24年8月の「全国百貨店売上高」は30ヶ月連続のプラス、高額品やインバウンドがけん引

2024.09.27

24年8月の「チェーンストア売上高」は既存店で再びプラスに

2024.09.26

24年7月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.09.26

24年7月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のプラス

2024.09.25

24年7月の「商業動態統計調査」は4ヶ月連続のプラス

2024.09.24

MNEXT 価値で捉え、群れ集団を狙えー2025年のマーケティング

2024.09.24

24年8月の「景気の先行き判断」は5ヶ月ぶりに50ポイント超え

2024.09.24

24年8月の「景気の現状判断」は6ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.09.20

消費者調査データ ミネラルウォーター(2024年9月版) 全項目首位「サントリー 天然水」、リピート意向の高いPB

週間アクセスランキング

1位 2024.10.01

MNEXT 日本人消滅論の錯覚―世相批判の論理(2024年)

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2009.05.08

中国市場の現在 世界一は中国一になれるか?-ウォルマートの上海進出

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area