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消費は低迷が続き、好不調の格差も目立つ。
雇用や収入、消費マインドなど、消費を取り巻く環境は徐々に好転している。しかし、消費の回復にまではつながっていないのが現状だ。
コロナウイルス新規陽性確認者数は低水準で推移している。政府からは、イベントや飲食店等に対する人数制限撤廃等の行動制限緩和策が打ち出されることとなった。
一部の繁華街や観光地では、お店の客足や街のにぎわいなども少しずつ戻りつつあるが、コロナ前の水準には程遠い。
コロナに関連する政治的リスクも、消費の行方を左右する第一の要因として、引き続き要注意だ。
JMR消費INDEXは、2021年9月時点で46.7となり前月よりも上昇したが、依然50を割り込んでいる。近似曲線は、今のところ上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標は全て2ヶ月連続で悪化となった。こうした状況は、2020年8月~9月の時期以来のこととなる。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は2021年9月時点で、改善の側と悪化の側とが拮抗した状態にある(図表2)。
2021年9月と、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年9月時点とを比較すると、INDEXの全15指標中、改善は食料品売上(一昨年同月比伸び率:112.4%)、ファーストフード売上(同:100.6%)の2指標だけである。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、2ヶ月連続のマイナスである(図表4)。一昨年同月比でも、名目と実質ともに5ヶ月連続でマイナスが続いている。
10大費目別では、2021年9月も、名目と実質ともにマイナスの側が優勢である。名目では、マイナスが6費目に対し、プラスが4費目。実質でもマイナスが6費目に対し、プラスが4費目である(図表5)。
販売現場では、小売業全体の売上が、2ヶ月連続で悪化した。チャネル間で好不調の格差が生じている。
ドラッグストアは前年同月比で5ヶ月連続のプラスであるが、一昨年同月比ではマイナスに転じた。スーパーは前年同月比で再びプラスとなったが、一昨年同月比ではマイナスに転じている。コンビニも前年同月比でプラスに戻したものの、一昨年同月比では2021年1月以降マイナスが続いている。
一方、ホームセンターは、前年同月比で5ヶ月連続のマイナスであり、一昨年同月比でも2ヶ月連続のマイナスである。家電大型専門店も、前年同月比で4ヶ月連続のマイナスであり、一昨年同月比でも2ヶ月連続のマイナスである。百貨店は前年同月比で2ヶ月連続のマイナスであり、一昨年同月比でも2021年1月以降マイナスが続いている(図表9、図表10)。
外食売上は、全体では2ヶ月連続でマイナスとなった。業態別では、ファーストフードは2021年3月以降プラスを保っている。一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋は4ヶ月連続でマイナスとなっている(図表18)。
一昨年同月比では、ファーストフードは2021年8月に再びプラスに戻した。しかし、全体、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋はマイナスが続いている。
新車販売では、乗用車(普通+小型)の伸びは2ヶ月連続のマイナス、軽乗用車の伸びも5ヶ月連続のマイナスである(図表11)。
一昨年同月比でも、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。
家電製品出荷では、AV機器のうち4K対応薄型テレビやBDレコーダはマイナスが続いている。白物家電でも、電気掃除機やルームエアコン、401L以上の電気冷蔵庫はマイナスが続く。情報家電のうち、スマートフォンは4ヶ月連続でプラスを保っているが、ノートPCは2021年4月以降マイナスが続き、2021年7月以降は伸び率の低下も進んでいる(図表12、図表13、図表14)。
新設住宅着工戸数は、コロナ下で好調が続いている数少ない項目のひとつである。
全体では、7ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・一戸建ては5ヶ月連続でプラスであるが、分譲住宅・マンションは2ヶ月連続のマイナスである(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で6ヶ月連続プラスとなっている。一昨年同月比でも、全ての地域で2ヶ月連続のプラスである。マンションでは、近畿圏、その他の地域はプラスとなったが、中部圏はマイナスに転じ、首都圏は2ヶ月連続のマイナスである。一昨年同月比では、全ての地域でマイナスとなっている(図表16、図表17)。
雇用環境では、再び改善の動きがみられる。2021年9月時点で、完全失業率は横ばいで推移するとともに、有効求人倍率は再び上昇している(図表6)。
収入環境も、改善傾向を保っている。2021年9月時点では、現金給与総額、所定内給与額、超過給与の全てで3ヶ月連続伸びがプラスとなっている。特に、所定内給与額の伸びは9ヶ月連続のプラス、超過給与の伸びは6ヶ月連続のプラスである(図表7)。
消費マインドは回復の動きが続いている。消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに、2ヶ月連続で上昇している。特に、景気ウォッチャー現状判断DIでは、この2ヶ月で急回復ぶりが際立っている(図表8)。
総合すると、消費は低迷が続き、好不調の格差も目立つ。
消費支出はマイナスが続き、10大費目でも悪化の側が優勢である。小売販売でも外食でも、チャネル間で好不調の違いが鮮明だ。耐久財でも、新車販売や家電製品出荷では不振が続く一方で、新設住宅着工戸数は持家を中心に好調が長く続いている。
他方で、雇用環境では改善の動きが戻り、収入環境でも改善が続いている。消費マインドも、その急回復ぶりが際立っている。
消費を取り巻く環境は徐々に好転していることは確かだが、それが消費の回復にまではつながっていないのが現状だ。
全国のコロナ新規陽性確認者数は11月18日以降、200人を割り込む水準で推移している。直近の11月24日時点での全国の新規陽性確認者数は75人となり、100人を割り込んでいる。東京都の新規陽性確認者数も11月12日以降は20人以下の水準で推移し、直近の11月24日時点での新規陽性確認者数は5人である。
11月24日の政府公表によると、国内で新型コロナウイルス・ワクチンの2回目接種を終えた人の割合が全人口の76%、1回目接種を終えた人の割合も全人口の79%へと、着実に上昇している。3回目接種も、2021年12月1日から全国各地で開始の予定だ。
政府は行動制限緩和策として、イベントや飲食店等に対し、ワクチン・検査パッケージの活用を条件に、人数制限を撤廃することになった。
報道によると、一部の繁華街や観光地では、お店の客足や街のにぎわいなども少しずつ戻りつつあるが、それでもコロナ前の水準にはまだ程遠いのが実情のようだ。
今後、新規陽性者数に再び増加の兆しが見えてきた場合、政策対応次第では、マインドの回復に水を差しかねない。コロナに関連する政治的リスクも、消費の行方を左右する第一の要因として、引き続き要注意だ。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 凍結した消費マインドを溶解させるマーケティング―解除後の消費増加シナリオ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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