JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2013年10月辺りをピークに下降局面に入っている。特に2018年9月頃以降は、低下の勢いに拍車がかかっている。短期的な動きは、2019年5月頃を境に大きく上下動し、2019年10月は急激に落ちこんでいる(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、改善の動きが目立っていた2019年9月とは対照的に、2019年10月はファーストフード売上以外のすべての項目で悪化となっている(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、名目と実質ともに、2019年9月時点での大幅なプラスから、2019年10月は顕著に落ち込み、マイナスに転じている(図表5。10大費目別でみても、2019年9月は9費目でプラスとなっていたが、2019年10月は9費目でマイナスとなっている(図表6)。
販売現場での動きみてみる。日常財のうち、商業販売は2019年10月に、コンビニエンスストアを除き、小売業全体でも主要な業態別でも、伸びはマイナスへと大きく落ち込んでいる(図表11)。
外食は2019年10月に、全体と全ての業態で伸びは大きく低下。ファーストフードを除きマイナスに転じている(図表15)。
耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは2019年10月に、黒物家電と白物家電ともに大幅に低下し、黒物家電の一部ではマイナスに転じている(図表13)。
新車販売は、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2019年10月時点で伸びは大きく低下し、11月もマイナスが続いている(図表12)。
新設住宅着工戸数の全体の伸びは、マイナスが続いている。分譲住宅・マンションは高い伸びを保っている。分譲住宅・一戸建てはわずかなプラスであり、持家はマイナスが続いている(図表14)。
雇用環境に関して、有効求人倍率と完全失業率はともに、2019年10月時点では横ばいとなっている(図表8)。
収入環境は、2019年10月時点で、現金給与総額の伸びがゼロ、所定内給与額の伸びはわずかなプラス。超過給与の伸びはマイナスが続いている(図表9)。
消費マインドに関して、2019年11月時点では、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、わずかに上昇している。しかし、これまでの落ち込みの分をカバーするには至っていない(図表10)。
経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。生産について、鉱工業全体での指数は2019年6月に大きく低下した後、一進一退が続き、2019年10月にも再び、大幅な落ち込みを見せている(図表18)。
マーケットの動向をみると、2019年11月上旬から12月上旬にかけて、相場は方向感が定まらない状況にあった。その後、12月中旬には再び円安・株高の動きがみられる(図表21)。
長期金利は2019年8月末頃を底に、上昇傾向で推移している。特に12月に入って以降は、プラスとなる日が散見される(図表22)。
総合すると、消費は、支出全般、日常財、耐久財のいずれでも、悪化の動きが顕著である。直近の2019年10月の動きに関しては、その大部分は消費税増税後の反動減によるものとみられる。ただし、伸びの値や落ち込みの幅は、前回2014年4月の消費税増税時に近いか、それを超えているものが目立っている。
雇用環境や消費マインドでは、悪化の動きに一旦歯止めがかかった。だが、収入環境は総じて横ばいであり、一部では悪化の動きすらみられる。更に、輸出と生産はともに、悪化の動きが顕著である。マーケットでは、円安・株高の動きが足許でみられる一方、長期金利は大幅なマイナスから上昇基調へと転じており、プラスへの復帰も射程に入りつつあるようだ。
2019年10月からの消費税増税のインパクトも含めて、消費への下押し圧力はますます強まっていく、とみた方がよいであろう。
2019年12月13日に日本銀行より公表された「第183回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、業況判断DIは前回2019年9月時点に比べて、一部の業種を除きほぼ総じて悪化している。
2019年12月10日に支給された国家公務員の冬のボーナス(期末・勤勉手当)は、前年比でマイナスとなっている。民間企業の2019年冬季ボーナスも、前年比でマイナスとなった可能性が濃厚だ。
2019年12月18日に示された、政府の2020年度の経済見通しは、実質GDP成長率は+1.4%と極めて強気である。しかし、2019年度の実績見込みの数値は、民間需要に関連する項目で特に下方修正されている。これらを踏まえると、政府による2020年度の経済見通しも、将来時点で下方修正される可能性が高そうである。
足許の消費の状況は盤石とは言い難く、消費の先行きも楽観視はできないと考える方が妥当であろう。
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