半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2019年12月23日


(2019.12)
月例消費レポート 2019年12月号
消費への下押し圧力は強まっていく
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2013年10月辺りをピークに下降局面に入っている。特に2018年9月頃以降は、低下の勢いに拍車がかかっている。短期的な動きは、2019年5月頃を境に大きく上下動し、2019年10月は急激に落ちこんでいる(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、改善の動きが目立っていた2019年9月とは対照的に、2019年10月はファーストフード売上以外のすべての項目で悪化となっている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、名目と実質ともに、2019年9月時点での大幅なプラスから、2019年10月は顕著に落ち込み、マイナスに転じている(図表5。10大費目別でみても、2019年9月は9費目でプラスとなっていたが、2019年10月は9費目でマイナスとなっている(図表6)。

 販売現場での動きみてみる。日常財のうち、商業販売は2019年10月に、コンビニエンスストアを除き、小売業全体でも主要な業態別でも、伸びはマイナスへと大きく落ち込んでいる(図表11)。

 外食は2019年10月に、全体と全ての業態で伸びは大きく低下。ファーストフードを除きマイナスに転じている(図表15)。

 耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは2019年10月に、黒物家電と白物家電ともに大幅に低下し、黒物家電の一部ではマイナスに転じている(図表13)。

 新車販売は、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2019年10月時点で伸びは大きく低下し、11月もマイナスが続いている(図表12)。

 新設住宅着工戸数の全体の伸びは、マイナスが続いている。分譲住宅・マンションは高い伸びを保っている。分譲住宅・一戸建てはわずかなプラスであり、持家はマイナスが続いている(図表14)。

 雇用環境に関して、有効求人倍率と完全失業率はともに、2019年10月時点では横ばいとなっている(図表8)。

 収入環境は、2019年10月時点で、現金給与総額の伸びがゼロ、所定内給与額の伸びはわずかなプラス。超過給与の伸びはマイナスが続いている(図表9)。

 消費マインドに関して、2019年11月時点では、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、わずかに上昇している。しかし、これまでの落ち込みの分をカバーするには至っていない(図表10)。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。生産について、鉱工業全体での指数は2019年6月に大きく低下した後、一進一退が続き、2019年10月にも再び、大幅な落ち込みを見せている(図表18)。

 マーケットの動向をみると、2019年11月上旬から12月上旬にかけて、相場は方向感が定まらない状況にあった。その後、12月中旬には再び円安・株高の動きがみられる(図表21)。

 長期金利は2019年8月末頃を底に、上昇傾向で推移している。特に12月に入って以降は、プラスとなる日が散見される(図表22)。

 総合すると、消費は、支出全般、日常財、耐久財のいずれでも、悪化の動きが顕著である。直近の2019年10月の動きに関しては、その大部分は消費税増税後の反動減によるものとみられる。ただし、伸びの値や落ち込みの幅は、前回2014年4月の消費税増税時に近いか、それを超えているものが目立っている。

 雇用環境や消費マインドでは、悪化の動きに一旦歯止めがかかった。だが、収入環境は総じて横ばいであり、一部では悪化の動きすらみられる。更に、輸出と生産はともに、悪化の動きが顕著である。マーケットでは、円安・株高の動きが足許でみられる一方、長期金利は大幅なマイナスから上昇基調へと転じており、プラスへの復帰も射程に入りつつあるようだ。

 2019年10月からの消費税増税のインパクトも含めて、消費への下押し圧力はますます強まっていく、とみた方がよいであろう。

 2019年12月13日に日本銀行より公表された「第183回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、業況判断DIは前回2019年9月時点に比べて、一部の業種を除きほぼ総じて悪化している。

 2019年12月10日に支給された国家公務員の冬のボーナス(期末・勤勉手当)は、前年比でマイナスとなっている。民間企業の2019年冬季ボーナスも、前年比でマイナスとなった可能性が濃厚だ。

 2019年12月18日に示された、政府の2020年度の経済見通しは、実質GDP成長率は+1.4%と極めて強気である。しかし、2019年度の実績見込みの数値は、民間需要に関連する項目で特に下方修正されている。これらを踏まえると、政府による2020年度の経済見通しも、将来時点で下方修正される可能性が高そうである。

 足許の消費の状況は盤石とは言い難く、消費の先行きも楽観視はできないと考える方が妥当であろう。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

2024.04.22

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2024.04.23

24年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2024.04.23

24年2月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のマイナス

2024.04.22

企業活動分析 カルビーの23年3月期は需要堅調もコスト高吸収できず減益に

2024.04.22

企業活動分析 亀田製菓の23年3月期は国内外好調で増収もコスト増で減益着地

2024.04.22

企業活動分析 大正製薬の23年3月期はOTCなど好調で増収増益

2024.04.19

企業活動分析 森永製菓の23年3月期は、「inゼリー」等好調で2年連続最高益更新

2024.04.18

24年2月の「商業動態統計調査」は36ヶ月連続のプラスに

2024.04.17

24年3月の「景気の現状判断」は14ヶ月ぶりに50ポイント割れに

2024.04.17

24年3月の「景気の先行き判断」は5ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.04.16

24年2月の「家計収入」は17ヶ月連続のマイナス

2024.04.16

24年2月の「消費支出」は12ヶ月連続のマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

2位 2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

3位 2022.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2022年5月版) 「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず

4位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

5位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area