JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2019年7月現在、下降トレンドにある。短期的な動きも、INDEXの数値はここ1~2ヶ月、50を割り込んでいる(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、2019年6月から7月にかけて若干改善寄りの動きがみられたが、販売関連指標では2019年5月以降、悪化の動きが進んでいる(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出の名目と実質の伸びはともに、2019年5月をピークに低下が続いている(図表5)。直近の10大費目別にみると、2019年7月時点で、名目と実質ともに、伸びがプラスの費目数がマイナスの費目数を上回っている。しかし、2019年6月から7月にかけてプラスの費目数は減少している(図表6)。消費支出に関しては、全体でみても10大費目別でみても改善の勢いは鈍化傾向にある。
販売現場での動きは、日常財のうち、商業販売は2019年7月時点で、小売業全体でみても主要な業態別でみても、伸びはマイナスに転じた(図表11)。外食は2019年8月時点で、全体で伸びはプラスを保ち、業態別でみても概ねプラスを保っている(図表15)。
耐久財のうち、2019年8月時点で、家電製品出荷の黒物家電の伸びは大きくプラスとなり、白物家電の伸びは概ねプラスとなっている(図表13)。新車販売は2019年8月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びはプラスを保っている(図表12)。新設住宅着工戸数は2019年7月時点で、全体の伸びはマイナスとなっている。カテゴリー別でみても、伸びは鈍化傾向にある(図表14)。
雇用環境に関して、完全失業率は2018年6月以降改善が続いている一方、有効求人倍率は2019年5月以降悪化が続いており、変化の方向感が定まっていない(図表8)。収入環境に関して、現金給与の伸びは2019年に入って以降、ゼロ近傍での一進一退が続いている(図表9)。消費マインドに関して、景気ウォッチャー現状判断DIは2019年8月に一旦下げ止まってはいる。しかし、消費者態度指数は2019年8月時点で11ヶ月連続の悪化となっており、消費マインドの悪化基調は続いている(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは12月以降、マイナスが続いている(図表16)。生産について、鉱工業全体での指数は2019年7月に一旦下げ止まっているが、前月6月時点での低下分を戻し切れてはいない(図表18)。
マーケットの動向をみると、2019年7月末頃から8月末頃にかけて円高・株安で推移した後、9月中旬にかけては円安・株高へと転じた。だが、9月下旬においては相場の方向感は定まっていない(図表21)。長期金利は現在、マイナスへと大きく割り込んでおり、2019年9月初旬から中旬にかけて一旦上昇したが、その後は9月下旬にかけて再び低下傾向に転じている(図表22)。
総合すると、消費は、改善の勢いが鈍化しつつある。日常材は、分野間で好不調が分かれてきている。耐久財は家電を筆頭に盛り上がりを見せてはいるが、これらは2019年10月からの消費税増税前の駆け込み需要と目される。消費マインドの悪化基調も続いている。雇用環境と収入環境は方向感が定まってはいない。しかし、悪化寄りの動きが強まっているとみた方がよさそうだ。
経済全般の動きとして、輸出では悪化の動きに一向に歯止めがかからず、生産も回復の動きは鈍い。株価と為替の相場の方向感は足許で定まらなくなっており、長期金利は大きくマイナスに落ち込んだまま、再び下げ足を速めている。
安倍政権による経済諸対策もあってか、今回の消費税増税前の駆け込み需要の規模は、前回2014年4月時点に比べて小さいものとなると見込まれている。ただ、増税間近のタイミングで、新たに導入される軽減税率制度に対する批判は、消費者と小売業者の双方から高まっている。本稿執筆時点(2019年9月30日)でも、プレミアム付商品券の販売もごく一部の自治体で始まったにすぎず、キャッシュレス・消費者還元事業が小売店頭で具体的にどう動いていくのかも、今のところ定かではない。
こういった状況の中で、今の日本経済が、税率上昇2%分の購買力低下への圧力を跳ね返せるだけの経済成長をこの先持続できるのかについては、エコノミストやマーケット関係者の間でも、いまだに意見が分かれたままである。消費税増税の実施を目前に、これからの消費の行方を、事実上成り行き任せにしてしまうことだけは確かなようだ。
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