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人口減少社会下で甦る都心商店街
舩木 龍三

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人口が増加しているのは12都道府県
 国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本の人口は2006年にピークを迎え、2007年からは減少を始めるとされている(中位推計)。
 しかし、多くの都道府県ではすでにこれが現実のものとなっている。総務省の人口推計によれば、2003年10月から2004年9月の間で人口が増加したのは12都道府県、35都道府県では人口減少が始まっている。人口が増加した12都道府県をみてみると、その多くが関東圏にあることが確認できる。なかでも、最大の人口をもつ東京都が5.5%と高い成長をしていることがわかる(図表1)。

図表1.47都道府県の人口増減の実態(2003年10月~2004年9月における人口増減)


都心への人口集中
 東京都の人口増加は持続性をもったものである。バブル崩壊後、人口減少に陥ったものの1997年以降増加に転じている。しかも、いわゆる郊外での人口増加だけではなく都心人口の増加が寄与している。区部の人口は1999年以降増加に転じた。とくに顕著なのが、中央区、港区、渋谷区といった都心部である(図表2)。これは、地価下落を背景に都心部に20階建て以上の超高層マンションの建設ラッシュが大きく寄与していると推測できる。

図表2. 都心への人口回帰(1995年を100として指数化)


東京都心商店街の可能性
 都心への人口集中が持続するなかで都心の小売業が元気を取り戻してきている。2002年の商業統計では、東京都全体で小売業の年間販売額は前回比(1999年)で96%、区部が95%、市部が99%という状況であったが、2004年調査では、2002年対比で都全体100%、区部101%、市部99%と区部が増加に転じている。なかでも高い成長を示したのが、中央区110%、渋谷区108%、新宿区107%、中野区107%、品川区105%と都心部に集中していることが確認できる。
 どんな地域が成長しているか、データは2002年と1997年対比しかなく若干古くなるが、商業集積地という観点からみてみたい。東京都の整理によると、2004年時点で23区内の商業集積地は707を数える。そのうち1997年と比較可能な426の商業集積地における小売業販売額の増減をみていくと、販売額が増加したのは90の商業集積地である。区内をいくつかにグルーピングしてみてみると、都心三区(千代田・中央・港区)と副都心(新宿・渋谷・豊島区)で42%、山の手(品川・目黒・大田・世田谷区)23%、下町(台東・墨田・江東・北・荒川・葛飾・江戸川区)21%となっており、あらゆる地域で伸びる商業集積があることが確認できる(図表3)。

図表3. 東京23区内商業集積地の小売業販売額変動(2002年/1997年) 
比較可能な426商業集積地の分析結果


図表4.小売業販売額成長率 
120%以上の商業集積(2002年/1997年)
 120%以上の成長性を示した商業集積地は41あった。そのリストが図表4である。ここから確認できることは、再開発地区(南新宿、日比谷など)だけではなく、従来からある商店街(北砂、大島東部など)も含まれており、多様な商業集積が立地条件にあわせて繁栄していっていることが確認できる。今回分析したデータは2002年データであるが、直近では麻布十番、神楽坂といった商店街も元気を取り戻してきている。都心への人口集中は、多様な商業集積が発展する原動力となっている。


当コンテンツの参考資料として、メンバーシップサービス会員限定で東京都区部の商業集積地のデータをご提供しております。ぜひご活用ください。


本稿には当社代表・松田久一、並びに流通研究チームのメンバーによる議論・検討の成果が活かされております。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。

(2005.7)

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