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2006年のヒット商品
「趣味型消費」が生んだヒット商品
大場美子

 消費は堅調に推移して当面のところ2007年もこの傾向は持続するものとみられる。消費を牽引しているのは30代後半から50代にかけての成熟層である。子育てが一段落して自分のためにお金を使い出している。2006年のヒット商品をみると、豊かな消費体験をもった成熟層が評価したものが多かった。

趣味性の強さ
 イメージする生活スタイルを実現するために、さまざまなカテゴリーで自分の趣味やテイストにこだわった商品サービスを選択していく消費行動がヒット商品を生んでいる。こうした消費スタイルを我々は「趣味型消費」と呼ぶ。
 デジタル一眼レフカメラが典型例である。国内のレンズ一体型のデジカメ市場は、既に成熟段階にあり買換需要中心で対前年成長率は103%程度とみられるが、デジタル一眼レフは、市場規模は一体型の5分の1程度であるが120%近い高い成長が見込まれている。売れ筋は、実勢価格が10万円前後の入門機で、キヤノン、ニコンの二強にソニーが参入して各社1千万画素を超える新製品を相次いで投入し高画素数競争が激化している。
 主たるユーザーは子育て期のカメラ入門層と、フィルムカメラからの写真高関心層である。低価格化が進んだとはいえ、一体型の売れ筋商品に比べて高価格であるが、より趣味性の高い市場が伸びている。
 自動二輪の市場全体は縮小が続くなかで、販売店が顧客のネットワーク拠点となって売上拡大がつづくハーレーダビットソンや、PDAで日本ではじめてのヒット商品となったウィルコム「W-ZERO3」シリーズなどがあげられる。こうしたデジタル機器など趣味性の強い商品領域では、一度ファンになると固定化する傾向が強く、デザインを一新して機能追加された「W-ZERO3[es]」が出ると買い増しするコア顧客となり、さらに自分の周辺の消費者への伝道師となって商品情報を伝えていく。
 男性が最もこだわっているデジタル家電領域(図表参照)では、専門家なみに情報をもった高関心層が初期受容層になると受容層が拡大してヒット商品に育っていく傾向がある。
 女性では、主に服飾雑貨、インテリア、化粧品、健康食品・サプリメントなどの領域で自分の好みを追求する。スタイリストなどファッション関係の玄人が評価して、海外化粧品ブランドが採用したことから評判に火がついた「白鳳堂の化粧筆」や、「三九本草坊医薬のティーバック式漢方薬」などが典型例である。
 これら趣味性の強いヒット商品には、それを使っている自分が「なりたい自分に近づく」といった願望や、かつて欲しくても手に入れることができなかった「あこがれ」のものを自分のものにするといった、心の内にある願望を満たしてくれる力がある。そういう意味でものづくりと情報の豊かさ、メッセージ性がある。

作り手のこだわりをブランド化
 意外なものがブランドとして確立しヒットした。
 男前豆腐店の「京都ジョニー」が「男前豆腐」「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」に続いて豆腐の全国ブランドとしてヒットしている。北海道産の大豆、沖縄のにがりを使用しコクのある豆腐の味にこだわっている。充填豆腐であるが従来品に比べて値段がちょっと高めだ。雪国まいたけの「雪国まいたけ」に続くヒット商品「雪国もやし」は「めちゃ高いから、みんな買うなよ」とCMしている。もやしがめちゃ高かったら誰も買わないが究極のもやしをつくるという思いのもとに、「うまさの秘訣は、おいしい水で育てて、ていねいに根切りしている」という消費者が思いもしなかった生産者のこだわりを訴求したことが、おいしいということと高価格の理由として受容されたポイントだろうと思われる。
 食品のブランド化というとあちこちで産地ブランドが乱立しているが、それとは違うブランドの作り方である。
 食品・飲料は、こだわり商品の女性で2位、男性で3位(図表参照)ともともと関心の高い領域である。しかしデジタル家電にみられるような玄人はだしの消費者が自ら専門的な情報収集をし、アクティブに商品選択をしていく商品領域とは異なる。消費者が気がつかなかった商品のもつ価値を訴求して、実際に使用してみてその品質に納得することで、これまで話題にならなかった商品が口コミに乗って情報が拡大してヒットしている。その決め手は「作り手の強いこだわり」があってそれが「情報」として巧く伝達されることにありそうだ。

図表 自分なりの選択基準やポリシーを持っている商品領域


中高年の気がかりをフォーカス
 健康志向のサプリや食品ブームは継続しているが、2006年は、中高年をターゲットにしたヒット商品が強い。花王の「へルシアウォーター」は、「へルシア緑茶」から苦みをとってスポーツ飲料のカテゴリーで特保の強みを活かし、徹底的に機能訴求して特に中高年の男性にアピールした。サントリーの「黒烏龍茶」も男性を強く意識している。医薬品では小林製薬の「ナイシトール85」は明確に男性向け肥満症改善薬と訴求してヒットした。これまでダイエットや肥満解消というと若い女性が中心だったが、男性の意識の変化とターゲティングが成功して、男性市場を開拓した。
 一方、カゴメの「ラブレ」は、腸まで届く乳酸菌でお腹の調子を整えるということで女性の間で口コミで急拡大している。
 ロート製薬から発売されたビタミン含有保健薬「ビタレスト錠」は「寝ている間に栄養補給でき、密度濃い睡眠時間に。」と訴求し、睡眠不足で疲れがとれないという悩みにフォーカスしている。医薬品ではないが、ライオンの「グッスミン」も爽快な目覚めが期待できるという。
 これらは成熟層の悩みにストレートに応えるコンセプトと商品開発とコミュニケーションの一貫性がとられた成功事例といえるだろう。

「日本」にこだわり
 12人の女優やタレントを使って「日本の女性は美しい。」というメッセージで上半期のシャンプー市場を席巻したのが資生堂の「TSUBAKI」であった。パッケージデザイン、中身品質のよさも当然であるが、このメッセージが多くの共感を得たことがヒットの要因であったと思われる。
 シャンプー市場では、ここ数年のシェア上位ブランドはラックス、ハーバルエッセンス、アジエンスと宣伝広告に登場する女性はみな日本人以外であり、そこには微妙な違和感があった。不発に終わったトリノ五輪で唯一うっぷんを晴らした荒川選手ではないが、日本と日本人の魅力の再評価がひとつのトレンドになっている。

 一般的に収入と支出が最大になるのは40代50代の時である。もともと消費好きの新人類世代、断層の世代がこの年代にあたっている。成熟層と「趣味型消費」はこれから10年の中長期の消費トレンドになっていくだろう。
(2006.12)

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