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(2018.11)
月例消費レポート 2018年10月号
消費は改善の動きが続いている
―ただし景気と消費への先行き懸念は残る
主任研究員 菅野 守



 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年8月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年4月時点をピークに、50を挟んでの上下動が前月と同様続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は4か月ぶりに、平均消費性向は7か月ぶりに改善に転じた。他方で、預貯金は2017年6月以降、悪化が続いている。販売関連指標では、2018年8月時点で、計10項目中、改善が7項目に対し悪化が3項目となり、改善の側が優勢であった。直近の2018年9月時点でも、本稿執筆時点で公表されている計8項目中、改善が5項目に対し悪化が3項目となっており、改善の側が優勢な状況が続いている。支出水準関連指標では3項目2項目が改善に転じるとともに、販売関連指標でも改善の動きが優勢となっており、2017年6月以来14か月ぶりに、支出水準関連指標と販売関連指標の変化の方向が改善で一致している(図表2)。

 公表された2018年8月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年8月に、名目と実質ともに伸びは再びプラスとなっている(図表5)。二人以上世帯では、2018年7月に続き2ヶ月連続で、名目と実質ともに伸びはプラスを保っている。消費支出全般に関しては、名目と実質ともに改善の動きが続いている。10大費目別にみると、2018年8月は名目と実質ともに、プラスの費目数がマイナスの費目数を上回っている。特に名目では、10項目中、教養娯楽を除く9項目でプラスとなっている。前月7月から8月にかけての推移をみると、名目と実質ともにプラスの費目数が増えていることから、10大費目別でも改善方向への動きが認められる。以上より、消費支出の動きに関しては、全体と10大費目別の双方で、改善の動きが認められる(図表6)。消費者物価指数の動きをみると、物価上昇のペースは引き続き緩やかなものとなっており、直近の2018年9月時点では、総合、財、サービスの全てで伸びは若干低下しており、物価は足許で落ち着きを見せている(図表7)。販売現場での動きをみると、商業販売や外食などの日常生活財では、2018年9月時点での伸びは、一部の業態でマイナスながらも、概ねプラスを保っている(図表11、図表15)。他方、耐久財では、新設住宅着工戸数では2018年8月に、全体での伸びはプラスに復帰しており、カテゴリー別でみても伸びは総じてプラスとなっている。他方で、新車販売は2018年8月時点で、軽乗用車と乗用車(普通+小型)ともに、伸びは3ヶ月ぶりにマイナスに転じており、足許では悪化の動きが認められる。家電製品出荷では、2018年8月時点での伸びは、黒物家電と白物家電のいずれでも、商品間で好不調が分かれている(図表12、図表13、図表14)。雇用環境に関しては、完全失業率は2018年8月時点で2.4%へと低下し、更に10月30日に公表された2018年9月には2.3%となり、8月に続き2ヶ月連続で低下している。有効求人倍率はほぼ一貫して上昇が続いており、直近では2018年8月時点の1.63倍から、10月30日に公表された2018年9月には1.64倍へと上昇し、1974年1月以来の高水準を保っている。雇用環境では改善の動きが持続している(図表8)。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けており、雇用環境と同様に改善の動きが持続している(図表9)。ただし、消費マインドに関しては2018年9月時点で、消費者態度指数は横ばいとなっているが、景気ウォッチャー現状判断DIは前月8月よりも低下しており、消費マインドの方向感は依然として定まっていない(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは、2018年9月(速報)時点で22か月ぶりにマイナスに転じた。生産についても、鉱工業生産指数は2018年4月以降、低下傾向にある。2018年8月に一旦、指数にはわずかながらも上昇の動きが見られたが、10月30日に公表された2018年9月の指数の値は再び低下に転じている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は8月下旬に円安・株高の局面に入ったが、10月初頭には円高・株安の局面に転じている(図表21)。長期金利は8月に入って以降、上昇傾向を保ってきたが、10月下旬以降は低下が続いている(図表22)。

 総合すると、消費は総じて改善の動きが続いている。耐久財では好不調が分かれてはいるが、日常生活財では概ね改善の動きが認められる。支出水準関連と販売関連ともに、改善の方向で動きが一致するようになったことは、前向きに評価できるだろう。経済全般では、雇用環境と収入環境で改善の動きが持続してはいるが、これまで息長く改善を続けてきた輸出が悪化に転じ、生産は低下傾向に歯止めがかかっていない。マーケットも、足許で円高・株安に転じている。こうした動きは、景気の先行きにとっては気がかりな材料だ。

 2018年10月15日の臨時閣議で、2019年10月から消費税率を10%へ引き上げることと、増税による需要落ち込みに備えた景気対策の実施が、併せて表明された。今後の経済論議の焦点は、消費税増税後の景気と消費の見通しへと移りつつあり、今回の消費税増税の景気へのインパクトの大小だけでなく、増税に備えた景気対策の効果に関しても、評価が既に分かれている。2%分の税率上昇のうちどの程度が物価に転嫁されるのか、食品等への軽減税率の適用が物価の転嫁幅にどう影響するのか、更に物価上昇に伴う需要量の減少がどの程度となるか等々、については今後の理論的・実証的な検討が待たれるところではある。ただ、実質GDP成長率が1.62%であることを踏まえると、仮に2019年度入り後も(消費税増税の影響を除いた部分では)同程度の成長率を維持できたとしても、消費税増税に伴う物価上昇率がそれを上回ることとなれば、経済全体の購買力は低下することなる。(落ち込みの程度はより小さいものに済んだとしても)前回2014年度の消費税増税時と同じようにマイナス成長に陥る恐れも十分にあり、消費税増税後の景気と消費の行方を楽観視するのは早計であろう。この先万が一、消費税増税前に景気が腰折れする可能性にも注意を払いつつ、今後の景気や消費の推移を慎重に見極める必要性はより一層高まりつつあることは確かだ。

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