JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年7月現在、上昇トレンドにある。ただし、短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年4月時点をピークに50を挟んでの上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は2018年5月以降、平均消費傾向は2018年2月以降、預貯金は2017年6月以降、悪化が続いている。販売関連指標では、2018年6月時点で、計10項目中、改善が7項目に対し悪化が3項目となり、改善の側が優勢であった。直近の2018年7月時点では、計10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となっている。支出水準関連指標では3項目全てが3ヶ月連続で悪化となっているのに対し、販売関連指標では改善の動きと悪化の動きが拮抗している(図表2)。
公表された2018年7月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年7月に、実質の伸びは3ヶ月連続でマイナスとなったが伸び率の値は前月6月よりも上昇しており、名目の伸びは3ヶ月ぶりにプラスに復帰している(図表5)。二人以上世帯でも、2018年7月時点で、名目と実質ともに伸びは再びプラスに戻している。消費支出全般に関しては、名目と実質ともに改善方向への動きが認められる。他方、10大費目別にみると、2018年7月は名目と実質ともに、マイナスの費目数がプラスの費目数を上回っている。更に、前月6月から7月にかけての推移をみると、名目と実質ともにマイナスの費目数が増えていることから、10大費目別では悪化方向への動きが認められる。以上より、消費支出の動きに関しては、全体と10大費目別とで、引き続き方向感が一致しない状況となっている(図表6)。2018年7月現在までの消費者物価指数の動きをみると、物価上昇のペースは引き続き極めて緩やかなものとなっている(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年7月以降、商業販売や外食などの日常生活財では、前月6月に比べ伸び率の値は概ね低下しており、一部の業態では新たにプラスからマイナスへと落ち込んでいる(図表11、図表15)。他方、耐久財では、新車販売は2018年8月時点で、軽乗用車と乗用車(普通+小型)ともに、伸びは2ヶ月連続でプラスとなっており、改善の動きが続いている。家電製品出荷をみると、黒物家電の伸びは2018年5月以降、3ヶ月連続でプラスを保っている。白物家電の伸びも、2018年7月にはプラスとなっている。家電製品出荷でも改善の動きが続いている。新設住宅着工戸数では2018年7月に、全体での伸びはわずかにマイナスとなったが、伸び率の値は上昇している。カテゴリー別でみても伸び率の値は総じて上昇し、概ねプラスに復帰している(図表12、図表13、図表14)。雇用環境に関しては、2018年7月時点で、完全失業率は2ヶ月連続で上昇しているが、有効求人倍率はほぼ一貫して上昇が続いており、両者の間で方向感が定まらない(図表8)。収入環境については、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けており、改善の動きが持続している(図表9)。消費マインドに関しては2018年8月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは前月7月よりも上昇しているが、消費者態度指数は2ヶ月連続で低下しており、消費マインドの方向感は定まっていない(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出は2018年7月現在、伸びはプラスを保ち続けている。だが他方で、生産については、2018年7月に鉱工業生産指数は3ヶ月連続で低下し、悪化の動きが続いている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は8月下旬以降、再び円安・株高の局面に入っている(図表21)。長期金利は8月に入って以降、極めて緩やかながら上昇傾向を保っており、特に9月半ば頃以降は概ね上昇の動きが持続している(図表22)。
総合すると、消費は引き続き好不調の格差を抱えてはいるが、もたつきが見られる日常生活財とは対照的に、耐久財では概ね改善の動きが持続している。これまで悪化の動きが続いてきた消費支出全般でも、名目と実質の双方で改善方向への動きが認められることは、前向きに評価できるだろう。ただ、経済全般では、収入環境で改善の動きが持続してはいるものの、生産はピークアウトの動きが鮮明になっているとともに、雇用環境や消費マインドに関しては足許で方向感が定まっていないことは、景気の先行きを占う上でも気がかりな材料だ。9月6日の深夜未明に発生した北海道胆振東部地震は、苫東厚真火力発電所を始めとする産業インフラに被害をもたらし、酪農も含めた農業や観光など北海道の主要産業にも大きなダメージを与えており、現状でもそこからはまだ完全には立ち直り切れていない。北海道での景気低迷の可能性やそれが日本全体の景気に与える影響なども含め、今後の景気や消費の推移を慎重に見極める必要があるだろう。
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