JMR消費INDEXは、2017年7月時点まで、上昇傾向を保っている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では2017年8月以降、3項目全てが前年同月比で悪化となっている。他方、販売関連指標では、2017年9月時点で判明している9項目中、改善が6項目、悪化が3項目となり、前月よりも改善の側が更に優勢となっている。消費の動きは前月に引き続き、方向感が定まらない状況が続いている(図表2)。
公表された2017年9月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、2017年9月現在、名目と実質ともにマイナスに転じている。10大費目別にみると、実質ではマイナスの費目数の方が大きく上回っているが、名目ではプラスの費目数とマイナスの費目数とが拮抗している。費目間での好不調の格差は前月同様、名目と実質の双方で際立っているが、伸び率の値は、プラスの費目では前月よりも大きくなっているのに対し、マイナスの費目では前月よりも小さくなっている。10大費目別では、改善の側の勢いが強まり、悪化の側の勢いが弱まる傾向にあるといえよう(図表5、図表6)。販売現場での動きとして、2017年9月現在、商業販売や外食などの日常生活財は総じてプラスを保ち、改善の動きが続いている(図表11、図表15)。耐久財のうち、新車販売では、乗用車(普通+小型)はマイナスに転じたが、軽乗用車は引き続きプラスを保っている。新設住宅着工戸数は、総じてマイナスとなっているが、分譲マンションを除き、マイナス幅はわずかなものにとどまっている。家電製品出荷も、概ねマイナスとなっているが、伸び率の値は黒物家電を中心に改善の動きがみられる。耐久財では、前月と同様にカテゴリー間で好不調が分かれるとともに、カテゴリー内でも改善と悪化の動きが混在し、一進一退の状況にある(図表12、図表13、図表14)。雇用環境は、有効求人倍率と完全失業率のいずれでみても、息の長い盤石ぶりをみせている(図表8)。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てが2ヶ月連続でプラスとなり、改善の動きが続いている(図表9)。消費マインドも、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに2ヶ月連続で改善しており、消費マインドにも復調の気配が見え始めている(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出は改善の動きが進展している。生産も、上昇傾向を保っている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、為替と株価は、9月上旬以降、円安・株高の局面が続いており、11月7日には株価は終値で約25年10か月ぶりの高値となった(図表21)。長期金利は、10月半ば以降0.07%前後を天井に概ね横ばいで推移してきたが、11月に入り再び低下に転じている(図表22)。
雇用環境の盤石ぶりと収入環境の改善に、新たに消費マインドの復調の気配も加わる中で、消費は、強弱両材料が交錯し一進一退の状況にありつつも、底堅さを保っている。輸出と生産の改善が続くとともに、円安・株高が進行し長期金利が低下に転じていることで、景気と消費の先行きに対する追い風は更に強まっている。この先、実体経済の回復の進展とマインドの復調を両輪に、消費が膠着状態を抜け出し本格回復への道筋をつけられるかが、次の課題となるだろう。来るべき今冬のボーナス商戦や年末年始の旅行・レジャー動向が、今後の消費を占う試金石となりそうだ。
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