JMR消費INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2017年7月現在、支出水準関連指標では、消費支出は3ヶ月連続で改善しているが、平均消費性向と預貯金では消費の悪化を示唆する動きがみられる。販売関連指標では、現時点で判明している9項目中、改善が4項目、悪化が5項目となり、悪化の側が優勢な状況に転じている。支出水準関連指標と販売関連指標の双方で、消費回復の動きは足踏み状態となっている(図表2)。
公表された2017年7月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、名目と実質ともに3ヶ月連続でプラスが続いている。だが、10大費目別にみると、名目と実質の双方で、前月までのプラスの費目数の方が優勢だった状況から、今月はマイナスの費目数の方が優勢化しつつある。消費改善の裾野の広がりにも、一旦ブレーキがかかった格好だ(図表5、図表6)。販売現場での動きとして、商業販売や外食などの日常生活財では、一部の業態を除き、概ねプラスを保っている(図表11、図表15)。耐久財のうち、新車販売では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車の双方とも再びプラスへと戻っている。だが、新設住宅着工戸数と家電製品では、今月に入りマイナスへの落ち込みが目立っている(図表12、図表13、図表14)。日常生活財は堅調な推移をみせているものの、耐久財はカテゴリー間で好不調が分かれている。雇用環境は息の長い盤石ぶりをみせており、有効求人倍率は着実に上昇を続け、完全失業率も2011年1月以降での過去最小値を保ち続けている(図表8)。収入環境については、所定内給与はプラスを保ち、超過給与額も再びプラスに戻してはいるが、現金給与総額はわずかにマイナスに落ち込んでおり、改善の勢いは鈍いままだ(図表9)。消費マインドでは、景気ウォッチャーと消費者態度指数ともに、7月はわずかながら上昇しているが、改善への動きは依然冴えない(図表10)。
各種経済指標のうち、経済全般の状況に着目すると、輸出は改善の動きを続けている(図表16)。生産は、7月はわずかに低下しているが、改善傾向は保たれている(図表18)。マーケットの動向をみると、2017年8月上旬から8月下旬にかけて、為替は若干の上下動を伴いつつ横ばい傾向にあったのに対し、株価は低下の動きが続いてきた。その後は8月末にかけて、株価と為替はともに、方向感が定まらないままだ。他方、長期金利は、8月に入り低下の動きが続き、8月末にはゼロ近傍にまで落ちこみを見せている(図表21、図表22)。
消費回復の動きは一旦足踏み状態となっており、改善の勢いも足許ではやや鈍化気味だ。各種経済指標では、好悪両材料が交錯している。雇用環境の盤石ぶりは、相変わらず際立っている。他方、今夏の商戦や余暇・レジャー動向をみると、夏場の異常気象により、一部業界では売上は大きく前年割れしている。マーケットの動向からは、景気や消費の先行きに対し、マーケット関係者の弱気なスタンスが垣間見えてくる。ただ、足許での景気や消費への悪影響は、今夏限りの一過性のものに止まると見込まれる。この先、景気や消費が一本調子で悪化し底割れする気配は、今のところうかがわれない。秋以降は、消費の本格回復への展望が開けてくるのを期待したいが、そのためには、消費復調への弾みとなる新たな「ひと押し」が必要となろう。
参照コンテンツ
おすすめ新着記事

5G(第5世代移動通信システム)
5Gとは「第5世代移動通信システム(5th Generation)」のことで、通信規格の名称。現在の「4G」に続く最新の規格で、日本では2020年3月から商用化が開始された。4K/8Kの高精細映像などの大容量コンテンツの伝送や、自動運転や遠隔ロボットへの活用、IoTの普及などが期待されている。

テイクアウト、デリバリーで伸びる洋風ファーストフード
コロナ禍で外食全体が苦戦するなか、ハンバーガーチェーンなどの洋風ファーストフード業態は、コロナ前の2019年と比較しても116.2%と伸長している。原動力となったのは、感染症対策がしやすく、テレワークなど働き方・ライフスタイルの変化に伴うテイクアウトやデリバリーの拡大だ。原材料の値上がりや、健康意識、環境配慮意識の高まりなどの不安要素はあるものの、今後も成長が期待される業態だ。

広まるネットショッピング 特定層に留まるSNS購買とフリマアプリ
コロナ禍でオンラインショッピングの利用が増えている。利用チャネルもアマゾンや楽天だけにとどまらず、多様な買い方がされている。今回は、その中でもSNSを通じた購買やフリマアプリの利用に焦点を当て、今後の利用拡大の可能性を探ってみた。



