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(2016.07)
月例消費レポート 2016年6月号
消費は日常生活財中心に悪化が進む
-消費マインドは方向感が定まらず、内外の悪材料に翻弄されやすい状況にある
主任研究員 菅野 守

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1.はじめに

 2016年6月1日に安倍首相より、消費税増税を2年半再延期する旨が明らかにされたこことで、日本経済は消費回復に向けて、新規まき直しへの新たな一歩を踏み出した。だがその矢先、イギリスで噴き出したEU離脱問題や、バングラデシュで勃発したテロ事件など、海外発の政治的・経済的波乱要因を引き金にマーケットは円高・株安へと大きく反転し、併せて金利の低下にも一層拍車がかかっている。西日本は長引く大雨で水害や土砂災害に見舞われる一方、関東では水不足が深刻化しており、こうした国内の天候不順も景気の先行きや今後の暮らし向きに対する懸念材料としてくすぶり続けている。

 政府並びに日銀は、景気の現状認識と先行き見通しに関して、足許での若干の厳しさと先行きに対する楽観姿勢を、今のところ崩してはいない。2016年6月15日と16日の両日で開催された、日本銀行の金融政策決定会合によると、景気の現状について、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられはするものの、基調判断としては従来と同様、緩やかな回復を続けているとの見方を堅持している。需要の中身に着目すると、新興国を中心とした海外経済の減速により、輸出の持ち直しには一服感がみられはするが、国内では、設備投資が緩やかな増加基調を保ち、個人消費も一部で弱い動きがあるものの底堅く推移し、住宅投資では再び持ち直しの動きがみられる。今後の景気見通しについては、当面、輸出・生産面の鈍さの影響は残るものの、家計・企業の両部門で所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続することで、国内需要は増加基調をたどる。加えて、新興国経済が減速状態から脱していくことで、輸出も緩やかに増加するとみられる。よって景気は今後、緩やかに拡大していく、との予想が示されている。政府は、2016年6月17日公表の月例経済報告で、景気の基調判断並びに先行き判断ともに、前回の2016年5月公表分に引き続き、据え置きとした。景気の基調判断では「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とし、先行き判断では「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」としている。景気の先行きに対するリスク要因についても、今回2016年6月は、前回5月公表時の表現を踏襲している。ただし、個別項目のうち、企業収益については、前月5月の「改善傾向にあるが、そのテンポは緩やかになっている。」から、今月6月は「高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。」へと、判断は2ヶ月連続で下方修正されている。

 政府と日銀はともに、景気の基調判断並びに先行き判断に関して、「緩やかな回復基調が続いている、緩やかな回復を続けている」並びに「緩やかな回復に向かう、緩やかに拡大していく」というように、基本的には前向きなスタンスを採っている。だが他方で、足許の景気に関し一部で弱い動きが出てきていることも認めながら、海外発の経済的波乱要因に対する警戒姿勢も維持している。政府と日銀は、先行き不透明感が高まりつつある日本経済に対しては、楽観と悲観両にらみの構えで臨んでいる。

 7月10日に投開票となる参院選は、懸案だった消費税増税が再延期に決まったことで、与野党間で最大の争点となるはずだったものが無くなってしまい、加えて、衆院選とのダブル選挙が回避されたことで、政権交代のかかった大決戦になるはずだったものが、雲散霧消してしまう結果となっている。税制や社会保障に関する問題も含め、主要な政策課題については、選挙前の国会でまともになされず、事実上棚上げとなっている。参院選でも、争点として十分にこなれないまま、他のテーマや論争の中に埋もれてしまい、結果的に、選挙後に本格的な議論は持ち越しとなりそうだ。


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