半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2016.06)
月例消費レポート 2016年5月号
消費は再び大きく悪化-政策対応如何では消費のスランプは続くおそれも
主任研究員 菅野 守

本コンテンツの全文は、有料会員サービスでの公開となっております。
ご利用には有料の会員登録が必要です。
ご登録済みの方は、こちらから全文をご利用ください。
会員のご登録はこちらをご覧ください。

1.はじめに

 熊本地震の発生から40日余りが過ぎた。被災地では、「日常」への復帰が一歩ずつ進められてはいるが、地震がもたらしたダメージは予想以上に大きいものとなっている。5月23日には内閣府より、熊本地震による熊本、大分両県での被害額が、最大で4.6兆円に上るとした試算も公表された。この被害規模は、2004年の中越地震(最大3兆円)を超え、2011年の東日本大震災(同16.9兆円)や1995年の阪神大震災(同9.9兆円)に次ぐ、過去3番目の大きさとなりそうである。被災地域に止まらず、九州全体での経済的ダメージも、観光業を始めとして、大きくなる可能性が懸念されている。官邸や与党内部からは、九州の観光産業に対する支援策として、国が費用の一部負担する形で旅行券を発行するプランなどが、表明されてもいる。

 政府並びに日銀は、景気の現状認識と先行き見通しに関して、引き続き、厳しい見方を崩してはいない。2016年4月27日と28日の両日で開催された、日本銀行の金融政策決定会合によると、景気の現状について、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられはするものの、基調判断としては従来と同様、緩やかな回復を続けているとの見方を堅持している。今後の景気見通しについては、当面、輸出・生産面の鈍さの影響は残るものの、家計・企業の両部門で所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続することで、国内需要は増加基調をたどる。加えて、新興国経済が減速状態から脱していくことで、輸出も緩やかに増加するとみられる。よって景気は今後、緩やかに拡大していく、との予想が示されている。政府は、2016年5月23日公表の月例経済報告では、景気の基調判断並びに先行き判断ともに、前回の2016年4月公表分に引き続き、据え置きとした。景気の基調判断では「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とし、先行き判断では「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」としている。景気の先行きに対するリスク要因についても、今回2016年5月は、前回4月公表時の表現を踏襲している。具体的には、中国を始めとするアジア新興国や資源国等での景気の下振れを引き金とした、国内景気への下押しリスクや、内外の金融資本市場での変動の余波の他、熊本地震がもたらす経済的ダメージなどが、景気の先行きに対するリスク要因として明示されている。個別項目のうち、住宅建設については、前月4月の「おおむね横ばいとなっている」から、今月5月は「このところ持ち直しの動きがみられる」へと、判断は9ヶ月ぶりに上方修正された。他方、企業収益については、前月4月の「非製造業を中心に改善傾向にある」から、今月5月は「改善傾向にあるが、そのテンポは緩やかになっている」へと、判断は2ヶ月ぶりに下方修正されている。

 政府と日銀はともに、景気の基調判断並びに先行き判断に関して、「緩やかな回復基調が続いている、緩やかな回復を続けている」並びに「緩やかな回復に向かう、緩やかに拡大していく」というように基本的に前向きなスタンスを示す一方で、新興国経済の減速など、海外発の経済的波乱要因への警戒姿勢の強さも、政府と日銀の双方で共通している。

 5月26日より始まった伊勢志摩サミットでは、世界経済の下支えのための対応策として、財政出動を始めとする経済政策で、各国の足並みがどこまでそろえられるかが焦点となった。翌27日に出された首脳宣言では、「世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている」との認識の上で、新たな危機を回避し持続可能で均衡ある成長の達成に貢献するための対応策として打ち出された「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」に沿って、機動的な財政出動をはじめ金融政策、構造改革など、G7各国が状況に応じて政策を総動員して世界経済を支えていく姿勢が強調されている。今回のサミットで議長国を務めた日本としては、「先ず隗より始めよ」のコトバにならい、機動的な財政出動の先鞭をつけることが求められてくる。その場合、財政出動というアクセルと、消費税再増税というブレーキとを、どのように折り合いをつけて、どのタイミングでそれぞれを踏んでいくのか、という方針を定めることが、先ずは必要となろう。


本コンテンツの全文は、有料会員サービスでの公開となっております。
ご利用には有料の会員登録が必要です。
ご登録済みの方は、こちらから全文をご利用ください。
会員のご登録はこちらをご覧ください。


参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる
消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる

プラスが続くコーヒー飲料の市場についての調査結果をみると、23年調査に引き続き「BOSS」が全項目で首位を獲得、さらに2位の「ジョージア」とは、3ヶ月内購入で差を広げた。「BOSS」はエクステンションの「BOSS CRAFT」も高評価で、リーディングブランドとしての存在感を示している。

成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)
成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)

健康志向などを追い風に堅調な動きを続ける茶飲料市場のなかで、特に伸びている領域がある。3年連続で過去最高を更新した麦茶飲料だ。背景にあるのは、気候温暖化による毎年のような猛暑と、熱中症対策意識の高まりだ。

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い
消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

22年度、過去最高を更新した即席めん市場。その多くを占めるカップめんについての調査結果をみると、「カップヌードル」が絶対的な強さを示し、それを「赤いきつね/緑のたぬき」「日清のどん兵衛」が追う展開となった。一方で、節約志向を背景に、コストパフォーマンスに優れるPBの再購入意向も高い。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.03.29

企業活動分析 KDDIの23年3月期は法人向け好調等で増収、過去最高益更新

2024.03.28

消費からみた景気指標 24年1月は6項目がプラスに

2024.03.28

月例消費レポート 2024年3月号 消費は足踏み状態が長期化している-インフレ見通しや消費マインド改善などによる消費回復の後押しに期待

2024.03.27

24年2月の「ファミリーレストラン売上高」は24ヶ月連続プラス

2024.03.27

24年1月の「ファーストフード売上高」は35ヶ月連続のプラスに

2024.03.27

24年1月の「広告売上高」は、2ヶ月連続のマイナス

2024.03.26

24年2月の「全国百貨店売上高」は24ヶ月連続のプラス、季節商品やインバウンド好調で

2024.03.26

24年2月の「チェーンストア売上高」は既存店で12ヶ月連続のプラス、食料品は引き続き好調

2024.03.26

24年2月の「コンビニエンスストア売上高」は3ヶ月連続のプラスに

2024.03.25

消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる

2024.03.22

MNEXT 資本主義の近未来の行方―企業の持続的存続の鍵

週間アクセスランキング

1位 2024.03.12

企業活動分析 マツキヨココカラカンパニーの23年3月期はPB商品拡販やインバウンド需要増加で増収増益

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2008.07.24

戦略ケース カルフールは何故失敗したのか?

4位 2024.03.15

企業活動分析 スギHDの23年2月期は増収減益。26年度売上1兆円へ向けた挑戦が続く

5位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area