-消費マインドの動向が消費の行方を左右する
2016年4月14日に熊本を襲った地震は最大で震度7を計測、続く4月16日の本震でも震度7を記録した。一連の地震活動の中で、震度7を2回連続して観測したのは、1949年に「震度7」自体が設けられてからは、初めてのこととされる。今回の熊本地震発生から10日余りが過ぎた2016年4月25日10:00時点で、内閣府・非常災害対策本部がまとめた熊本地震に係る被害状況の報告資料によると、今回地震での死者は48名、重軽傷者は計1,377名。住宅の被害は、全壊1,675棟、半壊と一部破損が合わせて4,174棟。避難所は熊本県を中心に、九州5県で計644箇所、避難者数は計60,077名にも上っている。
公共交通機関の運行再開にも、ようやく目途が立った。熊本空港は19日より一部運航が再開し、翌20日以降は通常の約7割程度まで便数は復活している。鉄道も、23日に九州新幹線の博多-熊本間で運転を再開、27日には九州新幹線全線で運転再開となった。これらは、震災からの復旧・復興にとって、前向きな情報と評価できる。だが、被災による道路の通行止めは、高速道と国道合わせて現在15箇所にも上る。主要な幹線道路が地震に因る土砂崩れなどで寸断されている状況は、避難所への円滑な物資の輸送の妨げとなっているだけでなく、それが長引けば長引くほど今後の復旧・復興に向けた動きの足を引っ張ることとなりかねない。加えて、余震がなかなか収まらず、終息の見通しが立たない状況が続いている。被災者のための仮設住宅の建設になかなか手がつかないと、被災者が避難所暮らしから抜け出せるタイミングも遠のき、被災地域が日常生活を取り戻す日も、益々遅れてしまうこととなる。
政府並びに日銀は、景気の現状認識と先行き見通しに関して、以前よりも厳しい見方をするようになってきている。政府は、2016年4月21日公表の月例経済報告では、景気の基調判断並びに先行き判断ともに据え置きとしている。ただし、景気の先行きに対するリスク要因として、今月4月には、「平成28年(2016年)熊本地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。」と新たに書き加えており、熊本地震がもたらす経済的インパクトへの警戒姿勢を鮮明にしている。個別項目のうち、企業の業況判断については、前月3月の「おおむね横ばいとなっているものの、このところ一部に慎重さが増している」から、今月4月は「慎重さがみられる」へと、判断は2ヶ月連続で下方修正されている。この下方修正は、4月1日に公表された日銀短観で、企業の業況判断が悪化したことを受けてのものである。
政府と日銀はともに、政策の次の一手を模索していた矢先に、今回の熊本地震という想定外のカウンターパンチを喰らってしまった格好だ。地震のタイプとしては、2004年に起きた新潟中越地震に近いと見られていることから、今回の熊本地震が日本経済に及ぼす悪影響も、新潟中越地震の時と同様に比較的軽微で済むのではないか、との見方も、一部からは出てきている。だが他方で、新潟中越地震当時に比べて日本の景気動向が足許において冴えない状況にあることや、2回目の「震度7」により地震による人的・物的被害が一段と拡大していることなどから、今回の熊本地震の場合、表立って見えている被害状況の数値以上に、経済的ダメージはより深くなっているおそれも懸念される。
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