27年ぶりの11営業日連続の株価上昇、21年ぶりの月あたり株価上昇幅過去最高値の更新、更には25年ぶりの東証一部時価総額過去最高値の更新など、5月に入ってからの株価の動向に関しては、話題に事欠かない。プラスとマイナスの双方で相場を揺さぶる程の大きな材料がみられない中で、ちょっとした契機で始まった株価の上昇が、マーケット関係者の間で徐々に広がりつつあった先行き強気のマインドで更に煽られ、歴史的にも稀な上昇相場を演出するに至ったようだ。
2015年5月20日に内閣府より公表された2015年1‐3月期GDP速報では、民間最終消費支出、設備投資、輸出の需要の三本柱は前期比でプラスとなったが、寄与度を踏まえると、輸出に比べ、民間最終消費支出や設備投資などの内需の戻りの鈍さが確認できる。更に、最も寄与度の高かったものが民間在庫品増加である。もし、今期の民間在庫品増加での大幅なプラスが、企業による今期の需要の読み間違いの結果としての在庫の積み上がりだとしたら、次期においてはこれを解消するための在庫調整がGDP成長率への下押し圧力となる可能性も排除できない。景気の動向について、過度に悲観する必要は全くないが、手放しで喜べるほど楽観的にみられる状況にもまだない。
政府と日銀ともに、景気の現状認識と先行き見通しのいずれでも、回復基調にあるとの判断を前月に引き続き堅持している。ただ、2015年4月から5月にかけての両者のコメントの変化を対比すると、日銀では改善を強調する形に表現が変更されており、景気判断のスタンスは、日銀の方が政府に比べやや強気寄りとなっている。政府による景気の基調判断は、2ヶ月連続で据え置きとなっている。個別の項目をみると、個人消費と住宅建設の2項目については判断が上方修正されているが、輸出、生産、公共投資の3項目については判断が下方修正されている。前月に比べると、景気判断としては実質、下方修正含みのスタンスが政府からは示されている。政府と日銀の両者とも、個人消費と住宅投資に関しては前月よりも前向きな判断が示されてはいるが、輸出と生産に関しては政府の方が前月に比べやや引け腰気味に判断の下方修正が出されている。
足許の経済諸指標をみる限り、政府と日銀の双方が個人消費や住宅投資などの内需に対して前向きな判断を示している姿は、いささか楽観的に映る。更に、外需も含め景気の現状と先行きに関し、より一層強気な姿勢を示している日銀の姿は、さすがに前のめりな印象をぬぐいきれない。それだけに今一度、企業や消費者の側でも、消費の取り巻く状況を冷静に見直した上で、消費の現状と先行きに対する官側の判断の是非を見極めることが一層必要となろう。
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