半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2013.07)
月例消費レポート 2013年7月号
消費INDEXは再び回復傾向へ。本格回復を占う夏場商戦へ
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 7月に入って1週間程度で、平年よりも1~2週間近くも早く、関東以西で梅雨明けの状態になるとともに、関東以西の各地では35度を超える猛暑日が続いている。既に夏本番の様相となる中で、エアコンや扇風機、日傘などの夏物商品の売れ行きや、プールなどのレジャー施設の客足など、例年以上に好調な出だしとなっているようである。一部のエコノミストなどからは、猛暑の経済効果がはやし立てられてもいる。7月に入り値上げのラッシュが続くなど、「アベノミクス」のもたらした円安のデメリットが徐々に顕在化しつつある中で、この夏の消費の行方には例年以上に熱い期待が寄せられてもいるようだ。
 2013年7月4日に開かれた日本銀行・支店長会議での報告内容をベースに取りまとめられた「地域経済報告-さくらレポート-(2013年7月)」によると、全国9地域うち、東北を除く8地域で、景気判断は前回報告(2013年4月時点)よりも上方修正された。東北については、景気判断は据え置きとなっている。8地域以上が2四半期連続で上方修正されるのは、2009年7月と10月の2期間以来、3年9ヶ月ぶりのこととなる。本報告では、今回の上方修正の背景として、「家計・企業マインドが改善するもとで国内需要が底堅さを増しているほか、海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に、多くの地域から、『持ち直している』等の報告があった。」としている。個人消費については、前回に引き続き、消費者マインドの改善等を背景に、「持ち直しの動きがみられる」「底堅く推移している」といった報告が各地域からは出されている。前回報告と比較すると、北海道、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄の5地域では判断が上方修正されており、四国に関しても上方修正をにじませる表現となっている。
 個人消費の中身についての言及に着目すると、大型小売店販売額のうち、百貨店については多くの地域で、高額品の販売の好調ぶりが前回報告よりも若干強調されている。他方、スーパーに関しては、ほとんどの地域で依然弱含みとなっている点は、前回と同様である。乗用車販売については、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告が出されており、前回よりも状況が改善していることが示されている。家電販売について、白物家電の堅調さと黒物家電の低迷ぶりは前回報告と同様だが、今回、一部の地域からは「全体としては横ばい圏内の動き」といった報告が出始めるなど、前向きの動きが示唆されている。旅行関連需要については前回と同様、多くの地域で、良好ぶりを示唆する報告が挙がっている。
 雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は緩やかに改善している」等の報告が出されている。前回報告と比較すると、北陸、関東甲信越、東海、近畿、四国、九州・沖縄の6地域で、判断が上方修正されている。他方、雇用者所得については、地域により強弱が分かれている。その内訳をみると、北陸では改善、近畿、四国、九州・沖縄の3地域では横ばい、関東甲信越、東海、中国の3地域では弱含みの状況にある。前回報告と比較すると、北陸、東海、四国の3地域では判断が上方修正されており、北海道と中国に関しては上方修正をにじませる表現となっている。ただし、関東甲信越では判断が下方修正されている。
 2013年7月10日から11日にかけて開催された日本銀行・金融政策決定会合にて、景気判断は、前回6月の「持ち直している」から今回は「緩やかに回復しつつある」へと7ヶ月連続で上方修正され、2011年1月以来2年6ヶ月ぶりに「回復」の文言が盛り込まれた。2013年7月1日に公表された「第157回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観:2013年6月)によると、企業の業況判断が前回よりも総じて改善しており、特に大企業の製造業と非製造業、中堅企業の非製造業では業況判断DIがプラスに転じている。更に、2013年度の設備投資計画でも、設備投資額(ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)ベース)の前年比伸び率は前回調査時点よりも総じて上方修正されており、中小企業の非製造業を除いた残りのすべての層で概ね4%を超えるプラスとなっている。長期金利が落ち着きを取り戻し、マーケットにも再びフォローの風が吹き始めていることに加え、直近の日銀短観の結果や前述の日本銀行・支店長会議での報告内容などから、黒田総裁を始めとする日銀幹部は、足許での実体経済の改善に手ごたえを感じつつ、景気の先行きに対し自信を深めており、それが今回の金融政策決定会合での景気判断の上方修正にみられるような強気のスタンスにも現れているようだ。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。
 

本論文に関連する統計データ

お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

新着記事

2025.03.18

25年2月の「景気の先行き判断」は6ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.03.18

25年2月の「景気の現状判断」は12ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.03.17

なぜ、「外国人」社長が大手企業で多くなるのか - コーポレートガバナンスの罠

2025.03.17

企業活動分析 ファーストリテイリング24年8月期は売上・営業利益ともに4期連続で過去最高を達成

2025.03.14

日本のブランド危機と再生戦略 - トライアドマーケティング

2025.03.13

25年1月の「消費支出」は3ヶ月連続のプラスに

2025.03.12

25年1月の「家計収入」は4ヶ月ぶりのマイナス

2025.03.11

25年1月の「現金給与総額」は37ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

2025.03.10

企業活動分析 ソニーグループの24年3月期は主力のゲーム&ネットワークサービスが大幅な増収に寄与するも金融部門の減益が響き増収減益に

2025.03.07

消費者調査データ RTD(2025年3月版) 「氷結」、「ほろよい」の競り合い続く アサヒの新顔は高いリピート意向

2025.03.06

25年1月は「完全失業率」は横ばい、「有効求人倍率」は改善

2025.03.05

25年2月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2025.03.04

25年1月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続のマイナス

2025.03.03

企業活動分析 NECの24年3月期は国内がけん引し増収増益

2025.02.28

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 清貧・ゆとり世代が消費を牽引!賞与の使い道は?

 

2025.02.28

消費からみた景気指標 24年12月は7項目が改善

2025.02.28

25年1月の「ファミリーレストラン売上高」は35ヶ月連続プラス

 

2025.02.28

25年1月の「ファーストフード売上高」は47ヶ月連続のプラスに

2025.02.27

トランプを支えるネット世論 - 正体は「ルサンチマン」

  

2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

2025.02.27

月例消費レポート 2025年2月号 消費は改善の動きが続いている - 物価や金利の上昇ペース次第で消費回復のブレーキとなるおそれも

2025.02.26

25年1月の「全国百貨店売上高」は3ヶ月連続のプラスに

  

週間アクセスランキング

1位 2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2位 2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

3位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

4位 2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area