半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2011.03)
月例消費レポート 2011年3月号
消費INDEXは上昇カーブ保つ。高まる景気回復への期待
菅野 守

1.はじめに
 2011年2月21日公表の2011年2月の月例経済報告によると、景気の現状については、前月1月の「足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向けた動きが見られる」から、2月は「持ち直しに向けた動きがみられ、足踏み状態を脱しつつある」へと、2ヶ月連続で上方修正された。先行きについても、前月まであった「当面は弱さが残るとみられるものの」の文言が削除され、「先行きについては、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。」へと上方修正されている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、「海外景気や為替レート、原油価格の動向等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。」とし、「海外景気の下振れ懸念」「景気がさらに下押しされるリスク」などと表現していた前月に比べややトーンが弱まってはいるものの、新たに「原油価格の動向」が文言に盛り込まれるなど海外発の下振れリスク要因への警戒は解いていない。
 個別項目を見ると、輸出は前月の「緩やかに減少している。」から2011年2月には「持ち直しの動きがみられる。」へと上方修正されたが、2009年10月以来16ヶ月ぶりのこととなる。その背景要因として、中国や韓国、台湾などアジア向け輸出の持ち直しに加え、米国や欧州向け輸出の回復も判断の上方修正に寄与しているようだ。生産も、前月の「下げ止まりの兆しがみられる。」から2011年2月には「持ち直しの動きがみられる。」へと、2ヶ月連続で上方修正されている。輸出も持ち直しに加え、エコカー補助金打ち切りで落ち込んだ新車販売の底打ち傾向、電子部品・デバイスでの復調などを好感してのものだ。倒産件数は前月の「緩やかな増加傾向にある。」から「おおむね横ばいとなっている。」へと上方修正されたが、これは2009年11月以来15ヶ月ぶりのこととなる。他方、個人消費は、前月の「持ち直しているものの、一部に弱い動きもみられる。」から「このところおおむね横ばいとなっている。」へと、3ヶ月ぶりに下方修正されているが、冬のボーナス支給額伸び悩みやエコポイント縮小による家電販売の不振などを受けてのものだ。
 海外経済の現状については、前月1月の「世界経済は失業率が高水準であるなど引き続き深刻な状況にあるが、景気刺激策の効果もあって、景気は緩やかに回復している。」から2011年2月は「世界経済は、全体として回復している。」へと判断は上方修正されたが、これは2010年5月以来9ヶ月ぶりのことである。先行きについても、前月の「緩やかな回復が続くと見込まれる」から、2011年2月には「緩やかな」の文言が外され、「回復が続くと見込まれる。」と判断が上方修正されている。更に、海外経済の先行きに対するリスク要因についても、前月までの「ただし、回復のテンポは更に緩やかになる可能性がある。また、信用収縮、高い失業率が継続すること等により、景気回復が停滞するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮をはじめ財政政策のスタンスの変化による影響に留意する必要がある。」から、2011年2月には「ただし、欧米の景気が下振れするリスクがある。また、一次産品価格の上昇による影響に留意する必要がある。」へと明らかにトーンダウンしているが、商品市況高騰への警戒感が新たに打ち出されている点は興味深い。
 地域別にみると、アメリカに関しては、前月1月の「失業率が高止まるなど下押し要因は依然としてあるものの、政策効果もあり、景気は緩やかに回復している。先行きについては、基調としては緩やかな回復が続くと見込まれる。ただし、信用収縮や高い失業率が継続すること等により、景気回復が停滞するリスクがある。」から、2011年2月には「失業率が高水準であるものの、景気は回復している。先行きについては、回復が続くと見込まれる。ただし、信用収縮や高い失業率が継続すること等により、景気が下振れするリスクがある。」へと、景気の現状と先行きともに判断は上方修正されるとともに、リスク要因に対する警戒感もややトーンダウンしている。中国に関しては、景気の現状について前月まであった「拡大テンポがやや緩やかになっている。」の文言が削除され、「景気は内需を中心に拡大している」へと判断は上方修正された。先行きについても、前月まであった「テンポは緩やかになるものの」の文言が削除され、「拡大傾向が続くと見込まれる。」へと判断は上方修正されている。今後のリスク要因についても、前月まであった「欧米向け輸出の動向」の文言が削除され、「ただし、不動産価格や物価の動向に留意する必要がある。」へとトーンダウンしている。その他アジア地域に関しては、景気の現状判断は前月同様「総じて景気は回復しているが、回復テンポがやや緩やかになっている。」とし、判断を据え置いている。先行きについては、前月まであった「テンポは緩やかになるものの」の文言が削除され、「回復傾向が続くと見込まれる。」へと判断は上方修正されている。今後のリスク要因についても、前月の「ただし、欧米等の景気が下振れした場合には、輸出の減少等により、景気回復が停滞するリスクがある。」から、2011年2月は「ただし、欧米向け輸出の動向や物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」へとトーンダウンしている。ヨーロッパ地域とインドに関しては、現状と先行きともに判断を据え置いている。月例経済報告に関する関係閣僚会議終了後の記者会見の中で、与謝野馨・経済財政担当相は、基調判断を2ヶ月連続して引き上げた要因として輸出や国内自動車販売の持ち直しを指摘した上で、景気の先行きについては「リスク要因が発生しなければ、今後は順調に、徐々にではあるが、回復軌道をたどると思っている」との見通しを示し、外需主導による踊り場脱却への期待感を表明している。ただし、中東情勢の不安定化や原油・穀物などの商品市況の高騰が日本経済にもたらす悪影響には引き続き警戒姿勢をみせるとともに、景気の足踏み状態脱却の判断の節目として、「実質・名目成長率がプラスになること、物価がゼロ以上のところで数カ月間とどまることが見られた段階」との見解も、併せて示されている。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。
 

本論文に関連する統計データ

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area