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(2009.12)
月例消費レポート 2009年12月号
デフレ進行で危機的状況へ。足引っ張る民主党政権の経済オンチ
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 景気の先行きに対する見方は、政府も含め、赤信号へと変わりつつある。
 2009年11月20日公表の2009年11月の月例経済報告によると、景気の現状については10月と同様、「景気は、持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」とし、基調判断は4ヶ月連続の据え置きとなった。景気の先行きについては、「当面、厳しい雇用情勢が続くとみられる」と10月から雇用の表現を変えるとともに、景気下押しリスク要因に新たに「デフレ」を加えるなど、踏み込んだ文言が出され、先行きに対する警戒感の強さを示す内容となった。
 個別項目では、設備投資、倒産件数、雇用情勢の3項目が上方修正された。設備投資は2009年10月の「減少している」から11月は「下げ止まりつつある」へと2ヶ月ぶりに上方修正されたが、内閣府では、稼働率が低く設備過剰感が依然として高水準にあることや企業収益も低水準であることなどから、「設備投資が上向いていくか、まだ目が放せない」としている。雇用情勢については、失業率の2ヶ月連続改善や雇用者数の3ヶ月連続増加など雇用関連指標全般の改善を受けて、2009年10月までの「悪化傾向が続いており、極めて厳しい状況」から11月には「依然として厳しい」へと2007年8月以来27ヶ月ぶりに上方修正されたが、内閣府では「引き続き楽観できない状況」とし、先行き厳しい見通しを崩していない。個人消費については、経済対策の効果もあり「持ち直しの動きが続いている」とし判断を据え置いてはいるが、内閣府では先行きについて「冬のボーナスの大幅減が予想されるなど、雇用・所得環境は引き続き厳しく予断を許さない」とみており、先行き警戒感を解いていない。海外経済については、前月同様、基調判断を据え置いている。地域別では、米国、中国、ヨーロッパについて判断を据え置いているが、その他アジア地域については2009年10月時点で入っていた「ただし、一部でこのところ生産の回復に足踏みがみられる。」が11月には外されており、判断は上方修正されている。
 今回の月例経済報告で特筆すべきは、菅直人副総理(経済財政担当相)の会見の中でも強調されていた、2006年6月以来3年5ヶ月ぶりの、政府による「デフレ宣言」である。内閣府では、日本経済が「緩やかなデフレ状況にある」と認定した根拠として、1]全国消費者物価指数が前月比で6ヶ月連続の下落、2]国内総生産(GDP)の名目成長率(7~9月期年率0.3%減)が実質成長率(4.8%増)を2期連続で下回った、3]日本経済全体の「GDPギャップ(需要と供給の差)」が年間40兆円程度の大幅マイナスに陥っている、の3点を挙げている。
 「景気を下押しするリスク」としてデフレを警戒する最大の理由は、「デフレの下で、消費者が価格の下落を期待して買い控えが広がると、企業は値下げ競争に走るとともに、コスト削減のために賃金・雇用を抑える行動に出るが、それが消費を冷え込ませて、更なる買い控えと値下げ競争、賃金・雇用の抑制へとつながり、より一層の景気悪化を招く」という、「デフレスパイラル」への懸念である。デフレスパイラルを作動させる契機ともなり、拍車をかける要因として無視できないのが、消費者と企業それぞれのマインドである。
 内閣府が2009年11月10日に発表した2009年10月の景気ウォッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断DIは前月比-2.2ポイントの40.9となり、2ヶ月ぶりの下落となった。現状判断DIの内訳を見ると、家計動向関連のDIは、エコ家電、エコカーなど政策効果による販売増が続いているものの、消費者の節約志向の高まりに加え、9月の大型連休での需要増の反動が旅行関連を中心にみられており、低下している。企業関連のDIは、受注や出荷が持ち直しつつあるものの、補正予算の執行見直しの余波で建設業界を中心に受注減と価格競争の激化がみられ、低下している。雇用関連のDIは、一部での求人の動きがみられることが好感され上昇している。景気の先行きに対する判断DIは前月比‐1.7ポイントの42.8となり、2ヶ月ぶりの下落となった。内閣府では、DIが現状、先行きともに全地域で低下したことを受けて、景気ウォッチャー調査の判断を「景気は、下げ止まってきたものの、このところ弱い動きもみられる」へと、2008年12月以来10ヶ月ぶりに下方修正された。同じく内閣府が2009年11月13日に公表した2009年10月の消費動向調査によると、消費者態度指数(一般世帯、原数値)は前月と同じ40.5となり、2009年1月から続いてきたマインドの改善にブレーキがかかった。個別指標を構成する「暮らし向き」、「収入の増え方」、「耐久消費財の買い時判断」の3指標は前月よりも上昇したが、「雇用環境」は9ヶ月ぶりの低下となった。1年後の物価に関する消費者の見通しも、「低下する」層の比率が増加するとともに「上昇する」層の比率が減少している。内閣府は、基調判断を「持ち直しの動きが続いている」から「持ち直しの動きが緩やかになっている」に変更、2007年11月以来1年11ヶ月ぶりの下方修正に踏み切っている。
 消費者側と企業側ともに、マインドの悪化の兆しが見え始めており、消費者の側でのデフレ期待も高まりつつある。一部統計数字で明るい材料が散見されるが、雇用と収入に関し先行き厳しい見通しが根強い中で、「デフレスパイラル」が現実味を帯びてくる危険水域に日本経済は近づきつつある。

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