ボトルネックは機能か価格か? |
踊り場迎えた「iPhone 3G」
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2008年7月11日、アップル社製のスマートフォン、「iPhone 3G(以下iPhone)」が世界22カ国で同時発売された。日本では、NTTドコモと最後まで競ったソフトバンクモバイル(以下ソフトバンク)がキャリアとなり、発売と同時に長い行列が報道されたものの、その勢いは長く続かず、「失速」もささやかれている。
今回のネット評判記では、当社インターネットモニターを対象に、iPhoneについての関心や購入意向をみていく。
今回の対象者のうち、個人で携帯電話を所有しているのは93.1%で、最もよく使っている携帯端末のキャリアは
である。
また、主使用端末の月額料金は
- 3,000円未満のライトユーザーが26.5%
- 3,000円以上5,000円未満のユーザーが33.7%
- 5,000円以上7,000円未満のユーザーが18.8%
- 7,000円以上1万円未満のユーザーが14.07%
- 1万円以上のベビーユーザーが5.1%
という分布になっている。
まず、iPhoneについての認知と魅力度をみてみると(図表2)、
- 「iPhoneを知っている」人は全体で71.7%
- 「知っている」人のうち、魅力を感じる人は45.8%
という結果で、発売後1ヶ月半の端末としては、一定レベルに達していると判断できる。
この魅力度(非常に魅力を感じる+まあ魅力を感じる)を携帯電話の月額料金別にみてみると、
- 月額料金3,000円未満では魅力を感じる人が37.0%なのに対し
- 月額料金7,000円~1万円未満で51.8%
- 〃 1万円以上で63.2%
と、使用料金が高くなるとともに魅力を感じる人が増える傾向がみられ、ヘビー層での関心が高いことがうかがえる。
次に、iPhoneに対する広告や実物接触経験をみてみる(図表3)。
- 全体では、トップが「テレビなどのマスコミ広告をみた」が75.8%
- 続いて、「テレビなどで番組をみた」が48.4%
とマスコミを通じた接触経験が高くなっており、特に大量の広告投下が認知につながっていることが推測できる。
さらに、携帯電話の月額料金が1万円以上のヘビー層についてみてみると、全体と比べて
- 「家族や友人などと話をした」
- 「ネットで記事や書き込みをみた」
など自分から情報を求める行動や、
- 「店頭で実物を見たり操作した」
- 「他の人のiPhoneを見たり操作した」
など実物接触を経験した比率が高いことが分かる。
では、実際のiPhone購入状況はどのようになっているのかをみてみると(図表4)、
- 認知者全体では購入者は1.5%
- 購入予定者は10.8%
にとどまっている。これを携帯電話の月額料金別にみてみると、
- 月額料金が3,000円未満のライト層では購入予定者は5.2%なのに対し、
- 1万円以上のヘビー層では購入予定者が28.9%
とライト層の5倍に達している。
iPhoneの情報を積極的に集めながら購入を検討しているのは、携帯電話のヘビー層に多いことがうかがえる。
次に、iPhoneの「買いたい理由」「買わない理由」をみてみよう。まず購入者と購入予定者に、iPhoneの魅力と思われる点を挙げてもらったところ(図表5)、
- タッチパネル 60.4%
- 先端技術が使われている 48.4%
- デザインが気に入った 46.2%
などが上位に挙げられており、タッチパネルやデザインなど外観の評価が高い反面、アップル社が訴求している「App Storeの豊富なアプリケーション」や「高速インターネット」などのスマートフォンとしての特徴的な機能の魅力はまだ浸透していないことがわかる。
一方、非購入者の「買わない理由」としては(図表6)、
- 興味がなかった 31.7%
- 契約時の料金が高い 27.2%
- 通信プランの料金が高い 25.7%
など、もともと「興味がなかった」人を除くと、価格が障壁となっていることがわかる。キャリアのソフトバンクは、8月利用分から最低月額料金を7,280円から2,990円に引き下げたが、一度形成された「高い」というイメージはぬぐい切れていない。
そのほかには「ワンセグ機能がない」「携帯メールが使えない」といった機能面での不満も散見される。
具体的にはどのような機能が望まれているのかをみてみると(図表7)、
- ワンセグ機能 35.9%
- 携帯メール 28.2%
- バッテリーの交換 26.7%
- 絵文字機能 25.5%
- 赤外線通信 25.3%
などが挙げられている。トップの「ワンセグ」も3割台だが、10位の「携帯電話向けサイトの閲覧」にも2割近い要望があることから、日本の携帯メーカーの製品では既に「標準装備」に近い位置づけでありながら、iPhone未搭載の機能へのニーズが分散して存在していることがわかる。
ここまで、iPhone購入には価格と機能の両面からの障壁が存在することをみてきたが、最後に「iPhoneを購入してもいいと思う条件」をみてみよう(図表8)。
非所有者全体では、
- 通信プランの月額料金が安くなったら 22.8%
- 携帯電話のアドレスが使えるようになったら 21.3%
- 契約時の料金が安くなったら 17.6%
- ワンセグ機能が搭載されたら 16.3%
など、価格と機能の両面から条件が挙げられているが、携帯電話の利用料金別にみると、
- 携帯電話のライト層では「通信プランの月額料金が安くなったら」が、
- ヘビー層では「入手可能になったら」がもっとも高いものの、
- 「携帯メール」「おサイフケータイ」「赤外線通信」「メモリーカード」などの機能が使えることを条件に挙げる人の比率が全体と比べて高い
という特徴がみられ、ライトユーザーは価格面で、ヘビーユーザーは機能面での購入障壁が感じられていることがわかる。
図表8.月額料金別iPhoneの購入条件の上位 |
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「ガラパゴス」とも評される特殊性をもった日本の携帯市場で、iPhoneが発売から短期間で認知率70%台、所有率1%を獲得したのは一定の成果といえるだろう。
しかし、今回の結果からみる限り、現段階ではiPhoneは、多彩で高機能な携帯端末ときめ細かい料金プランに慣れた国内ユーザーに、タッチパネルを含めたデザイン以上の魅力を感じてもらうことに成功したとは言い難い。
ソフトバンクはライトユーザーへ裾野を広げようと月額の最低料金を引き下げたにも関わらず、普及に弾みがついていない。
また、ヘビーユーザーにターゲットを絞って、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信などユーザーが便利に使いこなしている機能を追加で搭載しても、半年に一度モデルチェンジをする「普通の高機能携帯端末」との競争が待っている。
iPhoneは日本市場での成功に向けて早くも踊り場を迎えたといえるだろう。
(2008.09)
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【調査設計】
調査手法:インターネットリサーチ
調査期間:2008年8月27日~8月29日
調査対象者:当社インターネットモニター
15~69歳 全国の男女個人
有効回収サンプル数:1,032サンプル

サンプル構成
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