半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2002年04月15日

営業現場の科学
第7回 3:7の法則を活用した効果的営業活動
営業戦略チーム 舩木

 ものごとには法則というものがある。今回は営業対象、つまり得意先へのアプローチについての見直しを提案したい。統計の法則として、よく言われるのが「3:7の法則」というものである。この法則は一般に広く知られているものの活用されていることは意外に少ない。

 「3:7の法則」というのは、例えばこういうことだ。3割の得意先で売上の70%を占める、というように重点となる得意先でおおよその売上を占めるということだ。ところが現実は、この法則を無視しているケースが多い。




 エリア別営業担当制を採っている企業を例に、実際のデータで確認してみる。東京都には約900の商業集積がある。この商業集積地の売上の上位集中化傾向をみてみると、つぎのことが確認できる。実に3%の商業集積地で売上の45%を占め、30%の商業集積地で8割の売上を占める(図表参照)。この場合、3%の商業集積地に重点を定め、徹底した営業活動をすすめることが目標必達の近道となる。現在ではトップシェアを誇る某ビールメーカーが採用してきた営業戦略である。当たり前の地道な活動を徹底してきた成果である。

 こうした事実を捉え直した効率的な営業活動をすすめていく必要がある。小売業の出店ラッシュと店舗のスクラップ&ビルドがすすむなかで、集客力のある商圏が変動している。家電でいえば、秋葉原や日本橋の衰退であり、ビックカメラやヨドバシカメラが出店している都心商業集積への顧客集中である。これは典型的な例であるが、こうした現象が至るところで起きているはずだ。今一度、得意先の優先順位を見直す必要がある。我々は得意先を自社売上で判断しがちであるが、得意先の販売力という観点から、いわゆるABC分析をしてみる必要がある。そうしてみると、重点得意先の見方が変わるはずだ。重点得意先への徹底した集中営業が必要なのである。

 エリア別営業組織を採っている場合は、都市部への徹底した集中営業にチャンスがある。東京を中心に都心部の商業集積が元気である。こまめに現場を歩いていくと、思わぬ新規開拓先やこれまで軽視していた得意先への提案が必要なことがわかるはずだ。これを組織的に展開している企業が今、シェアアップを実現している。大手企業は過去のしがらみもあり、この重点化ができない。弱者の視点からの営業活動が意外と効果を発揮する。

 また有力な組織小売業本部を担当している場合でも、この法則を活用した営業活動が有効である。あるメーカーでは、有力組織小売業に対して、つぎのような提案営業を推進している。このメーカーは有力組織小売業に対して、半期ごとの販促カレンダーを提案し、販促実施状況に対して協力金を支払っているが、展開する店舗は有力店に絞っている。具体的に言うと、販促展開は上位30%の店に重点化し、協力金はその有力店にしか支払わない、もしくは有力店以外で実施しても協力金はわずかしか出さないというものだ。

 当たり前のことであるが、営業マンなりに重点得意先は設定している。しかし、それが変動しているという認識はあれど行動に移す例は少ない。やるべきことがたくさんあり、時間が足らないとぼやく営業マンが多いが得意先を見直すことで効率的かつ効果的な営業活動が実践できるはずだ。単純な統計の法則を今一度活用する必要がある。



おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

新着記事

2025.06.16

提言論文 なぜそのブランドを選ぶのか - 性格で読み解くブランド選好の心理

2025.06.13

成長市場を探せ カカオショックのなか、過去最高を更新したチョコレート市場(2025年)

2025.06.12

25年5月の「景気の現状判断」は15ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.06.11

25年4月の「家計収入」は前年から横ばいに、「可処分所得」は4ヶ月ぶりのプラス

2025.06.11

25年4月の「消費支出」は2ヶ月連続のプラスに

2025.06.10

25年4月の「現金給与総額」は40ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.06.09

企業活動分析 P&Gの24年6月期決算は、7期連続増収、2期連続増益も25年は逆風予想

2025.06.06

25年4月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも横ばいに

2025.06.05

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 異なる購買体験を提供するリアル書店とEC書店 衝動買いが満足度を最大20%アップ!

2025.06.04

25年5月の「乗用車販売台数」は5ヶ月連続のプラス

2025.06.03

25年4月の「新設住宅着工戸数」は3ヶ月ぶりのマイナスに

2025.06.03

消費からみた景気指標 25年3月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2025.06.02

寡占米市場の高い米価の行方 - 値下げ政策の賢愚

2位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

3位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

4位 2025.06.05

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 異なる購買体験を提供するリアル書店とEC書店 衝動買いが満足度を最大20%アップ!

5位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area