「月15時間」-この数字は、営業マンが提案書づくりに割けるひと月の時間である。売れない時代には提案営業が大切だ。しかし、肝心の提案書を書く時間が非常に限られている。
営業本部長は「提案! 提案!」、と口やかましくいうけれど、会議や移動やらで時間は過ぎていくばかり。「だったらその提案書を書く時間をもっとくれ!」というのが営業マンの本音だろう。実際に某消費財メーカーの営業本部のケースで試算してみた。1人の営業マンのひと月の稼働時間が1日10時間として20営業日で200h。そのうち会議で50h(5日)が割かれ、移動・休憩で45h、商談で60h、訪問活動準備や伝票整理・日報作成で30hが割かれ、残る提案書づくり時間はざっと見積もって15hというのが現実だ。
提案には当たり外れがある。成功する提案を増やすには、通る提案書を量産することにある。それはそれでもっともだが、「そんなことできるはずがない!」とお思いの読者は多いだろう。しかし、できるのである。今回提案させて頂くのは、通る提案書を量産する「ショットガン営業」のノウハウである。
ここにK君の事例を紹介しよう。K君はひとつの提案書をなんと15分でつくる。しかもそれが必ず通るというから驚きだ。驚きの秘密は、三つある。
ひとつは、提案書の雛形をうまく使っていることである。K君は提案の内容によって異なるいくつかの提案書の雛形を全てパソコンに保管している。「新製品導入商談用の雛形」「棚割提案用の雛形」「エンド提案用の雛形」等いくつかのフォルダに分けて整理し、商談テーマにあわせてさっとファイルを開いて必要な所だけを書き換えカスタマイズした提案書を作成している。
ふたつは、他人の成功事例をうまく使っていることである。K君は所属する営業所内はもちろんのこと、他の営業所の優秀な営業マンとのネットワークを広く持っている。昼食や飲み会の場、電話・メールを使ってそうした人から成功した提案の話を聞いて、後日「この前おうかがいしたあの提案、ぜひ参考にさせて頂きたいのでファイル貸してくれませんか」と、お願いするのである。
三つは、悩んだら即相談していることである。K君は20分悩んだら上司に相談することにしている。上司に相談することで、K君が知らなかった他の成功事例や参考にできる提案書のフォーム等に出会えることも少なくない。
K君はこれらのノウハウを通して、現在成約率トップを独走している。とはいえ、「こういったことをやるには、会社がしっかりとしたデータベースをつくることが必要だ」という声も少なくないだろう。しかしデータベースがなくてもできることはある。まずは社内に眠っている様々な過去の提案書、成功した事例等を参考にしてみることから始めたらどうだろうか。
提案書づくりに割ける時間は限られている。「時間をくれ!」という前に限られた時間でいかに、通る提案書をたくさんつくるかを考えることが、一流の営業マンへの第一歩である。四の五の言わずに前向きにK君の活動を参考にしてみて欲しい。
おすすめ新着記事
消費者調査データ 茶飲料(2024年9月版) 抜群の強さ「お~いお茶」、大手3ブランドが熾烈な2位争い
2年連続のプラスとなった茶飲料市場の調査結果をみると、トップブランドの「お~いお茶」が全項目で首位、大手飲料メーカーの緑茶ブランド3点が熾烈な2位争いを繰り広げている。一方、再購入意向のランキングでは、麦茶ブランドが上位に入った。
成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから回復、3年連続プラスのゼリー飲料(2024年)
ゼリー飲料が伸びている。2020年はコロナ禍で前年の三分の二ほどまで落ち込んだものの、翌21年は早くもプラスとなり回復の動きをみせ、3年連続でプラスとなった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 急伸するPB化 高まるPB品質評価とNBの割高感
近年、食品NB(ナショナルブランド)が相次いで値上げしているなかで、PBの位置づけが大きく変わっている。PBの購入状況やPBの選択にどのような変化が起こっているのかの調査をまとめた。