98年7月22日に食品卸売業のシートゥーネットワークは店頭公開を果たした。99年3月期決算では、売上274億6,800万円(前年比23%増)、経常利益12億4,300万円(対前年比62%増)である。売上高経常利益率は4.5%であり、同じ加工食品卸売業の最大手である菱食の0.9%と比べても、シートゥーネットワークの経営効率の良さが分かる。
シートゥーネットワークは、千代田区神田須田町に本社を置き、加工食品を中心とした卸売業と小売業および商業施設の開発運営を展開する。売上高構成比は小売業部門で51%を占める。資本金は3億5,000万円、正社員数は112人の中小企業である。
シートゥーネットワークの前身は枡新商店である。枡新は、昭和22年に創業した築地の農産乾物や水産加工品を扱う市場卸であった。シートゥーネットワークの代表取締役である稲井田氏は創業者の2代目であり、1976年に枡新商店に入社した。そこで、経理と財務の経験を積んだ。この時期に、徹底的に財務分析から発想するシートゥーネットワークの強さが醸成された。
■シートゥーネットワークの概要
|
創業からこの時期までに枡新はキャッシュ&キャリー(以下、C&C)の展開を開始した(1974年)。C&Cとは現金決済商品持ち帰り方式卸売りのことである。通常の卸売業はメーカーから商品を集め、小売店に配送する。C&Cはメーカーの商品を店舗(倉庫型のローコストの店舗)に集め、中小小売店がそこに買いに来て、通常の小売店と同様に現金で精算し、購入商品を自分で持ち帰るものである。現金決済による債権管理コスト、倉庫型店舗による店舗運営コスト、持ち帰りシステムによる物流コストの削減を図ったものである。
1983年には大手CVSを脱退した25店から小分け配送と本部機能代行の依頼があり受託した。現在、394店の本部代行機能を行っている。当初50億円だった枡新商店の売上高は80億円にまで拡大した。
(1)新社長就任
1985年、稲井田氏が社長に就任した。稲井田氏は、売上高100億円、経常利益率1%を達成することを宣言し、利益が出ない構造の改革を行った。問題点は大きく2つあった。ひとつは、配送センターに過剰な在庫を抱えていたことである。仕入れ担当がメーカーからの押し込みを受け入れた結果である。ふたつめは仕入れ問題である。仕入れ担当とメーカーとの人的関係により、月末納品が多く、支払いサイトが不明確な構造であった。
過剰在庫を整理、メーカーとの関係の見直しを行うために、次の四つのことを実行した。
- 配送センターの廃止
- メーカーとの交際の禁止(接待を受けない)
- メーカーからの贈り物を拒否
- サンプルの試食をやめた
その結果、経常利益を1,000万円UPさせた。
(2)98人の一斉退社
1986年、仕入れ部長が退社した。その理由は、一連の改革によって、メーカーとの曖昧な関係を築いていた仕入部長が会社に居づらくなったためである。仕入れ部長の退社は他に波及し、100人の社員のうち98人が退社することなった。先代からの社員にとっては、2代目のやり方に疑問を持っていたのであろう。たった3人から再スタートを余儀なくされた。
業界の業績と戦略を比較分析する
おすすめ新着記事
成長市場を探せ コロナ特需の反動乗り越え成長するパスタソース(2024年)
コロナ特需から3年連続で縮小するレトルト市場にあって、パスタソースは2年連続の成長となった。「あえる・かける」だけで一品となるレトルトパスタソースの簡便性は、時短ニーズにマッチするものとして成長が期待されている。
消費者調査データ 紅茶飲料(2024年10月版) 首位「午後の紅茶」、「紅茶花伝」に水をあける
2023年、数量金額ともにプラスとなった紅茶飲料。調査結果を見ると、キリンの「午後の紅茶」が再購入意向以外の5項目で首位を獲得した。認知率は9割、購入経験も5割を超え、再購入意向では2位以下に10ポイント余の差をつけ、リーディングブランドらしい強さをみせた。
消費者調査データ ミネラルウォーター(2024年9月版) 全項目首位「サントリー 天然水」、リピート意向の高いPB
2023年、2年連続で2桁増を達成したミネラルウォーターについての調査結果をみると、全項目で5ポイント以上の差をつけて「サントリー天然水」が首位に。2位は「い・ろ・は・す天然水」。再購入意向ではベスト10内に5ブランドのPBという結果となった。