97年度ソニーは売上高、営業利益ともに二桁台の伸長を果たし、過去最高の実績を上げた。
97年度実績 前年比 ・売上高 24,064億円 110.9% ・営業利益 1,013億円 123.8% *単独決算
ソニーの「バイオ」は初め「ミニタワー」と呼ばれるデスクトップ型として米国で先行発売された(96年9月)。翌97年7月には日本でデスクトップ型、A4ノート型が発売され、「バイオノート505」(以下505)は97年11月に発売された。
ソニーでは販売実績を一切公表していないが、
- 97年12月、1機種当たり販売台数が過去最高を記録。7%の数量シェアを獲得。
(亜土電子工業T・ZOME事業本部長 日経ビジネス98.3.9) - 98年4-6月期、3電気街(東京:秋葉原、大阪:日本橋、名古屋:大須)において10%の数量シェアを獲得。(マルチメディア総合研究所98.8.24)
など好調さが伺える。
その仕様は、
- 重さ1.35kg
- 厚さ23.9mm(当時B5型で世界最薄)
- 「マグネシウム合金」と「紫色」の筐体の採用
- 静止画管理・検索ソフトの内蔵
というもので、当時「黒」を基調にスペック重視の製品展開(クロック周波数やハードディスク容量の競争)が主流だったノートパソコン市場に「デザイン」と「実用性」のバランスによる新たな選択軸を提示し、パソコン初心者、女性など新たなユーザーを獲得した。
ソニーのパソコンはこれが初めてではない。かつて「SMCシリーズ」、「MSXシリーズ」(ゲームに特化したMSX規格対応パソコン)による参入を図ったものの、89年、91年にそれぞれ撤退し、家庭用パソコン事業では失敗してきた。
にもかかわわらず、ソニーはなぜパソコンに拘ったのか。バイオの開発にデザイナーとして企画当初から参加し、基本コンセプトなどの立案に関与した後藤主席は次のように答えている。
「96年4月、出井さんが『デジタルドリームキッズ』のコンセプトを掲げて、IT(インフォメーションテクノロジー)カンパニーをつくった。さしあたって基幹となるパソコンを早期に開発しなければならない、ということになり、どうせやるなら将来的には理想的なパソコンをつくろうという話になった。」
「このころから既に『既存AVハードをつなぐ有機体』としてのソニー版パソコンの基本的な考え方は共有されていた。」
出井社長の強い思い入れがあったことが伺える。
業界の業績と戦略を比較分析する
おすすめ新着記事
消費者調査データ 紅茶飲料(2024年10月版) 首位「午後の紅茶」、「紅茶花伝」に水をあける
2023年、数量金額ともにプラスとなった紅茶飲料。調査結果を見ると、キリンの「午後の紅茶」が再購入意向以外の5項目で首位を獲得した。認知率は9割、購入経験も5割を超え、再購入意向では2位以下に10ポイント余の差をつけ、リーディングブランドらしい強さをみせた。
消費者調査データ ミネラルウォーター(2024年9月版) 全項目首位「サントリー 天然水」、リピート意向の高いPB
2023年、2年連続で2桁増を達成したミネラルウォーターについての調査結果をみると、全項目で5ポイント以上の差をつけて「サントリー天然水」が首位に。2位は「い・ろ・は・す天然水」。再購入意向ではベスト10内に5ブランドのPBという結果となった。
成長市場を探せ V字回復で2年連続過去最高更新の炭酸飲料(2024年)
炭酸飲料が伸びている。2020年はコロナ禍で前年割れとなったが、翌21年にはコロナ前の水準に迫り、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。