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公開日:1999年01月01日

シリーズ「崖っぷちからの復活」第1回
シティバンク
-シティバンクのサバイバルマーケティング
戦略分析チーム 合田

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 1999年1~3月は、GDPが6四半期ぶりにプラス成長を記録し、経済に明るさがみえてきたともいわれています。

 しかし1999年3月決算では多くの企業が減収減益を記録していることもまた事実です。

 このような状況をふまえ、当社では危機からの再生を果たした企業の戦略ケースを「崖っぷちからの復活」として3回連続で掲載します。

 第1回は巨額の不良債権を抱え、倒産の危機に瀕しながらも、「コアビジネスへの集中」「コアターゲットの再定義とリアルなアプローチの設計」「ライフステージMD」「優良顧客の優遇」「機動的な対応」などで見事な復活を果たしたシティバンクの事例を前後編で取り上げます。


1.資産・収益ナンバーワン

 1998年秋、シティコープとトラベラーズブループが合併した。シティコープは全世界にリテール(個人金融)網を持つシティバンクの持ち株会社。トラベラーズは証券会社ソロモン・スミス・バーニーを傘下に持つ総合金融サービス会社である。これにより総資産約94兆円、顧客数1億人という、世界の最大の金融機関が生まれた。その収益力と資本力をみると、97年の純利益額が8,700億円。日本でトップの東京三菱の21倍である。株主資本利益率(ROE)は18.1%で、全邦銀の▲3.4%を大きく上回っている。


図表1
図表

図表2 純利益の推移にみるシティバンクの転落と復活
図表

 シティバンク単体でみると、総資産は他行に比べて少ないが、純利益額は世界でもトップクラスである。意外にもこれだけの収益力を誇るシティバンクも1990年前後には倒産寸前の状態に追い込まれていた。当時市場では「危ない」「つぶれる」と噂されていたが、大方の予想を覆し、たった2年で経営を立て直した。


 この劇的な復活はどのようにして生まれたのか。シティバンクの躍進と転落、そして復活の歴史をたどってみる。


2.シティバンクの躍進と転落

 シティバンクは1812年、インターナショナル・バンキング・コーポレーションとして創業され、1962年ファースト・ナショナル・シティ・バンクに社名変更し、1976年に現在の名前になった。1970年代、シティバンクは総資産で全米第2位になり(第1位はバンカメリカ)、発展途上国への融資や不動産投資、さらにはM&Aの積極支援など、積極的な投資によって規模を拡大し、1980年ついに総資産で全米トップにのぼりつめた。

 ところが、その直後から転落と苦難の歴史が始まった。回収不可能な融資が増大し、シティバンクは全米最大の不良債権を抱える会社へと転落した。日本の銀行がバブル期に、土地を担保にむやみな貸付を行い、バブル崩壊を機に不良債権化して経営危機に陥ったのと同じことがシティバンクにも起こったのである。


1) エマージング・マーケット融資の不良債権化

 第一の苦境は、エマージングマーケット(新興成長経済圏)への累積債務の増大であった。メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、エクアドル、ベネズエラなど発展途上国向けの融資総額は世界の民間銀行の中で最大の147億ドルに達していたが、1982年メキシコ経済の金融危機が明らかになると、80年代後半には発展途上国の債務不履行が現実のものとなった。

2) 不動産融資の不良債権化

 1980年代後半の米国は不動産ブームであった。不動産への融資は利ざやが大きい上に手数料収入も入るお得な商売である。どの銀行よりも積極的に不動産融資を行った結果1990年の融資総額は132億ドルに達していた。ところが不動産ブームはすぐに終焉を迎え、結果132億ドルの12%が不良債権と化した。

3) LBO融資の不良債権化

 M&Aの活発化に伴い、ブームになったのが金融機関のLBO(レバレッジド・バイ・アウト)と呼ばれる融資であった。買収に必要な資金を相手企業の資産を担保に貸し付ける手法で1990年までに融資総額は全米一となる78億ドルに達していた。ところが担保対象となる企業の質の低下が顕著になると、M&Aに失敗する企業が出始め、多数の債務不履行が生まれた。

図表3 不良債権の増大
図表

4) 消費者向け融資の不良債権化

 1980年代の好景気を背景として、より強い企業は自ら株や社債を発行し、銀行の融資に頼らなくなった。シティバンクでは消費者向け金融業務に力を入れるようになり、82年に黒字化させた後、他業務の不振をカバーする事業にまで育成した。ところが1985年を境に米国で個人破産が急増し、返済期限を過ぎても回収されない融資の割合が91年4.8%に達した。

 1987年5月19日シティバンクは、「発展途上国向けの債務問題深刻化への対策として、1987年第二四半期(4-6月)において30億ドルの貸倒引当金を積み増す。このためシティバンクの第二四半期の決算は赤字となる」と発表した。つまり、焦げ付きが見越される融資に対処する金を備えるということであり、それまであり得ないとされてきた主権国家の倒産を「ある」と認める行為であった。

 しかし、発展途上国への融資問題への対処は根本的な解決にはならず、シティバンクのこうした不良債権の総額は92年には全米一の136億ドルに達した。不良債権比率が5%を超えると倒産の危機ありといわれるなか、それを上回る6%の数値を出したシティバンクは「危ない」と噂されるようになり、92年3月のROEは△8%、自己資本比率は7%で全米最低を記録した。金融監督当局の業務是正指導を受けることが決まり、シティバンクは自己資本を自社の裁量で使うことすらできない、まさに倒産寸前の危機に陥った。


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「サバイバルからの再出発-シェア重視からパフォーマンス重視への転換(1991~1994年)」

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