97年度の書店・文具専門店の売上高は対前年比0.7減となった。(日経流通新聞1998年7月9日)雑誌、書籍の販売額は戦後初のマイナス成長であった。経常利益は対前年比41.2%減となっている。
売上減少の要因は、活字離れだけでなく、阪急電鉄、東日本キヨスク、安楽亭(外食チェーン)など異業種からの新規参入なども要因としてあげられる。さらに、書店業界は大型店化してきている。売場面積は対前年比15%と増加している。この増床傾向に伴うコスト増が経常利益を圧迫している。
こうした書店業界において、売上増加もしくは大きな売上高を達成しようとしているところが存在する。ブックファースト渋谷店とジュンク堂書店、ブックデポ書楽である。この三つのケースから大型書店の生き残りの方向を考えてみたい。
JR渋谷駅の近くにブックファースト渋谷店がある。ここは、阪急グループの直営書店チェーンである。新規参入である。渋谷店は1998年6月11日にブックファーストの6店目としてオープンした。ブックファーストの旗艦店としての位置づけである。売場面積は3,050m2、売上高は初年度18億円を達成する予定である。
営業時間は、渋谷という土地柄を意識して午前10時~午後9時までとなっている。将来的には午後10時までにする予定である。
品揃えの特徴は、豊富な品揃えの中で特定カテゴリーに注力した展開を行っている点である。蔵書は現在60万冊である。昨年12月の来店客アンケート調査の結果、専門書とコミックの品揃えを強化させ、55万冊から60万冊に増やした。渋谷で最も多い蔵書を抱える。その中で、店内に入ったところにある雑誌売場の品揃えに注力している。世界の雑誌を網羅しようとする方針のもと、国内誌だけでなく、欧米諸国の雑誌も豊富に陳列している。さらに、普通では手に入らないバックナンバーや企業のPR誌も扱っている。ここをTOKYO Magazine Centerと名付けている。通常、マグネットカテゴリーをつくり、そこの品揃えを強化することで、店の独自性を強調することが行われる。渋谷店の展開はこれを意識したものである。
売場づくりはアメニティー型を追求している。売場づくりは何を重視するかによって大きくふたつに分類することができる。素敵なシーンを演出し楽しさを提供するのか、飾り気のない倉庫イメージの店舗でコストの合理性を追求するのか。前者がアメニティー型売場づくりであり、後者がディスカウント型売場づくりである。
渋谷店における売場づくりのポイントは大きく四つある。ひとつは、分野別の売場演出である。大熊店長は次のように述べている。
「そのジャンルにふさわしい雰囲気づくりを心がけ、床タイルの色調やBGMを少しずつ変えている。例えば、1階のTOKYO Magazine Centerは待ち合わせ場所でもあり、壁面にレイアウトされた雑誌の印象を強めたいと考え水銀灯系の強い照明を使っているし、2階の文庫、新書、ノンフィクションなどの売り場は色と照明で書斎のようなたたずまいを演出」(日経流通新聞 1999年4月6日)
ふたつめは、陳列方法の工夫である。平台に置くだけでなく、シャッターパネルを使い、表紙を見せるようにしている。表紙の美しさを伝え、購買意欲の喚起を狙ったものであると思われる。先の書楽での展開と同じ狙いである。
三つめは、広い通路を確保していることである。通常1.6m、狭いところでも1.2mを維持している。ここにも、アメニティー型の売場づくりの意図が読みとれる。
四つめは、渋谷店の店内にある検索端末機である。これはBook NAVIと呼ばれている。これはお客様が自由に検察ができるようするためのシステムである。
お客様にいかに快適な空間を提供できるのか、それを目指した売場づくりとシステムである。
業界の業績と戦略を比較分析する
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