半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:1999年01月01日

大型書店の生き残り
-アミューズメント型売場への転換とそれを支える利益創造のオペレーション
大澤 博一

全文の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインして全文をご利用ください。

1.はじめに

 97年度の書店・文具専門店の売上高は対前年比0.7減となった。(日経流通新聞1998年7月9日)雑誌、書籍の販売額は戦後初のマイナス成長であった。経常利益は対前年比41.2%減となっている。

 売上減少の要因は、活字離れだけでなく、阪急電鉄、東日本キヨスク、安楽亭(外食チェーン)など異業種からの新規参入なども要因としてあげられる。さらに、書店業界は大型店化してきている。売場面積は対前年比15%と増加している。この増床傾向に伴うコスト増が経常利益を圧迫している。

 こうした書店業界において、売上増加もしくは大きな売上高を達成しようとしているところが存在する。ブックファースト渋谷店とジュンク堂書店、ブックデポ書楽である。この三つのケースから大型書店の生き残りの方向を考えてみたい。


2.メインカテゴリーづくりとアメニティー型店舗を志向するブックファースト渋谷店

 JR渋谷駅の近くにブックファースト渋谷店がある。ここは、阪急グループの直営書店チェーンである。新規参入である。渋谷店は1998年6月11日にブックファーストの6店目としてオープンした。ブックファーストの旗艦店としての位置づけである。売場面積は3,050m2、売上高は初年度18億円を達成する予定である。

 営業時間は、渋谷という土地柄を意識して午前10時~午後9時までとなっている。将来的には午後10時までにする予定である。

 品揃えの特徴は、豊富な品揃えの中で特定カテゴリーに注力した展開を行っている点である。蔵書は現在60万冊である。昨年12月の来店客アンケート調査の結果、専門書とコミックの品揃えを強化させ、55万冊から60万冊に増やした。渋谷で最も多い蔵書を抱える。その中で、店内に入ったところにある雑誌売場の品揃えに注力している。世界の雑誌を網羅しようとする方針のもと、国内誌だけでなく、欧米諸国の雑誌も豊富に陳列している。さらに、普通では手に入らないバックナンバーや企業のPR誌も扱っている。ここをTOKYO Magazine Centerと名付けている。通常、マグネットカテゴリーをつくり、そこの品揃えを強化することで、店の独自性を強調することが行われる。渋谷店の展開はこれを意識したものである。

 売場づくりはアメニティー型を追求している。売場づくりは何を重視するかによって大きくふたつに分類することができる。素敵なシーンを演出し楽しさを提供するのか、飾り気のない倉庫イメージの店舗でコストの合理性を追求するのか。前者がアメニティー型売場づくりであり、後者がディスカウント型売場づくりである。

 渋谷店における売場づくりのポイントは大きく四つある。ひとつは、分野別の売場演出である。大熊店長は次のように述べている。

「そのジャンルにふさわしい雰囲気づくりを心がけ、床タイルの色調やBGMを少しずつ変えている。例えば、1階のTOKYO Magazine Centerは待ち合わせ場所でもあり、壁面にレイアウトされた雑誌の印象を強めたいと考え水銀灯系の強い照明を使っているし、2階の文庫、新書、ノンフィクションなどの売り場は色と照明で書斎のようなたたずまいを演出」
(日経流通新聞 1999年4月6日)

 ふたつめは、陳列方法の工夫である。平台に置くだけでなく、シャッターパネルを使い、表紙を見せるようにしている。表紙の美しさを伝え、購買意欲の喚起を狙ったものであると思われる。先の書楽での展開と同じ狙いである。

 三つめは、広い通路を確保していることである。通常1.6m、狭いところでも1.2mを維持している。ここにも、アメニティー型の売場づくりの意図が読みとれる。

 四つめは、渋谷店の店内にある検索端末機である。これはBook NAVIと呼ばれている。これはお客様が自由に検察ができるようするためのシステムである。

 お客様にいかに快適な空間を提供できるのか、それを目指した売場づくりとシステムである。


続きを読む
「固定客づくりとローコスト化をすすめるジュンク堂書店」

続きを読むには有料の会員登録が必要です。


業界の業績と戦略を比較分析する


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.07.16

25年5月の「現金給与総額」は41ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.07.15

25年5月の「消費支出」は3ヶ月連続のプラスに

2025.07.14

企業活動分析 キユーピー株式会社 24年11月期は海外好調、価格改定浸透で増収、過去最高益に

2025.07.11

消費者調査データ 熱中症対策飲料・スポーツドリンク(2025年7月版) 首位は「アクエリアス」、ぴたりと追走する「ポカリスエット」

2025.07.10

25年5月の「家計収入」、「可処分所得」はともにプラスに

2025.07.09

トランプ関税25%は十分乗り切れるが、とばっちりの農業には手厚い支援を

2025.07.09

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 3人に1人がプレミアム歯磨き粉を選ぶ時代 美容・健康・機能重視の志向が市場を変える

2025.07.08

25年5月は「有効求人倍率」は悪化、「完全失業率」は横ばいに

2025.07.07

企業活動分析 カゴメ株式会社 24年12月期は価格改定と需要喚起奏功で利益過去最高更新

2025.07.04

消費からみた景気指標 25年4月は8項目が改善

2025.07.03

月例消費レポート 2025年6月号 消費は回復の動きを持続-選挙後も残る政治リスクに消費は振り回され続けるおそれも

2025.07.02

米価格の歪さ、都議選自民大敗北させた第2世論、そして、世界を不確実性に引き込むトリックスター大統領の性格

週間アクセスランキング

1位 2025.07.09

トランプ関税25%は十分乗り切れるが、とばっちりの農業には手厚い支援を

2位 2025.07.09

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 3人に1人がプレミアム歯磨き粉を選ぶ時代 美容・健康・機能重視の志向が市場を変える

3位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

4位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

5位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area