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消費経済レビュー Vol.26
Economic Outlook for Japan
-消費復調への条件は整いつつある

 実質GDP成長率は3期ぶりにプラス成長に復帰したが、プラス幅は小幅に止まっている。輸出の堅調さと民間最終消費支出の回復ぶりがプラス成長への復帰に寄与するが、民間企業設備投資や民間住宅投資の不振と在庫調整の進展が、成長率の足を引っ張っている。経済全体で積み上がった過剰在庫の処理に向けて、企業側での在庫調整・生産調整の動きが本格化する可能性が高い。
 消費支出は、消費税増税後の反動減からの復活が何度か試みられるも、一歩手前で力尽きている。小売販売も2014年度半ば頃を境に反転下落し、回復のプロセスが一旦腰折れとなってはいる。ただ他方で、消費税増税後も、雇用と収入は回復傾向にあり、物価上昇の動きも落ち着きをみせつつある。低迷が続いた消費マインドにも、再び回復の動きがみられる。消費にとっての追い風材料も徐々に揃いつつある。
 日本経済に関するシンクタンク各機関のシナリオを総合すると、2015年度は、各機関で見方が分かれ、有力なシナリオが固まってはいない。2016年度は、輸出と設備投資の不振により、日本の景気は低迷・失速する可能性が高いとの見方が優勢だ。
 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しは悪化方向に転じている。収入状況や収入見通しは、変化の方向が定まってはいない。カテゴリーレベルでは支出抑制傾向が続きそうだが、支出意欲には今のところ大きな変化はみられない。
 2015年の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、2017年4月からの第2回目の消費増税の実施は確定した。プライマリーバランスの改善を意識した予算編成で、歳出は抑制傾向になる。日銀に対してはマーケットから追加緩和策への期待感は強いが、日銀自身はしばし様子見の姿勢だ。在庫調整と生産調整は、足許の景気のもたつきによりスロー気味であり、若干長引きそうである。物価上昇率は低インフレ状況が当面は続くが、インフレ目標の2%には届かず、上昇率自体も徐々に低下しつつある。海外景気は緩慢ながらも回復傾向を保ち、日本国内での観光需要も好調なことから、輸出をはじめとする外需は今後も堅調な推移が期待される。不確定要因について弊社の見解を示すと、設備投資については、大企業を中心に、製造業主導で、堅調な回復が続くと期待される。ただし、中堅企業や中小企業の非製造業で投資回復の足を引っ張る可能性には、若干注意が必要だ。雇用・収入環境のうち、雇用環境は引き続き堅調さを保つ。収入環境も、企業業績の改善などを後押しに改善の動きは続くが、業種間での格差は残る。個人消費については、支出意欲は足許で若干低迷気味である。ただ、出遅れが目立っていた消費マインドにも足許で回復の気配がみられる。消費をとりまく環境条件は徐々に整いつつあるが、消費の腰は重く、変化の方向感が定まらない状況は暫く続きそうだ。
 日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、設備投資は堅調に推移し、雇用・収入環境は良好さを保つものの、個人消費は回復にもたつき暫し鈍化・低迷する「投資堅調消費低迷シナリオ」を採用したい。次善のシナリオとして、雇用・収入環境の良好さを背景に、設備投資も個人消費も堅調な推移をみせていく「内需拡大・景気本格回復シナリオ」と、雇用・収入環境の良好さを保つものの、設備投資と個人消費は鈍化・低迷していく「内需低迷・景気踊り場シナリオ」のふたつを挙げておきたい。


(2015.04)


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