消費経済レビュー Vol.23 |
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Economic Outlook for Japan -消費税増税に挑む景気と消費 | |
実質GDPは4四半期連続のプラス成長となり景気の回復は続いているが、その勢いはスローダウン気味だ。民間最終消費支出の健闘ぶりが光るが、民間企業設備投資と輸出はプラスながらも回復力に欠けており、需要の三本柱の回復の足並みは揃っていない。在庫・生産調整は終了して新たな循環に入り、生産拡大による再成長の局面を迎えつつあるが、2014年4月からの消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減が撹乱要因として残る。 消費支出は実質ベースでマイナスが続き、特に基礎的支出での低迷が目立つ。回復傾向にあった商業販売も、足許では回復の動きが一旦小休止している。他方で、雇用環境と収入環境は回復傾向を保っている。消費マインドにも下げ止まりの気配が見られる。安倍政権への支持率も2014年に入って回復し落ち着きをみせていることから、この先、消費マインドの回復も期待される。消費税増税をにらみ、消費の盤石さが試されるところだ。 日本経済に関するシンクタンク各機関のシナリオを総合すると、2014年度は外需低迷と消費不振の中で設備投資頼みの回復が続き、悲観・楽観の双方で有力シナリオが散在する状況にある。2015年度は外需と設備投資が低迷し個人消費頼みの回復となるが、有力シナリオを欠き、コンセンサスが形成されているとは言い難い状況だ。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しは再び改善の動きをみせている。他方、収入状況と収入見通しのいずれも、足許では改善の動きが一旦小休止している。支出状況は実態面と意向面の双方で現状維持が大勢を占め、特筆すべき変化はみられない。 2014年の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、消費税増税は2014年4月から2段階で実施され、第2回目の増税の判断は12月を目途に定まる。6月には「新たな成長戦略」として踏み込んだ施策が盛り込まれる。増税後のマイナス・インパクトへの備えは政府・日銀ともに怠りはない。在庫調整と生産調整は在庫積み増し局面へと入り、更なる生産拡大にも弾みがつく。物価上昇率はインフレ目標の2%には届かず、低インフレで推移する。輸出は海外景気の回復・安定を背景に回復基調を保つ。不確定要因である「設備投資」「雇用・収入環境」「個人消費」について弊社の見解を示すと、設備投資は、長期金利の低位安定の下で、非製造業から製造業へと回復の裾野が広がる。雇用環境は改善の動きが持続する。企業業績の改善基調の下、収入の伸びはプラスを保つとともに、ボーナス受給見通しの改善やベースアップの動きも相まって、収入環境改善の動きは定着する。消費税増税後の反動減は一部の大型耐久財(住宅・クルマ)では残るが、日常生活財では短期で終息する。輸出と設備投資の回復を支えに、消費増税のマイナス・インパクトは軽微で済み、景気の回復基調も保たれれば、2014年後半には消費も本格回復軌道へと復帰していくと目される。 日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、雇用・収入環境の良好さを背景に、設備投資も個人消費も堅調な推移をみせていく「内需拡大・景気本格回復シナリオ」を引き続き採用したい。次善のシナリオとしては、設備投資が回復して堅調な推移をみせるものの、雇用・収入環境は低迷し、個人消費も低迷する「消費低迷・投資頼みシナリオ」と、設備投資の低迷に雇用・収入環境の低迷が重なり、個人消費の低迷・不振がより一層深刻化する「内需失速・景気底割れシナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2014.03)
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