消費経済レビュー Vol.15 |
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Economic Outlook for Japan | |
日本経済は2009年第4四半期以降の1年間はプラス成長を保っているが、輸出の伸びが鈍化し民間企業設備投資も伸び悩む中で、民間最終消費支出が景気を支える頼みの綱となっている。 2010年に入り雇用・所得環境に明らかな改善が認められる中で、消費支出は堅調な推移をみせるとともに、販売サイドからも明るい材料が出ている。だが他方で、海外の景況感悪化や円急騰などを契機に2010年8月頃より顕在化した消費マインドの悪化に、未だ歯止めがかからない。エコカー補助金が終わるなど政策効果に陰りがみえ始めている中で、消費支出でも今後の反動減が懸念されている。在庫循環上、消費財で在庫積み上がり局面に入っている点も、今後の消費にとって気がかりな材料である。 日本経済に関するシンクタンク各機関のシナリオを総合すると、2010年度下期の外需や政策効果を中心として消費が下支えをして景気が回復していくシナリオから、2011年度は設備投資を中心に一部の外需の回復を得て景気回復を続けるシナリオへ移行する、というのが最も一般的な見方のようだ。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しはいずれも改善から悪化の方向に転じているが、収入の状況は実態と見通しともに改善傾向にある。支出の実態面では支出増加の傾向が鮮明であるが、今後の支出意向に関しては減退傾向が認められる。 2011年の日本経済の先行きを占うと、中国の景気はややスローダウンするも安定成長は続き、米国の景気も回復の足取りは重いが腰折れまでには至らないと目される。ただし輸出は円急騰の余波や海外景気の波乱要因等で伸びは鈍化し、スランプはしばらく続く。ユーロ圏など海外の景気動向には不安定要素がつきまとい、輸出は下ぶれリスクを抱えた状況が続くと目される。設備投資は今後堅調な回復が期待されるものの反発力に乏しく、景気の牽引役として力不足の感は否めない。政策効果については、エコカー補助金の終了後、自動車の販売は予想を超える反動減により販売は大幅に落ち込んでおり、当分はマイナス幅の広がりに歯止めがかかりそうにない様相だ。今後、家電エコポイントの終了に伴い、エコポイント対象商品を中心に家電製品販売でも反動減が現れることは避けがたく、大型耐久財の販売急落に拍車がかかることとなろう。物価は、2011年入った後にはデフレ脱却がみえてきそうな点は数少ない好材料だが、景気浮揚の材料には程遠い。 2011年の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、在庫と生産は調整局面に入り、雇用・収入環境も悪化、個人消費も低迷状況に陥る「消費底割れ・本格調整シナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、在庫と生産は調整局面入りを回避し、雇用・収入環境も改善が続くが、個人消費は低迷していく「一時的消費スランプシナリオ」と、在庫と生産は調整局面に入り、個人消費も低迷状況に陥るが、雇用・収入環境は改善傾向を保つ「消費低迷・調整進行シナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2011.01)
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