消費経済レビュー Vol.9 |
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I.Economic Outlook for Japan | |
プラス成長の流れが続いてきた日本経済は、2007年後半に入って成長率が鈍化したが、2008年第1四半期にはプラス成長に持ち直し、輸出、個人消費の成長率は堅調に維持している。ただし、設備投資については不安材料を抱えている。 設備投資の動向を見ると、2007年第4四半期はマイナスになり、産業別の設備投資をみても、製造業でもマイナスになっている。また、設備投資計画をみても、2008年度には多くの産業で2007年度より伸び率が下回る見込みである。 在庫循環については、投資財は積み上がり傾向が顕著であるが、消費財では在庫調整が早く進み、結果として鉱工業全体での在庫積み上がり局面入りをぎりぎりのところで回避している。 雇用・所得環境については、雇用は伸び率が横ばいである。ただ、所得の伸びは、現金給与総額、超過給与支払額ともに全体としてはプラスに転じており、好調さがうかがい知れる。 消費動向については、消費支出金額をみると根強い支出の底堅さがみられる。その一方で、消費マインドは大幅に悪化している。消費マインドの悪化が支出に影響を与えるかどうかが今後の景気を左右する要因にもなるため、注意深く見守る必要がある。 2008年度の日本経済に関するシンクタンク各社の想定シナリオを総合すると、消費にかげりがみえ、外需や投資についても鈍化するというのが主流である。こうした中、外需および設備投資主導型の安定成長シナリオをとる機関も根強く存在している。 弊社の独自調査によれば、景気の現状認識と見通し、並びに、雇用環境の変化認識と見通しは、いずれも悪化の方向への動きが認められる。ただし、収入の状況については、実態面、見通しともに、ほぼ横ばいもしくは改善の傾向が認められる。足もとの支出実態については良好といえるが、支出意向については若干悪化の傾向がある。また、物価上昇の影響についても、日常的支出や選択的支出に影響はあるものの、全体としては維持されている。総合的には概ね堅調に推移するものの、意向や見通しが悪いことがどのように実態に影響するかが、消費動向を左右することになるであろう。 以上の議論より、2008年度の日本経済の先行きを占うと、個人消費については現状の堅調さを保っていき、輸出は、米国のサブプライムローン問題の影響、円高のリスクは残っているが、中国をはじめとした諸外国との取引は好調で、全体としては維持されるというのが基本的な想定である。景気見通しや雇用環境の見通しといったマインドの悪化については、消費のブレーキとなる可能性は低い。また、設備投資は全体的に失速傾向が鮮明化する、というのが基本的な判断である。堅調さを保つ雇用環境や収入環境については引き続き現状維持、もしくは改善されるものとみる。 弊社としては、「消費頼み成長鈍化シナリオ」を2008年度の日本経済に関する基本シナリオとして採用する。代替的シナリオは、消費と設備投資という内需主導の安定成長が続く「投資主導型安定成長シナリオ」と、収入の伸びがプラスになり、それを受けた消費に支えられて成長が持続する「消費主導型成長持続シナリオ」のふたつを次善シナリオとして挙げておきたい。 (2008.06)
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