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消費経済レビュー
IV.選好の状況依存性: 実験心理学によるアプローチ

 本研究の目的は、消費者の商品選択における状況依存性を多様な商品カテゴリーで実証し、さらにその研究を実務に応用して消費行動分析への新しい視点の提供とリサーチ手法を開発することにある。ここでは特に、状況依存的な選択行動の典型として「文脈効果」に焦点をあてる。
 先行研究と本研究の目的を踏まえて、ここでは以下のような研究課題を設定した。

  • 実際の商品選択の場面においては、どの文脈効果が観察されるのか。
  • 商品カテゴリーによって、起こる文脈効果は異なるのか。
  • 消費者属性によって、文脈効果の影響は異なるのか。
  • どのような選択肢が、文脈効果を起こすのに最適なポジションであるか。

 今回の実験では対象者を数グループに分け、グループ毎に異なる選択肢を提示し、その反応をグループ間で比較することで仮説の検証を行った。その際、先行研究では選択肢の数は三つであることが多いのに対し、本研究ではより実際の商品選択に近づけるため、五つとした。対象商品カテゴリーは薄型テレビと栄養ドリンクである。実験結果を総括すると、以下の三つとなる。

  • 確認できた文脈効果は「魅力効果」のみであり、先行研究で実証されていた「妥協効果」の効果を確認することはできなかった。
  • 魅力効果の一部はパイロットスタディも含め、薄型テレビ、栄養ドリンク、ノートパソコン、日やけどめの4商品カテゴリー、計5回のすべての実験で確認された。
  • 薄型テレビの魅力効果のケースでは、デコイにより魅力を増す高価格-高品質の商品だけでなく、最も低価格-低品質な商品の選択率も上昇し、結果として選択の二極化が起こった。

 最後に、今回の実験結果についての考察を行った。考察の視点は三つある。ひとつ目は今回の実験結果の主な意味、それが示唆することについての考察である。ふたつ目はこの結果の要因となる、心理的背景の考察である。三つ目は当該研究分野の実務への応用可能性についての考察である。
 今回の実験結果が示唆することは「消費者の商品への選好順位は与えられた選択肢の集合によって変化する(情報環境によって選好順位は異なる)」ということである。つまり、各商品から得られる効用とその対価である価格が一定であったとしても、「効用/価格」のパフォーマンス評価とその比較に基づく商品の選好順位は一定ではないということを示している。
 今回の実験で改めて実証された「魅力効果」が起こる要因として、先行研究では主に三つの仮説が提示されている。具体的には「範囲頻度仮説(Huberら, 1982)」「支配価値仮説(Simonson, 1989)」「トレードオフ対比仮説(Simonson & Tversky, 1992)」である。
 最後に、本研究の課題と今後の方向性について、実務上の問題意識と理論的問題意識の2点から検討を行っている。
(2008.02)


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