消費経済レビュー |
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III.多重な商品情報ネットワークの調査と シミュレーション | ||
昨今、消費者間での情報交換の構造をはじめとして商品情報ネットワークの研究が注目されている。その背景には、ソーシャルネットワークの普及などにより、個人間の情報交換が活発化していると同時にそれがデータとして把握できるようになってきたことが挙げられる。またスモールワールドネットワークのシミュレーションの成功など理論的な研究が進んできたこともある。 こうしたなか、研究の方向性として、社会ネットワーク分析のように小規模な調査を主体にデータを分析していく方法、逆に大規模にコンピュータ上でシミュレーションを行って消費者間のネットワークを解明する方法などが盛んになっている。ただし、これらふたつの方向性はあまり接点がみられない。 本研究では、調査に基づいて商品ごとのネットワークに関係する特徴量を算出し、この特徴量をもとにしてネットワークをシミュレーションおよび分析することで、商品情報ネットワークの性質を把握することを目指した。 まず実際に調査を行った結果、商品ごとに四つのネットワークタイプに分類することができ、さらに商品情報ネットワークを再現することができた。 次に、ネットワークに対して広告効果についてのシミュレーションを行った。その結果、広告の投下方法により最終的な伝播率に差があり、また伝達範囲についても差があることがわかった。 最後に、あるネットワークが生成された原因を探るために、ネットワークの詳細な分析ができる方法を提案した。具体的にはノードやリンクの属性をより多く組み込んだ「異属性間ネットワーク」分析というノード間のネットワーク関係を調べる方法を構築した。結果として、伝播率が高い商品のネットワークでは、通常は行われていない属性間での情報交換がなされていることがわかった。 このように、調査とネットワークシミュレーションを組み合わせることで新たな知見を得ることができた。商品ごとにネットワークタイプの違うこと、広告投下を行った場合にネットワークでの情報伝播の仕方が異なること、最後にこうしたネットワークの背景に異なる属性間での情報交換があることを把握できた。こうした結果を利用することで、今後の広告や商品に関する情報戦略に応用が可能となるだろう。 (2008.02)
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