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消費経済レビュー
II.老後の生活設計と家計の資産蓄積行動の変化

 生き続ける限り誰もが通過しなければならない人生のステージ、それが老後である。老後の不安として人々が強く意識するのは、老後を生き抜くことそれ自体であり、老後の生活設計には年齢を問わず誰もが無関心ではいられない。老後の生活設計の背景となる環境条件は年代により大きく異なるとともに、それにより老後以前の生活設計までも異なってくる。
 老後に予定される支出のうち、ゆとりある老後を送るのに十分な生活費は月40万円前後。老後の資金難に敏感な30代では、想定する生活費水準はそれより上の年代に比べ明らかに低い。老後の特別な使途の合計額は、少なくとも1,700万円。老後の収入予定のうち、リタイア前の収入レベルは平均38万円、リタイア後の収入レベルは平均31万円。60代は労働収入予定額と年金受給予定額の高さに支えられ、リタイア前もリタイア後も高収入を維持できるが、30代は年金受給予定額が顕著に少なくなる見通しの上で資産収入予定額を高めに設定し、リタイア後の収入レベルの落ち込みを食い止めようとしている。
 60歳から85歳までにかかる支出のうち、生活費合計は1億1,802万円、老後の特別な使途合計は5,888万円、支出予定総額は1億7,690万円となる。60歳から85歳までに見込まれる収入のうち、退職金合計は1,651万円、労働収入予定額合計は1,898万円、資産収入予定額合計は4,479万円、年金受給予定額合計は4,030万円、収入予定総額は1億2,058万円となる。退職金合計と年金受給予定額合計を合わせても5,681万円にとどまり、これでは必要生活費すらまかなえない。収入予定総額では生活費合計をまかなうのがやっとであり、老後の特別な使途への手当ては不可能である。老後の特別な使途として少なくとも必要な1,700万円は、自己資産として最低限蓄積しなければ老後の生活は成り立たない。
 特に事態が深刻なのは30代である。30代では、支出予定総額は60代平均と大差ないが、収入予定総額が60代と比べると3,000万円近くも低い。30代では生活費合計は1億1,382万円であり、それより上の年代と比べ1,000万円近くも少ないが、収入予定総額1億301万円では生活費すらまかなえない。収支ギャップを埋めるのに、支出の抑制にも限界がある上に、資産収入を中心とした老後の収入増だけでは間に合わない。30代の場合、老後を迎える以前から資産運用での収入増を図り、資産の蓄積ペースを加速させる必要がある。
 家計における一番の貯蓄動機は、老後資金である。老後資金に関する目標貯蓄金額は平均3,295万円、最も多いのが30代で4,176万円である。老後資金の形成・運用手段として、30代、50代、60代では、リスク資産での運用により積極的である。50代と60代は、資産残高が多い上に、身近に迫る老後に向けて残された時間が少ない。株式などのリスク資産での運用は、ポートフォリオとして必要不可欠であるとともに、限られた時間内でより高いリターンを得る方法としても有効である。30代は、資産残高はまだ少なく、老後を迎えるまでの時間も十分残されている。老後資金の形成に向けて50代や60代よりも高い目標貯蓄残高をクリアするには、預貯金を中心とした安全資産の積み上げだけでは間に合わず、株式などのリスク資産での運用も考えざるを得ない。
 30代と50代の想定収入カーブを比べると、老後以前においても老後においても、30代の方が収入水準は低い上に、老後以前の時期における収入カーブの形状も30代の方がよりフラットである。更に、30代は50代に比べて目標貯蓄残高が高いことから、30代の老後以前における支出水準はより一層下方に抑制される。また、30代と50代の総資産残高の想定推移とを比べると、老後以前の段階では30代の想定推移の方が上方に位置しているが、退職金が上乗せされ老後の時期に入ると、50代の総資産残高の想定推移は30代よりも上方に位置づけられる形へと逆転する。想定資産残高のピーク値は、50代では目標貯蓄残高平均の3,781万円を超えるのに対し、30代では目標貯蓄残高平均の4,176万円には及ばない。85歳時点での想定資産残高を見ると、50代では老後の特別な使途として少なくとも必要とされる約1,700万円は十分確保できるのに対し、30代ではその確保すらおぼつかない。
 50代は現状の延長線上で老後は乗り切れるが、30代は現状の延長線上では老後は立ち行かない。30代に残された道は、老後以前の時期からの資産運用により資産蓄積のペースを高め、退職金予定額の面での不利をできる限りカバーし、目標貯蓄残高の達成と老後の特別な使途として最低限必要な金額の確保との両立を目指すことである。30代の場合、通期で年1.75%の利回りを確保できれば、60歳時点での総資産残高は4,400万円を超え、30代における目標貯蓄残高は十分にクリアできる。だが、60歳から85歳までの期間を通じて、現状の延長線上で進んだ場合の総資産残高の想定推移を上回るには、少なくとも年2.25%の運用利回りは確保する必要がある。年2.5%の運用利回りを実現できれば85歳時点での資産残高の見込み額は3,000万円超、年2.75%の運用利回りであれば、85歳時点での資産残高の見込み額は5,000万円超となり、老後の特別な使途のかなりの部分をカバーできる。
 老後を迎えるまでの残された期間の長短によらず、資産運用の巧拙によって老後の収支設計の自由度は大きく変わり、わずかな運用利回りの差が老後の収支設計が破綻するか否かの分かれ道となる。20代や30代のように、老後を迎えるまでの残された期間が長ければ長いほど、運用利回りのわずかな差により、最終的に達成できる資産残高は数千万円単位の大きな開きが生まれる。
 賃金の伸びもあまり期待できず、退職金も401kの導入により自力で作らなければならない。定年退職後に年金受給まで働くにしても働き口はままならず、見つかったとしてももらえる額は微々たるもの。年金もたいして当てにはならない。地道に貯蓄に励むだけでは、老後の生活に必要な額をまかないきれない。残された手段は、自らの努力で積み上げた資産にも同じく"働いてもらう"しかない。そのためには、ちょっとした運用利回りの差を生み出すに足るだけの資産運用の知恵と、そうした利回りの差を増幅させる時間さえあれば、十分事足りるのである。
(2008.02)


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