半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費経済レビュー
I.Economic Outlook for Japan

 プラス成長の流れが続いてきた日本経済は、2007年後半に入って成長率が鈍化したが、2007年第3四半期には再びプラス成長に持ち直している。「輸出」「設備投資」「個人消費」の三本柱のいずれにおいても、成長率は堅調に維持している。
 設備投資の動向を見ると、直近の2007年第3四半期ではマイナスであるものの、産業別で設備投資をみると、製造業はプラス成長を保っており堅調である。また、設備投資計画をみても、多くの産業で2006年度より伸び率を上回る見込みである。
 在庫循環については、直近の動きをみると、投資財においては、積み上がり傾向が顕著であるが、消費財での在庫調整が早く進み、結果として鉱工業全体での在庫積み上がり局面入りをぎりぎりのところで回避している。
 雇用・所得環境のうち、雇用については伸び率は横ばいが続いている。だが、所得の伸びについては、現金給与総額、超過給与支払額ともに全体としては伸び悩んでいる状況であるといえよう。
 消費動向については、消費支出金額をみると根強い支出がみられるものの、先行きについては不透明さがみられる。その一方で、消費マインドは、直近で大幅な下落傾向にある。消費マインドの悪化が支出に影響を与えるかどうかが今後の景気を左右する要因にもなるので、注意深く見守る必要がある。
 2008年度の日本経済に関するシンクタンク各社の想定シナリオを総合すると、消費にかげりが見えるものの、外需や投資に支えられて安定成長が続くというものが主流である。こうした中、外需および設備投資主導型の安定成長シナリオをとる機関が最も多くなっている。一方で、外需、投資、消費すべてにおいて悲観的な立場をとるシンクタンクも増えていることにも留意する必要がある。
 弊社独自調査によれば、景気の現状認識と見通し、並びに、雇用環境の変化認識と見通しはいずれも、悪化の方向への動きが認められる。収入の状況については、実態面はほぼ横ばいであり、見通しについては悪化の傾向が認められる。足許の支出実態については良好といえるが、支出意向については若干悪化の傾向がある。総合的には、概ね堅調に推移するものの、意向や見通しが悪いことがどのように実態に影響するかが消費動向を左右することになるであろう。
 以上の議論より、2008年度の日本経済の先行きを占うと、輸出は米国のサブプライムローン問題の影響や円高でのリスクが残ってはいるが、中国をはじめとしたアジア諸外国との取引は好調で、全体としては維持され、個人消費については現状の堅調さを保っていく、というのが基本的な想定である。景気見通しや雇用環境の見通しといったマインドの悪化はあるものの、これらが消費のブレーキとなる可能性は低い。設備投資は非製造業を中心に失速傾向が鮮明化する、というのが基本的な判断である。さらに、横ばいを続ける雇用環境や収入環境の改善が期待されるが、これについても現状維持されるものとみる。
 よって弊社としては、「消費頼み成長鈍化シナリオ」を2008年度の日本経済に関する基本シナリオとして採用したい。代替的シナリオとしては、設備投資が増加することで、消費と設備投資という内需主導の安定成長が続く「投資主導型安定成長シナリオ」と、収入の伸びがプラスになり、それを受けた消費に支えられて成長が持続する「消費主導型成長持続シナリオ」のふたつを次善シナリオとして挙げておきたい。
(2008.02)


消費経済レビューの本文をご覧になるには、プレミアム会員にご入会下さい。
消費経済レビューは、プレミアム会員限定コンテンツとなっています。
プレミアム会員は、当社メンバーシップサービスの全てのコンテンツに加えて、
「情報家電産業のリバイバル戦略 -エンド価値志向の多層化戦略-」ほか、
当社のオリジナル研究レポートのご利用が可能なプレミアムサービスです。
この機会に是非プレミアム会員へのご入会をご検討ください。

新着記事

2024.12.03

24年10月の「新設住宅着工戸数」は6ヶ月連続のマイナス

2024.12.02

企業活動分析 イオン株式会社 24年2月は、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新し増収増益

2024.12.02

企業活動分析 宝ホールディングス株式会社 24年3月期は、バイオ事業不調により減収減益

2024.12.02

企業活動分析 TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)  23年12月期は減収減益、事業構造の転換へ

2024.11.29

月例消費レポート 2024年11月号 消費は一旦足踏み状態となっている-政策転換を消費回復への新たな起爆剤に

2024.11.29

24年10月の「ファミリーレストラン売上高」は32ヶ月連続プラス

2024.11.29

24年10月の「ファーストフード売上高」は44ヶ月連続のプラスに

2024.11.28

消費者調査データ No.417 シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い

2024.11.28

消費からみた景気指標 24年9月は6項目が改善

2024.11.27

24年9月の「全国百貨店売上高」は32ヶ月ぶりのマイナス、残暑で季節商品が苦戦

2024.11.27

24年9月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2024.11.27

24年10月の「コンビニエンスストア売上高」は11ヶ月連続のプラスに

2024.11.26

24年9月の「広告売上高」は、5ヶ月連続のプラス

2024.11.25

企業活動分析 LIXILの24年3月期は海外の需要減の影響で減益へ

2024.11.25

企業活動分析 東京ガスの24年3月期は大幅な減収減益

 

2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

2024.11.22

MNEXT 「消費社会白書」で分析するアメリカ大統領選の接戦予想のはずれ

2024.11.22

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2024.11.21

24年9月の「商業動態統計調査」は6ヶ月連続のプラス

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area