消費経済レビュー |
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IV.ネットワークデータの分析手法と今後の展開 | ||
本稿では、近年注目を浴びている社会ネットワークについて、入手したデータからネットワークをどのように扱うかという、ネットワーク分析およびリンクマイニングの手法についてサーベイを行う。さらに、これらを踏まえ今後、どのような方向に研究が進むかを考察する。 リンクマイニングというのは、ネットワークに関連するデータから新しい知見を得るためにデータマイニング手法を応用したものであり、ネットワーク上のリンク予測や頻出するネットワークの抽出、ノードのランキングといった問題への解決法が提案されている。これらの最新の手法として、カーネル法を用いたものやアプリオリアルゴリズムなど既存のデータマイニング手法を用いたものが存在する。前者は、データの次元を高次元空間に写像することで非線形な判別や分類を可能とする手法であり、後者はアイテム同士の組み合わせ爆発を防ぎ、探索空間を小さくすることで高速に処理を行う手法であり、それぞれバイオインフォマティックスをはじめとした分野で徐々に成果を挙げている。 ただ、それぞれの手法に関しても、ネットワークの表現能力の問題、計算量の問題など数々の問題が存在している。そのため、実際に解きたい問題に応じて手法を変えていくことが必要である。例えば、人間関係においてひととひととの関係の種類を考慮して分析する場合と、単純に知り合いか否か、友人数が何人かだけを求める場合とでは目的も使用するデータの種類も異なる。 また、古くから人間関係の分析をはじめとする社会ネットワーク分析という分野が存在する。例えば、有名な概念として「中心性」というものがある。これはネットワーク全体であるノードがどれほど重要な役割を果たしているかをリンク数や遷移確率行列などを用いて計る指標である。これらの既存の方法は、「中心性」についてはノードのランキングというかたちでリンクマイニングへ取り込まれ、また「ブロックモデル」というネットワークを縮約する方法は、現在リンクマイニングへと取り込まれながら新たな発展を遂げている。 さて、ネットワークの分析を応用の面からみた場合、様々な関係性やノードの属性が存在する複雑なデータのなかからの特徴抽出が求められている。例えば、社会ネットワークにおいて友人関係や血縁など様々な種類が存在しており、これらが相互に作用して人へと影響を与えている。このようなネットワークに対してもリンクマイニングなどの新たな手法が活用できる。 以上を踏まえると、今後はリンクマイニングなどの手法を用いて応用に即したより複雑なネットワークからの情報抽出が進んでいくと考えられよう。 (2007.10)
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