半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費経済レビュー
II.「納豆」騒動のネットワーク分析

 「納豆」による一連の騒動は、マス宣伝や口コミなどによる情報伝達のされ方に大きな疑問を投げかけた。「発掘!あるある大事典II」で「納豆ダイエット」が放映された1月7日には19.1%であった認知率は、疑惑報道から捏造謝罪記者会見などを経てわずか3週間で9割を超え、全国津々浦々まで、まさに国民的話題になったのである。本稿では、この「納豆」に関する情報がどのようにして伝達されていったのか、「情報ネットワーク」という観点から、議論する。ここでいう「ネットワーク」とは、「ある商品に関する情報のやりとりを行う関係の総体」とみなす。
 1章ではネットワークの設定を行った。構成する人間関係のタイプによって、[1]「リアルな友人・知人ネットワーク」[2]「専門家ネットワーク」[3]「旧メディア・ネットワーク」[4]「メーカー発信のヴァーチャル・ネットワーク」[5]「個人発信のヴァーチャル・ネットワーク」という5タイプを考える。[2]「専門家ネットワーク」について、特に「飲食店や小売業の店員など」食材との関わりのある関与者によって形成されるネットワークを「ファシリテーター」と呼ぶことにする。
 2章では、「ダイエット効果」放映後の情報伝達の実態について論じている。そこでの主な帰結は五つあり、「納豆ダイエット効果は捏造」は8割以上が認知していること、「ダイエット効果」の情報を平均3.8個のネットワークから入手していること、情報伝達が速いのは「個人発信のヴァーチャル・ネットワーク」と「ファシリテーター」であること、「ファシリテーター」は信頼度が高いこと、3割強の人が「実際に会って話をして伝達」した、ということであり、人々は複数のネットワークにて情報を交換していることから、ヴァーチャルとリアルの何らかの相乗効果が情報伝達に影響を与えていることがうかがえる。
 3章では、「捏造」報道後の情報伝達の実態について論じている。そこで得られたことは、全体の8割強が「実験データが捏造」を知っていたこと、「捏造」情報を平均3.1個のネットワークから入手していたこと、「捏造」情報の伝達スピードはネットワークによる差はないこと、情報はヴァーチャルで収集するが、大事なことはリアルで伝える、ということであった。
 4章では、「納豆」騒動は購買行動に影響を与えたのかについて論じている。結論は三つあり、購買行動に影響を与えたのは「ファシリテーター」であること、「ファシリテーター」は喫食機会をも増加させたこと、「ファシリテーター」の功罪は相半ばであること、であった。いずれにせよ、「納豆」騒動において「ファシリテーター」は重要な役割を果たしていたことが確認できた。
 最後に5章では、「納豆」騒動をマーケティング・アプローチにどう活かしていくかの議論を行っている。「ファシリテーター」が重要であるのだが、どうやってこの「ファシリテーター」にアプローチしていくのか。これをワッツ(2003)の「二部ネットワーク」の概念を用いて検討したところ、「ファシリテーター」とつながりがあり、規模が大きくかつ他のネットワークとも多くのつながりを持つ「家族」や「恋人や友人知人」をターゲットにし、旧メディアやネット等、複数メディアによる相乗効果を創出させることが鍵であるとした。

(2007.06)


消費経済レビューの本文は、プレミアム会員をご利用ください。
消費経済レビューは、プレミアム会員限定コンテンツとなっています。
プレミアム会員は、当社メンバーシップサービスの全てのコンテンツに加えて、
「情報家電産業のリバイバル戦略 -エンド価値志向の多層化戦略-」ほか、
当社のオリジナル研究レポートのご利用が可能なプレミアムサービスです。
この機会に是非プレミアム会員へのご入会をご検討ください。

新着記事

2023.11.30

月例消費レポート 2023年11月号 消費は足踏み状態が長引きつつある-年末・年始の活況を契機としたマインド改善が消費復調への足がかりに

2023.11.30

23年10月の「ファーストフード売上高」は32ヶ月連続のプラスに

2023.11.30

23年10月の「ファミリーレストラン売上高」は20ヶ月連続プラス

2023.11.29

企業活動分析 日産自動車株式会社 23年3月期決算は円安追い風で増収増益に

2023.11.28

消費からみた景気指標 23年9月は9項目がプラスに

2023.11.27

23年10月の「全国百貨店売上高」は20ヶ月連続のプラス、インバウンドや高額商品好調

2023.11.27

23年10月の「チェーンストア売上高」は既存店で8ヶ月連続のプラス、食料品が好調

2023.11.27

23年10月の「コンビニエンスストア売上高」は20ヶ月連続のプラス、好天や行楽需要で食品好調

2023.11.24

成長市場を探せ 「巣ごもり」後も割安感で堅調な家庭用冷凍食品(2023年)

2023.11.22

トヨタ自動車株式会社 23年3月期は販売台数伸び増収も、資材高騰で減益に

週間アクセスランキング

1位 2023.11.15

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 食卓に浸透する市販の惣菜 4割弱が週1回以上惣菜を購入

2位 2022.03.11

女性が生み出す6.9兆円の市場―アフタヌーンティーは都心高級ホテルを救えるのか 第1回

3位 2008.07.24

戦略ケース カルフールは何故失敗したのか?

4位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

5位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area