半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費経済レビュー
I.Macroeconomic Outlook for Japan

 2005年1-3月期より続いているプラス成長の流れは、2006年に入ってからも持続している。「輸出」「設備投資」「個人消費」のいずれもが堅調な推移を示し、息の長い好景気を支えている。安定した雇用・所得環境の下で、消費者マインドは依然として楽観的である。在庫調整を引き金とした景気悪化の兆しは認められない。各種マクロ指標を見る限り、今後しばらく好景気は続きそうな気配である。
 目下の好景気が消費者実感を伴ったものであることは、弊社ネットモニターを対象に行った調査結果からも確認できる。景気の現状に対する消費者の認識は好転しつつある。また、景気の先行きについては明るい見通しを持つ消費者が多数派となっている。
 消費者の間での収入格差は広がりつつある。しかし、収入が減少した層もそれほど支出を減らしていないため、全体の支出額は増加している。この1~2年、とりわけ2005年1-3月期以降はより顕著なものとなっているマクロの消費拡大は、次のようなメカニズムに支えられて実現されたものと考えられる。収入格差の拡大は、収入増を実現させていく「上昇層」と、収入減に陥っていく「下降層」への分化をもたらしているが、高原状態の続く消費マインドの良好さは、「上昇層」と「下降層」のそれぞれに独特のインパクトをもたらしている。収入が増加した「上昇層」では、現状の収入増加は期待所得の増加と認識され、消費意欲が高まるとともに、リスク資産投資がもたらした株価上昇による資産効果も相まって、期待所得のより一層の増加と、消費支出の更なる拡大を促している。他方、収入が減少した「下降層」では、現状の収入減少は一時的なものであり、期待所得の減少は限定的なものと認識している。その結果、期待所得の水準に応じて消費支出の水準を決めようとするため、消費支出の減少に歯止めがかかる。また、株価上昇は、「下降層」における消費マインドの良好さを下支えし、「下降層」における消費支出の減少幅の縮小に寄与している。
 支出意向に関しては、支出を減らしたいと考えている世帯が多い。しかしながら他方で、景気、株価、雇用環境への見通しはいずれも楽観的である。目下の消費拡大をもたらしたメカニズムを想定する限り、消費者が示した支出減少意向がそのまま支出増加を妨げるものではないとみられる。
 これまでの分析を総合し、輸出(+)個人消費(+)設備投資(-)の「外需・消費主導型安定成長シナリオ」を、2006年度の日本経済の先行きに対する見通しとして提示したい。次点候補には、中堅・製造業での設備投資がそれほど冷え込まなかった場合を想定したより楽観的なシナリオである、輸出(+)個人消費(+)設備投資(+)の「内外需全面展開による長期成長シナリオ」と、収入上昇層の支出意向の弱さから消費の拡大基調にブレーキがかかった場合を想定したより悲観的なシナリオである、輸出(+)個人消費(-)設備投資(-)の「外需頼み成長鈍化シナリオ」を挙げておく。

(2006.08)


消費経済レビューの本文は、プレミアム会員をご利用ください。
消費経済レビューは、プレミアム会員限定コンテンツとなっています。
プレミアム会員は、当社メンバーシップサービスの全てのコンテンツに加えて、
「情報家電産業のリバイバル戦略 -エンド価値志向の多層化戦略-」ほか、
当社のオリジナル研究レポートのご利用が可能なプレミアムサービスです。
この機会に是非プレミアム会員へのご入会をご検討ください。

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area