半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2015年07月17日

第7回 ネクスト戦略ワークショップ 講演録
Session2. マーケティング革新の四つの事例
大澤 博一


本コンテンツは、2015年5月19日に行われた当社イベント、第7回ネクスト戦略ワークショップ「格差消費時代のマーケティングの新しい切り口」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。

 格差社会への移行によって、今までとは違ったマーケティングが必要になってきます。ここからは、弊社 松田の基調講演「マーケティングの新しい切り口」でご提案した、「顧客の再選択」「成熟市場のラグジュアリー化」「Webrooming」「IoTによる製品の役割変更」の四つの新しいマーケティングの切り口に基づいて、各社の具体的な成功事例について紹介します。

1.顧客の再選択(リセット)

 まず、1億総中流の時代から、格差社会へと移行することによって顧客のリセット(再選択)が必要になります。自社の商品や業界で、顧客が変化してきているという実感はないでしょうか。一例をあげると、ビールです。アサヒスーパードライが1980年代に発売されたころ、ビールはミドルの飲み物というイメージだったと思います。しかし、現在ビールを飲んでいる人は50代、60代です。このほか、リポビタンDなどの栄養ドリンクを思い出してください。バリバリ働く40代のビジネスマンなどが飲んでいるイメージですが、現在の中心顧客は50代、60代です。若い世代は、栄養ドリンクではなく。エナジードリンクを飲んでいるのです。このように、知らず知らずのうちに同じ商品でも今と昔では中心顧客が移り変わっていっています。

 セブン-イレブンも中心顧客を変えたことが、今の成功を導きました。2000年代は少子化などの影響を受け、コンビニエンス業界全体が伸び悩んでいました。それを乗り越えて、今また再成長するセブン-イレブンの勢いには目を見張るものがあります。07年に2兆5千億円くらいだった売上は、今では3兆7千億円まで伸びています。つまりこの間に1兆円も売上を積み上げました。ちょうど09年あたりが、同社のターニングポイントになっています。このころから中心顧客が50歳以上になっていきました。シニアへシフトしたということが、読み取れると思います。

 同社でどんな変化があったかを見てみると、まずは09年に井阪隆一さんが社長に就任しました。そして、時代の変化や統計データなどから三つの仮説を出して、戦略を立てたのではないかと思います。ひとつ目は、小売店の減少が働く女性や高齢者にとって不便な環境をつくっているのではないかということです。だからこそ、シニアにチャンスを見出すことができました。

 ふたつ目は、働く女性やシニアが増えることによって、セブンプレミアムなどの惣菜をコンビニで購入して、おかずとして食事をしている人が増えていくのではないかということです。そして、最後の仮説は、シニア層は夕食の食材を購入する場所としてコンビニを使っているのではないかということです。これらの不便を解消するために、惣菜を充実させることがチャンスにつながると考えて、課題解決に取り組みました。

 具体的には、カット野菜、チルド野菜、生鮮食品を充実させ、それに合わせた売り場の見直しを行いました。また、PBであるセブンプレミアムや「金のシリーズ」を充実させ、高価格、中価格、低価格と三つの価格ラインを品揃えすることで、お客様の選択する幅を拡げています。総菜などの商品開発も全国に160以上の専用工場を持つセブン-イレブンは抜きん出ています。店舗を出すだけでなく、物流と工場をセットで構築して出店地域を拡大し、さらに地域ごとの商品の開発も強化しています。そして、セブンミールなど自宅まで宅配するサービスも開始しました。これらの5つの改善によって、シニア層の顧客が伸びて、うまく変化に対応できたのだと思います。コンビニ業界で、一番うまく変化に対応したのが、セブン-イレブンといえます(図表1)。

図表1.顧客をシニア層にシフトして再成長~セブン-イレブン



 本コンテンツの全文は、有料会員サービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧には有料会員サービスへのご登録が必要です。

会員サービスのご案内についてはこちらをご覧ください。
会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。

新着記事

2025.01.17

消費者調査データ No.419 キャッシュレス決済(2025年1月版) 利用経験ついに5割超え 「PayPay」独走態勢なるか

2025.01.16

24年11月の「現金給与総額」は35ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.01.16

24年11月は「有効求人倍率」、「完全失業率」とも横ばい

2025.01.15

月例消費レポート 2024年12月号 消費は足踏み状態が続いている-国内外からの物価上昇圧力は消費にマイナスの恐れ

2025.01.14

企業活動分析 マンダムの24年3月期は2期連続の増収増益、女性事業が好調

2025.01.10

24年11月の「新設住宅着工戸数」は7ヶ月連続のマイナス

2025.01.09

24年12月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のマイナス

2025.01.08

企業活動分析 富士フイルムHDの24年3月期は増収増益、過去最高を更新

2024.12.27

24年11月の「ファーストフード売上高」は45ヶ月連続のプラスに

2024.12.27

24年11月の「ファミリーレストラン売上高」は33ヶ月連続プラス

2024.12.27

消費からみた景気指標 24年10月は4項目が改善

2024.12.26

提言論文 消費者が示すサービスブランドの価値実現率-価値伝達なしの生存はない

2024.12.25

24年11月の「全国百貨店売上高」はふたたびプラスに インバウンドや冬物衣料が好調

2024.12.25

24年11月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月ぶりのプラスに

2024.12.24

24年11月の「コンビニエンスストア売上高」は12ヶ月連続のプラスに

2024.12.23

MNEXT 価値と欲望の充当関係とは何か-市民社会の基本原理

2024.12.23

企業活動分析 BYDの23年12月期はEV・PHV好調で大幅な増収増益を達成

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

週間アクセスランキング

1位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

2位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

3位 2024.06.21

消費者調査データ ビール系飲料(2024年6月版) 首位「スーパードライ」、キリンの新ビール「晴れ風」にも注目

4位 2023.07.03

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 約3割が利用する「免疫力」商品 20~30代に広がる美容・健康飲料の可能性

5位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area