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(2012.02)
高収益ビジネスへの挑戦
-プラットフォームビジネス
ディレクター 舩木 龍三

DeNA、グリーの収益性の高さ
 日本企業の多くが成長力不足、低収益に苦しんでいるなかで、いわゆるソーシャルゲームを運営するDeNA、グリーの2社が急成長すると同時に高い収益率を上げている。上場する日本企業でも、営業利益率が10%を超える企業は数少ない。もっとも多いのは、営業利益率3~5%といったところだ。ところがDeNAの営業利益率は49.8%、グリーは48.7%と驚異的な収益性の高さとなっている(いずれも2010年度)。
 しかもその成長のスピードがかなり速い。DeNAは1999年設立で、11年後の2010年度には売上高1,127億円まで急成長した。グリーは2004年設立で、6年後の2010年度の売上高は642億円と、こちらも急成長を遂げている。(図表1)

図表1.高収益を上げるSNS・ソーシャルゲームのプラットフォーム企業


 なぜ、こうした急成長と高収益を実現できたのか。企業が高収益をあげるには、三つの道がある。ひとつめはグローバルで圧倒的なコスト優位に立つこと。サムスン、P&Gの戦略がこれである。両社とも営業利益率は20%を超えている。ふたつめは、差別化優位に立つことである。ただ、この戦略には、他社にまねのできない差別性が必要となる。世界で圧倒的なシェアを誇る日本の部品メーカーはこれにあたる。このふたつは、ポーターが提唱する伝統的戦略パラダイムである。しかし、これからの産業、エコシステムには対応はできず、早晩、こうしたパラダイムは有効性を失うであろう。
 我々が着目したいのは第3の道である。すなわち最新の戦略理論の実践による高収益化である。DeNA、グリーの2社は、まさにこれに該当する。ゲーム開発業者に対する独禁法抵触の恐れや独自の課金システムで消費者庁にマークされるなどグレーな部分はあるものの、その戦略は先進性に満ちている。メーカーをはじめ、流通業や他の産業も学べる点が多い。我々は何を学ぶべきか、2社の戦略理論の先進性を確認し、どのように応用できるか、提言したい。

垂直統合からプラットフォームへ
 2社の戦略の先進性は三つある。なかでも、もっとも高収益に結びついている戦略理論は、「プラットフォーム理論」である。これまでの高収益な戦略モデルは「垂直統合」戦略であった。系列化政策により、川上から川下までを垂直統合し、自社戦略の一貫性を維持し、価値伝達することによって、コスト優位や差別化優位に立ち、顧客の囲い込みに成功してきた。トヨタ、資生堂、パナソニックを典型例に、多くのメーカーや小売業が成功したビジネスモデルだ。しかし、ユーザーニーズの多様化や高度化と、それによる関与者の多元化によって、自社ではコントロールできない力関係が生まれ、垂直統合モデルの有効性が低下したのは、誰もが認識している事実である。
 これに代わるビジネスモデルが「プラットフォーム」モデルである。プラットフォームとは、売り手と買い手をつなぐ場・機能、と定義できる。両者をつなぐ場を魅力的なものにできれば、ネットワーク外部性が働き、事業は飛躍的に成長できる。そして同時に、圧倒的な地位を築くことができるのである。

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