半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2012.02)
顧客視点の新規事業開発
ビジネスディベロップメントマネジャー 合田 英了

コダックと富士フイルム-明暗を分けた新規事業開発
 経営危機に陥っていたコダックが今年1月、破産法を申請し、事実上の経営破たんに追い込まれた。130年の歴史を持ち、写真用フイルムで世界を席巻した優良企業の、あっけない幕切れだった。他方で、同じ写真用フイルムで激しく争った富士フイルムの業績が好調である。1998年以降の10数年間でコダックの売上は1.6兆円から8,000億円へと「半分」になり、富士フイルムの売上は1.1兆円から2.2兆円へと「2倍」に増えた。両者の明暗を分けたのはデジタル化への対応と新規事業による多角化である(図表1)。

図表1.新規事業が分けた明暗


 第一の明暗はデジタル化への対応である。デジタルカメラのユーザーは写真のショット数は多いが、写真用フイルムは使わず、写真をラボでプリントする率も低い。写真は主にパソコンで鑑賞する。フイルムと印画紙を中心とする両社は写真フイルム事業の急速な縮小に直面した。デジタルカメラへの取り組みは両社とも同じだったが、ラボの現像機器の開発で差が出た。富士フイルムは、デジタルカメラ専用の現像機器の自社開発を進めたがコダックは自社の機械を持っていなかった。後れをとったコダックを尻目に、富士フイルムは自社製品を全世界のラボに入れることに成功した。
 第二の明暗は、将来を見据えた事業の多角化である。富士フイルムは写真フイルム部門のリストラ(人員削減や配置転換等)、デジタル化への対応のあと、約40社に総額6,500億円を投じるM&Aを行い、攻めの経営に転換する。2001年には富士ゼロックスの事務機器事業を取り込み、オフィスを顧客とするドキュメントソリューションビジネスとして梃入れをし、2004年にはフイルムに代わる新規事業を加速するため「第2の創業」を宣言した。2005年には液晶パネル用光学フイルムに参入、2006年には社名から「写真」を外し、化粧品、医薬品と次々に新規事業を開発。これらの事業をインフォメーションソリューションとして第3の柱にし、業容をさらに拡大した。創立80周年となる2013年度には、売上高2兆5,000億円、営業利益1,800億円を最低目標として掲げている。成長の原動力は化粧品、医薬品などの「ライフサイエンス事業」である。
 他方、同じ10数年間を、コダックはデジタルカメラ、デジタルミニラボ、デジタルプリントなど写真関連事業におけるデジタル化を進めた。しかし写真関連事業だけでは足りず、加速度的に減少する写真関連事業に代わる新たな事業を作り出せないまま、寿命を迎えた。写真に依存したコダックに対し、脱写真で多角化した富士フイルムは、リスクをとった新規事業の開発と多角化が、対照的な経営成果につながった。

リスクをとって新規事業開発へ
 技術を基軸にした関連分野への多角化によって持続的成長を遂げた花王、電球やジェットエンジン等の多様な製品製造業から、金融サービス・インフラ・医療システム等への多角化によって進化を遂げたGE、モバイル機器・音楽配信事業により生き残ったアップル等、企業は常に新たな事業を創り出すことによって危機を乗り越え、生き残り、持続的な成長と高収益化を果たしてきた。日本のものづくり製造業の多くは今、「本業の持続的または加速度的衰退」に直面している。衰退に直面しているのは、新しい事業を創り出していないからである。新しい事業を創りだせないのは、バブル崩壊以後の長期停滞期に、事業の「選択と集中」を行い、新規事業の芽をことごとくつぶしてきたからだ。会社は事業から成り立っている。会社を成長させるには「新たな事業」が必要だ。衰退から脱出し、成長するにはリスクをとって新たな事業を創り出すことが大事だ。

■JMR生活総合研究所のソリューションサービスはこちらからご覧ください。
■お問い合わせ Phone 03-3217-8400  ■E-mail web@jmrlsi.co.jp

 本コンテンツの全文公開は終了しました。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。

お知らせ

2026.04.24

JMR生活総合研究所 ゴールデンウィーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2026.04.24

月例消費レポート 2026年4月号 消費は底堅く推移している - 消費者の期待を裏切らない政策対応が最優先に

2026.04.23

26年3月の「チェーンストア売上高」は既存店で13ヶ月ぶりのマイナスに

2026.04.23

26年3月の「コンビニエンスストア売上高」は13ヶ月連続のプラスに

2026.04.22

26年2月の「旅行業者取扱高」は前年比11ヶ月連続プラスに

2026.04.21

業界分析 制度化粧品の転換点 - "化粧品"から "彩りプラットフォーム"産業へ

2026.04.20

企業活動分析 FOOD & LIFE COMPANIES(旧スシローGHD)の25年9月期はスシロー好調で2桁の増収増益、過去最高に

2026.04.17

成長市場を探せ 猛暑がけん引、5年連続過去最高更新の麦茶飲料(2026年)

2026.04.16

26年2月の「商業動態統計調査」は3ヶ月連続のプラスに

2026.04.15

26年3月の「景気の先行き判断」は38.7ポイントに大幅下落

2026.04.15

26年3月の「景気の現状判断」は24ヶ月連続で50ポイント割れに

2026.04.14

26年2月の「現金給与総額」は50ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2026.04.13

業界分析 サービスの厚みから設計力へ - ホテル産業の競争優位とタテ戦略

2026.04.13

企業活動分析 丸大食品の25年3月期は、販売好調、コスト削減などで増収増益に

週間アクセスランキング

1位 2026.04.03

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター ドラム式洗濯乾燥機はもう当たり前? 所有率25%、20代にも広がる理由【会員用完全版】

2位 2024.06.21

消費者調査データ ビール系飲料(2024年6月版) 首位「スーパードライ」、キリンの新ビール「晴れ風」にも注目

3位 2025.12.26

消費者調査データ レトルトカレー(2025年12月版) 首位「咖喱屋カレー」、再購入意向上位はソースタイプやPBが

4位 2022.11.29

MNEXT 2023年の消費と戦略経営~マーケティングの6つの革新~

5位 2022.01.28

MNEXT 眼のつけどころ ePOPで成熟ブランドのリブランディング― 2022年春の提案

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area