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ポイントカードシステムのマーケティング
戦略研究チーム

【要約】
  • 近年注目されるポイントカードは、発行企業の増加と共に利用範囲が拡大しており、総発行枚数は9.2億枚、年間発行ポイント額は7,130億円に達したと推定される。多くの企業がポイントカードを発行するのは、会員を数多く獲得し発行枚数を増やすことが、自社の業績向上に役立つからである。
  • ポイントカードで数多くの会員を獲得するには、ユーザーの満足度を高める必要がある。ユーザー調査の結果、ポイントカードの満足度が高いほど利用意向が高く、発行枚数の増加に結びつくことが明らかとなった。ユーザーの満足度を形成する決め手は「ポイントの貯めやすさ」「欲しい商品サービスの入手可能性」である。このふたつを実現することが企業にとって重要となる。
  • しかし、既存のポイントカードは顧客の囲い込みを重視し、ユーザーの期待に十分に応えきれていない。発行企業は、ユーザー満足度を高め、ポイントカードシステムにおけるネットワーク外部性(ユーザーが増えるほどユーザーの効用が高まる)の性質を活かし、発行枚数を圧倒的に増やす取組みが求められる。ユーザーにポイントを貯めやすくし、欲しい商品・サービスを提供するには、第一に補完関係のある提携企業を増やすこと、第二に提供する商品・サービスの多様化を図ることが重要だ。
  • 現状のポイントカードは、多種多様な企業とユーザーを相手にするプラットフォーム(売り手と買い手などのメンバーをつなぐ取引基盤)を提供できる可能性がある。ポイントの交換・決済基盤をつくり、ネットワーク外部性とスイッチングコスト(他社に流出する際のコスト)を高め、プラットフォーム型ポイントカードシステムを構築した企業が、成熟ビジネスにおいて持続的な競争優位を得られる。

【構成】

1.企業のポイントカードシステムの導入
(1)ポイントカードシステムとは何か
(2)ポイントカードシステムの運用状況
(3)導入目的、事業業績とポイントカードシステム
2. ユーザーの所有利用状況と期待
(1)ポイントカードの所有及び利用
(2)ポイントカードの満足度、要因
(3)ポイントカードへの期待と効用
(4)ユーザーからみたポイントカードの効果
3. ポイントカードシステムによる事業の競争優位性
(1)ポイントカードシステムと市場競争
(2)ポイントカードシステムの満足度を上げる手段
(3)ポイントカードシステムによる市場優位の戦略


「ポイントカードシステムのマーケティング」はメンバーシップサービス限定コンテンツです。「2. ユーザーの所有利用状況と期待」「3. ポイントカードシステムによる事業の競争優位性」はメンバーシップサービスに掲載されています。
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1.企業のポイントカードシステムの導入
(1)ポイントカードシステムとは何か
 ポイントカードシステムとは、企業が利用者に対し、商品・サービスの利用の程度に応じてポイントを発行し、蓄積したポイント数に応じて何らかの便益を提供する顧客サービスの仕組みである。通常、企業がユーザーの商品・サービス購入金額に応じて数パーセント分のポイントを付与し、ユーザーは、商品等の購入を通じて蓄積したポイントを、1ポイント=1円相当で発行元の商品・サービスの購入時に利用したり、他の商品・サービスのポイントに交換することができる。
 企業は、ポイントカードを事実上の値引きや他の商品・サービスとの交換に利用しており、近年は運輸や航空を始め、様々なサービス業などに広がっている。また、ポイントの利用範囲は、これまでは発行元企業に限定されていたが、他企業間の移行・交換や電子マネーへの交換もできるようになってきている。*1

(2)ポイントカードシステムの運用状況
図表1.主なポイントシステム提供企業【抜粋】
図表をクリックすると全体が別画面で表示されます
 ポイントカードの発行主体は、流通、航空、クレジット等の様々な業種にわたっており、発行企業数は数百社にのぼると言われる。発行枚数は、業種ごとの代表的な発行企業18社平均で980万枚、最大で2,000万枚超の会員数を抱える企業(楽天、ヨドバシカメラなど)もある(図表1)。現在、国内の総発行枚数は9.3億枚(弊社推計)であり、年間の発行ポイント数は一般に4,500億円~1兆円と推計されているが、弊社の調査結果からは、約7,130億円となっている。
 ポイントカードの運営方法は企業によって異なっている。今回取り上げた18社では、還元率は0.1%~25%と大きな幅があり、有効期間は1~2年(ただし、期間内にカードを利用すれば無期限で繰り越せる、年度毎に随時消滅、など細かい条件が付記されるケースが多い)、異業種企業との提携など、企業によって異なる傾向がみられる。

(3)導入目的、事業業績とポイントカードシステム
図表2.カード発行枚数と売上高の関係【抜粋】
図表をクリックすると全体が別画面で表示されます
 ポイントカードの導入目的は、自社の業績を高めることである。その目的はさらに三つに類型化できる。
 第一は、既存顧客の優良化である。蓄積ポイント数に応じて還元率を高め(1,000ポイントであれば1,000円相当、2,000ポイントであれば3,000円相当など)、利用金額が多い顧客を優遇するケースで、百貨店のポイントカードによくみられる。
 第二は、既存顧客の来店促進である。ドラッグストアなど単価の低い業種では、来店頻度を高めることが業績の向上につながる。ユーザーがより頻繁に利用しやすくするためにポイントが活用される。
 第三は、新規顧客の獲得である。他企業とのポイント交換を認めることにより、相互の顧客を融通しあい、顧客の幅を拡大させるケースである。TSUTAYAとANA、JALとローソンなどが主な提携例である。
 このように、発行企業は、主に三つの目的からポイントカードを導入し、業績の拡大を目指している。ポイント発行企業の発行枚数と事業業績との関連をみると、ポイント発行枚数が多い(1,500万枚以上)企業において、発行枚数の伸びに伴い売上高が伸びる傾向が確認できる(図表2)。発行枚数を増やしユーザー規模を拡大することが、業績拡大のために重要である。

図表3.発行枚数と発行側特徴の判別要因【抜粋】
図表をクリックすると全体が別画面で表示されます
 ポイントカード発行企業の比較から、発行枚数が多い企業の特徴をみると、主にふたつの共通要素があることがわかる。ひとつは、還元率の高さである。家電量販店では10~25%、航空会社では2~10%程度の高い還元率を設定している。ふたつは、提携企業の多さである。中でも、航空業界では、ANAが提携先企業300社以上、利用店舗数55,000店以上と、多くの場所でポイントを貯めることができる(図表3)。



(2007.03)


*1 経済産業省も、消費者保護の観点から、企業が販促活動等に利用する「ポイント」システムに関して、同省担当審議官の私的研究会として発行企業の関係者を集めた「企業ポイント研究会」を2月23日に発足させ、6月まで関連法の見直しを含めたルール作りを進める方針を明らかにした(2007年2月15日付朝日新聞他)。

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この提言コンテンツは、弊社オリジナル研究、「ポイントカードシステム利用実態調査」の結果をもとにして作成されています。

「ポイントカードシステム利用実態調査」

所有率91%、所有枚数8.5枚。流通企業や航空会社などが発行するポイントカードは人々の生活に深く浸透する一方で、企業にとっては顧客の固定化に有効な手段となっている。ユーザーのポイントカードの満足度と期待ニーズを探るオリジナル研究レポート。
定価49,000円 (本体46,666円+税) A4版 17頁

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