半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2012.02)
中小企業のためのベーシック・マーケティング
戦略研究チーム

この時期こそ、基礎基本の徹底が成否を分ける
 中堅企業における景況感は、依然として低いままである。経済産業省の「第126回 中小企業景況調査」によると、DI値は2007年第3四半期の水準にようやく戻りつつある程度である。2007年第3四半期というのは、アメリカでサブプライムローン問題が表面化した直後、そして、リーマンショックが発生するちょうど1年前である。
 このデータが示すとおり、見通しは暗いまま。業種業界、企業規模を問わず、厳しい生き残り競争が続いている。

 「マーケティングの強化」は、今までもこれからも、企業における永遠のテーマである。しかしながら、中小企業の場合、少ない販管費の中から「本当に必要な」マーケティングコストを捻出するのは容易なことではない。マーケティング政策の立案から、具体的なアクションの構築、調査、分析をアウトソーシングせず、自社でせざるを得ないのが現状だ。
 これまでの中堅企業においては、自社の社員が「我流」「個人ワザ」でマーケティングを行ってきた。(大企業でも同じ場合がある)。自分たちで「マーケティング」についてはいろいろ勉強をしているのだが、現実的にはコストをかけられないため、組織として実践できず、出来ることといえば「我流」「個人ワザ」の域を超えることがない。
 結果的に、マーケティングアクションが中長期的なアクションではなく、目先の売上を確保するための「単発の施策」で終わってしまい、組織のノウハウにならないというのが、現状である。これまでは、それで何とか通用してきた場合が多かったというのが事実だが、果たして、今後も勝ち抜き続けられるだろうか?答えは、おそらく「NO」だ。

 では、「単発の施策」ではない、「中長期的な企業の成長」に資するマーケティングとは何か。それは、基礎基本のフレームとセオリーに則って、採るべきマーケティングアクションを着実に実践し、その成果を振り返る。そして、この一連のアクションを継続していくことである。ここでは、そのフレームとアクションの中でも、もっとも重要度の高い10のアクションを提言する。繰り返すが、これは、あくまでも「基礎基本」である。

マーケティングの基本は「STP+4P+S」
図表1.マーケティングアクションを構築する
フレームワーク
 「中長期な企業の成長」に資するマーケティングアクションを構築するフレームワークは、図表1のとおりである。
 このフレームは、大きくふたつの要素から成る。それは「価値創造」と「価値伝達」である。
 価値創造は「STP」によってなされる。「STP」とは、「Segmentation:セグメンテーション」「Targeting:ターゲティング」「Positioning:ポジショニング」の三つで構成され、自社が誰に対してどのような価値を提供するのかを明確にするための要素である。
 「価値伝達」は「4P+S(営業)」によってなされる。「4P」とは、「Product:製品」「Price:価格」「Place:流通」「Promotion:プロモーション」を指し、ターゲットに対して企業が目的を達成するために、マーケティング機能を組み合わせて統合するというマーケティングミックスによって、価値伝達を行う。
 また、「Sales:営業」は、顧客への価値伝達を行う担い手として、重要な位置づけにある。

 まとめると、マーケティングの基本は、「STP」で創りだした価値を、「4P+S」で顧客へ伝えるということである。
 
 次章では、マーケティングフレームに沿って採るべきアクションを紹介する。ここで紹介するアクション以外にも、やるべきことは数多あるが、中でも重要なものに絞り込んで紹介したい。

ベーシック・マーケティング10の成功法則
[1]リアルなユーザー像を捉える(セグメンテーション)
 はじめに、自社が提供している製品・サービスは、どのようなユーザーに向けて提供されているのかを理解することが重要である。その際、ユーザーをセグメントし、特徴を明確にすることが必要となる。では、どのような切り口で、どのようにセグメントして明確にしていくのがよいのだろうか。
 分類の変数は無限である。P・コトラーは、その中からの選択基準として、「測定可能であり、アプローチができ、ビジネスとなる市場規模があること」という3条件をあげている。
 我々はこれに現場での「納得条件」を加えて考えることが必要だと捉えている。具体的には「ブランドの発達の歴史、技術の発達の歴史、生活の発達の歴史の3点から納得できること」であり、そのことが市場の経験を反映させることになる。
 切り口をあげると、消費財マーケティングでは、「地理的変数(地域、気候など)」「デモグラフィック変数(性別、年代、世代、ライフステージなど)」「サイコグラフィック変数(価値意識など)」「行動・態度変数(使用頻度、ロイヤリティなど)」の四つがセグメンテーション変数としてあげられる。一方、BtoBでは、「企業グループの有無、内容」「企業規模」「事業構成」「取引形態」などがあげられる。
 あらかじめ仮説を立てた上で、これらの変数をうまく組み合わせて、セグメントを決定していくことが重要である。

 ++++
 また、実務的戦略家の育成を目的とした、研修サービスを行っております。
 こちらは、『実務的戦略家のためのJMRの教育研修サービス』をご覧ください。 

 本コンテンツの全文公開は終了しました。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。


■JMR生活総合研究所のソリューションサービスはこちらからご覧ください。
■お問い合わせ Phone 03-3217-8400  ■E-mail web@jmrlsi.co.jp

新着記事

2025.07.11

消費者調査データ 熱中症対策飲料・スポーツドリンク(2025年7月版) 首位は「アクエリアス」、ぴたりと追走する「ポカリスエット」

2025.07.10

25年5月の「家計収入」、「可処分所得」はともにプラスに

2025.07.09

トランプ関税25%は十分乗り切れるが、とばっちりの農業には手厚い支援を

2025.07.09

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 3人に1人がプレミアム歯磨き粉を選ぶ時代 美容・健康・機能重視の志向が市場を変える

2025.07.08

25年5月は「有効求人倍率」は悪化、「完全失業率」は横ばいに

2025.07.07

企業活動分析 カゴメ株式会社 24年12月期は価格改定と需要喚起奏功で利益過去最高更新

2025.07.04

消費からみた景気指標 25年4月は8項目が改善

2025.07.03

月例消費レポート 2025年6月号 消費は回復の動きを持続-選挙後も残る政治リスクに消費は振り回され続けるおそれも

2025.07.02

米価格の歪さ、都議選自民大敗北させた第2世論、そして、世界を不確実性に引き込むトリックスター大統領の性格

2025.07.02

25年6月の「乗用車販売台数」は6ヶ月連続のプラス

2025.07.01

25年5月の「新設住宅着工戸数」は2ヶ月連続のマイナスに

2025.06.30

企業活動分析 BYDの24年12月期は大幅増収増益で過去最高、テスラを上回る

週間アクセスランキング

1位 2025.07.02

米価格の歪さ、都議選自民大敗北させた第2世論、そして、世界を不確実性に引き込むトリックスター大統領の性格

2位 2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

3位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

4位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area